表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第二章・青年期ヨルムド国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/55

「我々二度目の社不生活中故な」

 朝方、汗でぐったりとして二人並んで倒れ込む。


「お主、頭を読むのはずるい。一人だけ二人分得をしているではないか」


「陛下に合わせるためでございます。それにしても、退屈は人を獣にする」


 憂鬱げに言う妻である。


「この前まで処女と童貞だったのに……」


「あれはあれで、ドキドキとして良いものだった」


 苦笑交じりに言う。


「見よ」


 そう言って、彼女の手を取り、窓の外を見る。


「今日も夜明けだな、ミリィ」


 ミリィが嬉しげに微笑む。


「気苦労が多い人生でしたが、子供が出来て若返りましたねえー陛下。その若々しい口調、出会った頃みたいだ」


「お前は変わらんな」


 苦笑交じりに言う。


「ハリボテで着飾っているようなもの。そのハリボテも」


 妻を引き寄せ、布団に潜る。


「随分落ちた」


「着直せますかね」


「どうだろうな。若い王だと馬鹿にされねえと良いけど」


「それそれ。あー……けど」


 低い声で言う。


「今となってはレイヴン様思い出すから辞めて」


 相変わらず妻から不評のレイヴンである。


「わかったよ、ミリィ。いや、相わかった、ミリィ。これは家庭内にしては畏まりすぎているな。調整が難しい」


「一度脱いだ鎧は中々着なおせませぬか」


「我々二度目の社不生活中故な」


 大人になっても人間関係でこじれるとは、つくづく社不。


「社不には他者と自己の境界がわからぬのだ」


 しみじみと言う。


「昔の私に刺さる言葉です」


「そなたは卒業したか」


 苦笑交じりに長い髪を撫でる。


「はい」


「ならば私は傀儡になろう。外交はそなたに任せよう」


「何を言っておられますか。貴方のギフトは策謀方面に長けている。今回はただ、人が良すぎただけです」


「うーむ。私が軍師であればこんなに拗れなかっただろうな。私ももうちょっと身分を考えて動く癖をつけねばならん。他国では特に。これは教訓になった。ミルドともハイラルとも違う面だ」


「この、冬を越した頃――」


 妻は、呟くように言う。


「故郷は、どう変わっていましょうか」


「どうだろうな。圧政化にはないようだ。見た目は無難な治世が取られているという」


「我々はノイズになりかねないのではないでしょうか。ミルドの国、けしかけたでしょう? 貴方」


「あれは追手をなくすための方便よ。策は他にある」


「それは読めませんでした。と言うと?」


「本命は――ミルドにこっそりと帰り、通行手形を偽装し、ハイラル国内に侵入する。そこからの、少数精鋭でのクーデター」


 にっと微笑む。


「今の、魔力をコントロールできるようになったそなたなら、むしろ味方の魔力まで覆い隠せよう。隠密の術に長けた仲間も得た」


 妻もにっと微笑んだ。


「それなら民に被害が行きませぬ。私もその案、賛同します。ただ……」


 妻は苦笑交じりに言った。


「あんまり先が長いと、私の命の灯火が持つかわからない」


 俺は目を丸くする。


「俺も、お前も、まだ十代の若者ではないか」


「最近感じるのです。私の強大な魔力は、私の命の灯火を燃やした業火」


 俺は唖然として、妻の唇が言葉を紡ぐのを見ていた。

 内容を理解したくない。

 しかし脳内に入ってきてしまう。

 がっと手を掴まれる。


「現実逃避しないで。しっかり聞いて、貴方」


「ああ、すまぬ。お主の前ではもう失態は見せれぬゆえな」


「期待はしておりませぬと言ったでしょう」


 滑稽そうに言う妻。

 その表情が寂しげになる。


「私の命は、どうやら残りはそんなに長くないようだ。貴方の人生の半分も生きれぬでしょう」


 俺は妻の体を抱きしめていた。

 震えていた。

 失うのか?

 今まで二年間かけて培ってきた関係を。

 辛い時支え合った記憶を共有する人生の連れ添い。

 ふっと苦笑する。

 震えは止まらない。

 ただ、気丈でいようと思った。

 俺ももう、大人だから。


「引きこもり全開の六年間は温存期間であったか」


 優しい声が出て、安堵する。


「陛下と会うために必要な六年だったのでございますよ」


 悪戯っぽく返し、その後もしみじみと思い出話に花を咲かせる二人だった。

 頭では理解できても、理解できているからこそか、震えは止まらなかった。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ