「俺の戦士としての寿命は、もう短い」
「俺の戦士としての寿命は、もう短い」
夜の焚き火を囲んで、レイヴンが口を開いた。
向かいのミリィが戸惑うように覗き込む。
レイヴンが苦笑する。
「すまんな、嬢ちゃんの心を読む類の術は俺には通じないんだ」
「……おぼろげにしか見えないな、とは思っていたのです。前は遠くだからだと思っていた。私の術、ご存知で?」
「有名だぜ。ハイラルの王位正統後継者。唯一の姫。そりゃ刺客を必死に送り込むよな」
「クラフト様……おっと、国王陛下の説得が効く人も増えてきました」
「ありゃあ化けたなあ。あんな化物地味た人材になるたぁ思わなかった。何がどう変わるかわからんものだ。今はその仲間が各地に散って仙人を探してくれている」
「して、戦士としての寿命が短い、とは?」
「目が、駄目なのさ」
そう言って、レイヴンは目を閉じる。
「ものがダブって見えてな。高速剣戟では致命的。運良く生き残っているだけ」
ミリィは苦笑する。
「それでも、この地に蠢く魔物相手には十分でございますれば。さらに言えば、レイヴン殿と切り結んで無事でいられる者もそうはいますまい」
「しかし、な。化物はいるのだよ」
一つ溜息。
「忘れた頃にやってくる。良いことだけは起こらない、悪いことだけも起こらない。どちらも順番にやってくる。俺達はその度に翻弄され、時に耐え、時に解放する」
ミリィはしみじみと頷く。
「国王陛下の指示に従うのみでございます。して、レイヴン殿。私の思考を遮断する術とは?」
「簡単な話だ」
小声でレイヴンが語った言葉に、ミリィはぎょっとした。
武と魔の最強戦力二人。
二人はどんな地に強大な魔物が出ようともすぐに駆けつける援軍部隊の役割を持たされていた。
「それにしてもレイヴン殿の口調、馴染みますれば。国王陛下の昔の口調に似ておられます」
「ありゃー俺のが感染ったんだ。十七年、いや、もう十八年程か? の人生の中で、五年は一緒にいたからな」
「まあ、そんなにも。クラフト様がお強いわけだ。そりゃ兄弟も嫉妬しますよね」
「いや、第一王子……あいつは、別格だ」
遠い目をして言うレイヴンだった。
知らない人なのでミリィはきょとんとするしかない。
つづく




