「リーシェ、しっかりしなさい」
「リーシェ、ガイエル!」
我に返ったようにリーシェはガイエルを展開する。
王宮内のみに伝わる魔法を殺す式。
その青い輝きに吸い込まれるように、槍は消えていった。
リーシェとリディを下ろす。
それと同時に、後方から飛んできた槍をガイエルで相殺する。
「ふむ。これは決着がつかぬな」
相手は顎に手を当てて考え込む。
「それでも良いぜ、どの道砦は堕ちる。俺達の勝ちだ」
相手は喉から笑い出す。
「お前、統率者か。統率者自ら一番強い敵と戦うと言う。滑稽なものだな」
「そなたとて同じではないか」
「ふふ、か弱い人間にしては頑張るな、と思ったのだ」
そう言って、相手は槍を消す。
「サシでやろう」
俺は、頷く。
「リディ、リーシェ、自らの身は守れるな?」
「私達が、反応するのも……やっとだなんて」
ここまで実力差が開いているとは思わなかったのだろう。
リーシェは戦慄くように言う。
今となっては、武力としてはレッド以下かもしれない。
しかしそれでも、内省官としても武官としてもリーシェは一流だ。
「リーシェ」
俺は叱るように言う。
「しっかりしなさい」
ショックを受けたのがわかる雰囲気。
しっかりしすぎてるリーシェだ。
しっかりしろなんて言われた経験はないだろう。
しかし、あえて言う。
「戦力だと思って連れてきた。そなたが活躍する場所は必ずくる。今は耐えよ」
「はっ」
リーシェは消え入るような声で言った。
そして俺は、相手と対峙した。
「剣だけでやろうぜ」
相手はそう言って剣をぶんぶんと振るう。
「……異形が剣術を嗜むのか?」
「いや? 先天的な風習ではない。学んだのだよ」
彼は唇の端を上げる。
「そなたの兄から」
かつて俺より強かった兄を模倣した人間以上の異形。
立ち向かえるのか?
立ち向かうしかない。
背後にも前にも部下がいる。
ハイラルにもミルドにも民がいる。
戦うしかない。
+++
「それでね、クラフト様が愛があるセックスがしたいと酒場で騒いで私は大恥」
「どこが良いのそんなところ」
「クラフト様はダメなところも良いのです。最終的にはいつも私の期待の斜め上を行く」
「それ、褒めてるの?」
ミリィ達の旅はクラフトの恥暴露大会になっているのだった。
(今頃元気かなあ、クラフト様。レッドも、平和にしてれば良いけど。ああーー)
ミリィは倒れ込む。
「良い天気ー!」
エンジョイしているミリィであった。
つづく




