(まったく、陛下といい、彼といい、王家の血筋をなんだと思っているんだろう……)
その頃、アイリンはと言うと、ハイラルから出国する一人の少年を呆れた目で見ていた。
(まったく、陛下といい、彼といい、王家の血筋をなんだと思っているんだろう……)
中々ズレた一族だなあと思う。
そのズレた一族に惚れ込んでいるのが自分だが。
中々に道化。
彼の前に着地する。
「何をやっているんですか、殿下」
「アイリン姉!」
レッドは表情を華やかせる。
「心配してた! 蓄電したって聞いて!」
抱きついてくる。
苦笑して抱き返す。
「心配かけてごめんなさい、殿下。けど、私はもう陛下の下で働くことはできないの」
「陛下が、何か嫌われるようなことでもしたのか?」
思い出す。
髪に飾られる花。
触れる逞しい指の感触。
今でもほおが熱くなる。
あの時から、自分は勘違いしてしまったのだなと思う。
「違うの。私が悪いんだ」
「……そうなの?」
一つ、頷く。
「殿下、今のミルドは危険です。何処から異形の者が現れるかわからない」
「承知の上だ。僕の実力は君も知っているだろう?」
そう言われたらお手上げだ。
アイリンも彼には敗北を喫している。
「アイリン、陛下の役に立ちたい。何か情報はないか」
強い眼差し。
陛下譲りの。
苦笑する。
思ったのだ。
最悪、危機が迫れば、自分が犠牲になれば良いと。
それだけの罪を、自分は背負った。
「……レジスタンスに接触しました。殿下の血筋なら、彼らの指導者になれるかと」
レッドは目を輝かせる。
「行こう!」
「道を探ってまいります。殿下はしばしここでお待ちを」
「うん!」
レッドは素直に頷く。
まったく、可愛らしい子だ。
+++
小高い丘から一同はその砦を見下ろしていた。
「ふむ……」
俺は呟く。
「風上だな、こちらが」
「燃やしますか」
レイヴンは流石察しが良い。
「他国に火計をかけると……?」
リーシェは震えるように言う。
「構わんさ」
俺は淡々と言った。
「俺の実家だ」
勝つためならなんだってやる。
戦力的には不利だ。
どんな計略だって使ってやろうと、俺はそんな覚悟でいた。
つづく




