「思っていたのです。陛下は本当にそのような器なのかと」
「レイヴン様が、言いました。陛下は俺よりも強い、と。しかしレイヴン様の強さは過去ほどではないとはいえ桁違いだ。思っていたのです。陛下は本当にそのような器なのかと」
ほほう。挑発してきやがる。
俺達は鍛錬所で木剣を手にして向かい合っていた。
「私に示してください、陛下」
「がっかりさせぬよう気をつけるよ」
レッドはきっと俺を見た。
その掌に、魔力が集まる。
木剣が燃え盛った。
後には、どういう手品か、赤色に光る緋色の剣が握られていた。
魔法剣士、か。
完全にこのタイプになる戦士は初めて見た。
緋色の剣は増えていく。空中に渦を巻いて漂う。
(げ)
必勝のイメージは崩れ、最悪負けるぞ、という可能性が脳裏によぎる。
空間を圧縮するような加速。あれを使えば勝利は可能だろう。
しかし、それを通常の人間にやれば即死させてしまうのだ。
今回は腕力ではなく技術のみで息子に勝つ必要がありそうだった。
空中に浮かんでいた緋色の剣が飛んでくる。
俺は槍を投げて、それにくくりつけた糸に引かれて移動する。
レッドの爛々とした目が俺の移動先を見ていた。
緋色の剣が振り下ろされる。
俺はその腕を蹴り飛ばした。
レッドは距離を置く。
「足癖が悪いですね、陛下」
ウキウキしたように言う息子。
(こいつぁ本物だ)
感心した。
リディが負けるわけだ。
再び、降ってくる緋色の剣。
同じ方法で回避する。
しかし、狭い訓練所。
槍の届く先なんて目に見えている。
レッドは既に、その先に移動していた。
この移動の難点は、投擲から次の投擲までに時間がかかることだ。
ほんのわずかなタイムロスだが一線の戦士ではそのロスが致命的になる。
(そこを見破ったか、レッド)
「降参ですか? 陛下」
レッドは俺に剣を突きつけて言う。
「お前はその歳にしては突出しすぎている。兵士十人でもそなたには敵わぬだろうな」
「では!」
「それでも今日は、俺の勝ちだ」
レッドは顔に疑問符を浮かべ、その頭に鈍い音を立てて木剣が落ちてくる。
レッドは頭に触れ、自分の背中から滑り落ちて地面に落ちたそれを見て唖然とする。
「私はお前が読むことを読んでいた。それが私の才能だ」
レッドは目を輝かせた。
「皆の言う通りだ。陛下は本当に強かった」
苦笑する。
声が明らかにワントーン高くなっている。
「陛下、私もどうかミルド平定のお供にお加えください」
俺は、言葉を失った。
つづく




