「王の器とはなんだと思う?」
ミルドの第一王子アルトは、両手を縛られ立たされていた。
その口に、異形の者が食事を運ぶ。
女性、だろうか。
「王の器とはなんだと思う。民のために自ら捕虜となった気高き王子よ」
若い外見にそぐわぬ渋い声だった。
「……善き王であることだ」
「違うな。泥水を啜ってでも脱出して再起を図る。それこそが王の器だ」
アルトは黙り込む。
それは重々承知していたこと。
しかし民に被害がいったことで、決意が揺るぎ、今がある。
所詮、クラフトとは違い文官の身であったかと思う。
「それでは、地下から這い出てきた我らには勝てない」
「地下……? そなたらは地下から来たと?」
「おかしいか?」
滑稽そうに女性は言う。
「人間は大地を支配した。しかし海の底や地の底はまだ未開だ。そこに生命体が生きていたとしても、そなたらにはわからぬだろう」
アルトはふっと微笑む。
「今後の参考にさせてもらおう」
「今後、があるとでも?」
女性が冷たい声で言う。
「私は重要な外交カードだ。そなたらに知性がある以上殺せぬさ」
嘯くように言ったアルトだった。
+++
エミリーがメガネをクイっとあげる。
ミルドの平原で、一同唖然としていた。
信じられなかった。
エミリーが今起こした現象が。
「どうです? 陛下。私自身は戦力にならない。しかし私と仙人様の混合機は立派な戦力だ」
俺はエミリーの背を叩いた。
「とんでもない、立派な戦力だ」
手のひらに鈍い痛み。
「女性にそう軽々しく触れる陛下は嫌いです」
アイリンだった。
「お前はリーシェか。まったく奴といい潔癖が過ぎる」
ボヤくように手を引っ込めた俺だった。
新戦力を仲間に入れて、ミルド国境平定戦へ。
つづく




