「圧倒的な、武……」
「このまま退くのも手ではあるが、貴方はどうもここで芽を積んでおいた方が良さそうだ。貴方はミルド奪還に向かうでしょう」
ヒュリエルの背の蜘蛛の手がうねうねと動く。
「だーかーらー、言ったろ。ただの旅芸人だって」
そう言って剣を担ぐ。
今の俺はスキル策謀による観察力で、様々な人物の攻撃パターンを吸収している。
しかし、この瞬間移動を駆使する相手には少し手間取りそうだった。
最悪、逃げられるな。
そんな嫌な予感が胸に湧く。
ヒュリエルはクスリと笑った。
「そう言うことにしておきましょう」
言った次の瞬間、頭上から風切り音。
かろうじて弾く。
厄介だ。こいつ、殺意がない。
「フレア。もしかして、そなたならこの敵に対応できるか?」
「……倒して、良いの?」
パーティー戦は久々だから失念していた。
俺のギフトは策謀。
味方の能力を把握し采配を振るう。
「倒せるか?」
「足止めなら」
「頼んだ」
フレアが双剣を抜く。
敵が警戒するように後ろへ引く。
それに向かって、フレアは双剣を投じた。
「はっ、短調だ」
嘲笑うように言うヒュリエル。
その姿が双剣を掻い潜って前方へと移動する。
その両胸に、新たに投じられた双剣が突き刺さっていた。
「さっきのは、分身」
淡々とした口調でフレアは言う。
その瞬間、俺は爆発的に身体能力を向上させ、一時静止したヒュリエルの首を断っていた。
「圧倒的な、武……」
そう言い残して、ヒュリエルは粉になって消えていく。
「やるではないか」
フレアに言う。
「軽い手合い」
これは思ったより良い戦力になりそうだ。
斥候に出たアイリンが戻ってきた。
フレアは空を見て言う。
「敵の気配が沢山。貴方の武は、上位の敵には気取られる」
頷いて、封印の指輪を再び指にはめた俺だった。
つづく




