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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第十二章・父親期ミルド国奪還編

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「圧倒的な、武……」

「このまま退くのも手ではあるが、貴方はどうもここで芽を積んでおいた方が良さそうだ。貴方はミルド奪還に向かうでしょう」


 ヒュリエルの背の蜘蛛の手がうねうねと動く。


「だーかーらー、言ったろ。ただの旅芸人だって」


 そう言って剣を担ぐ。

 今の俺はスキル策謀による観察力で、様々な人物の攻撃パターンを吸収している。

 しかし、この瞬間移動を駆使する相手には少し手間取りそうだった。


 最悪、逃げられるな。

 そんな嫌な予感が胸に湧く。


 ヒュリエルはクスリと笑った。


「そう言うことにしておきましょう」


 言った次の瞬間、頭上から風切り音。

 かろうじて弾く。

 厄介だ。こいつ、殺意がない。


「フレア。もしかして、そなたならこの敵に対応できるか?」


「……倒して、良いの?」


 パーティー戦は久々だから失念していた。

 俺のギフトは策謀。

 味方の能力を把握し采配を振るう。


「倒せるか?」


「足止めなら」


「頼んだ」


 フレアが双剣を抜く。

 敵が警戒するように後ろへ引く。


 それに向かって、フレアは双剣を投じた。


「はっ、短調だ」


 嘲笑うように言うヒュリエル。

 その姿が双剣を掻い潜って前方へと移動する。

 その両胸に、新たに投じられた双剣が突き刺さっていた。


「さっきのは、分身」


 淡々とした口調でフレアは言う。

 その瞬間、俺は爆発的に身体能力を向上させ、一時静止したヒュリエルの首を断っていた。


「圧倒的な、武……」


 そう言い残して、ヒュリエルは粉になって消えていく。


「やるではないか」


 フレアに言う。


「軽い手合い」


 これは思ったより良い戦力になりそうだ。

 斥候に出たアイリンが戻ってきた。

 フレアは空を見て言う。


「敵の気配が沢山。貴方の武は、上位の敵には気取られる」


 頷いて、封印の指輪を再び指にはめた俺だった。



つづく

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