「取引としては悪くはないのでは?」
ミルドにたどり着いて絶句した。
空が赤い。
夕焼けなんてものではない。
真っ赤なのだ。
「……ずっとこうなのか、ミルドの空は」
アイリンは頷く。
「私が通過した時もこの空でした」
変わり果てた故郷。
こんな途方もない天変地異に対処できるのか、と言う思いが湧く。
色々な意味でミリィが恋しい。
しかし、俺は旦那だ。
一人で立たねばなるまい。
いや、一人ではない。
ハイラルまで行けば心強い仲間もいる。
「一先ず、リーシェ様達と合流しましょう。斥候してまいります」
そう言ってアイリンは一足飛びに前方へ向かって行った。
しばし、待つ。
背後に、気配があった。
「誰だ?」
尋ねる。
「なに、幹部ですよ。現状この国を支配する勢力の、ね」
「刺せば良かっただろう。問答無用で」
今、俺達に医療術士はいない。
怪我をすれば少々厄介なことになる。
「私は理知的な性質だ」
意外な言葉だ。
しかし、異形にも知性があるのだった。
「で、その理知的な御仁が何の用だ?」
「ハイラル国のクラフト王とお見受けする」
「……なぜ、そう思う?」
「武力、ですかね。貴方から発せられる武は他に該当する者がいない」
「買い被ってくれるぜ。俺はただの旅芸人だ」
フレアはぼんやりとした表情で前を見ている。
緊迫感のないやつ。
「どうでしょう。不可侵条約を結びませんか。我々はハイラルに侵攻しない。貴方はミルドを見逃す。取引として悪くはないのでは?」
答えは簡単。
俺は指輪を外すと、後方に向けて抜刀していた。
手応えはない。
消えた?
次の瞬間側面からの刃。
瞬間移動能力者か。
俺は剣を振る。
また相手は消えた。
「ぐんと武力が上がった。貴方は危険だ。ここで終わらせてもらいましょう」
「その俺の攻撃をひょいひょい避けるお前も脅威だぜ。何者だ、お前?」
その時、俺は初めてその男の姿を見ていた。
ベースは普通の人間だ。
しかし、蜘蛛の手のようなものが背後から生えている。
「魔界七公爵。ヒュリエル」
そう言って、相手は花を口元に持っていき、匂いを嗅いだ。
なんだ、調子の狂うやつ。
つづく




