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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
プロローグ・少年期ハイラル国編

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11/55

「不出来な息子だ」

 その日、ミルドの王宮には伝令が馬で駆けてきた。

 それを聞いたものが青ざめ、次のものへ伝達する。

 次々に青ざめていく顔ぶれ。

 そして、話を伝え聞いた大臣は、やはり表情を青くした。


「どうした、コーア」


 王が静かな口調で言う。

 大臣はわななく声で言った。


「閣下、耳をお借りします」


 そして、耳元で伝える。


「クラフト王子、結婚の儀にて花嫁を連れ蓄電の知らせ」


 王はそれを聞き、物憂げに中空に視線をやる。


「くれてやったつもりの息子だったが……人質の任すら果たせんとは。まったく、不出来な息子だ」


「ハイラルの国の大臣が直々に交渉にやって来るそうです」


「今更ハイラルの魔術なしには国は成り立つまいな?」


「たった二十人の魔術師ですが、開拓研究両分野で目覚ましい成果を残しております」


「よかろう」


 王は重々しい声で言う。


「交渉に応じよう。丁重にな」


「はっ」


 大臣が部下に耳打ちする。

 それを見る王は、苦虫を噛み潰すように、小声で呟いた。


「出来すぎている」



+++



「ここまで来れば一安心かな」


「雨が酷い、私も貴方も真っ黒だ」


 俺の言葉に、リーシェが返す。


「こんな雨では火も起こせぬな。どうする?」


 リーシェに問う。

 ミリィは反応しない。

 抜け殻になったようだ。


 今はただ、抱きしめる。

 二親を殺した。その絶望はどれほどのものだろう。

 俺には想像もつかない。


「ハイラルの流儀があります」


 そう言って励ますように気丈に微笑むと、リーシェは四方に柱を立てテントを張り、その下で何やら呪文を唱えた。


 太陽だ。

 小さな太陽が、俺達を照らしていた。


「大したもんだ。流石はハイラル。剣術畑の人間が魔術まで浸かるか」


「サバイバル関係の術ばっかりですけどね。水もほぼ無限に作り出せますよ」


「それは心強いな。当面の目標は、食料、いや――」


 ミリィに視線を向ける。


「ミリィの魔力を封じる、なにか」


「それは大局的な目標としては良いですが、目下のところ食料でしょう。食べずにはいきていけません」


 はっとする。


「どうかしてる。お前がついててくれて良かった。抜け殻になったこいつと」


 そこまで言って胸が痛む。

 嫉妬に狂う感情豊かな彼女も、今は中身が何処かへいって空洞になってしまったようだ。

 あれは、俺だけに見せる顔。

 俺だから見せる我儘。


「儂の罪じゃよ」


(俺も、罪人だ……)


「ともかく、お二人の衣装は目立つ。私はここから北に三リンギある街へ行って服を調達してきます。お二人はしばし、ここで」


「太陽の魔術はどうする?」


「貴方が覚えるんですよ。魔女の婿君なんですから」


 そう言って悪戯っぽく微笑むリーシェだった。


「俺が、魔法を?」


 怪訝な表情をする俺だった。


「ええ、貴方が、魔法を。貴方が私に剣を教えてくれたように、私が貴方に教えます」


「……頼む」


 人口超小型太陽を見ていてふと、思いついた。


「そうだ」


 呟くように言う。


「青空だ」


「青空?」


「ミリィといつか見ようと約束していた。それを見れば、ミリィも正気に戻るかも知れない」


「この国を横断することになりますね」


 リーシェが思案するように言う。


「まずは着替えと食料です。相談は今後」


「すまない」


 そう言うと、リーシェは俺の手をとって魔術の指南を始めた。

 ミリィが嫉妬しやしないかと思ったが。

 少しも反応しなかった。


 なんだか大事なものを失ったような寂しさを感じた俺だった。

 今思えば、夢のような時間だった。

 嫁がいて、理解のある義父がいて、周囲から慕われる生活。

 今までの俺にはなかったもの。

 俺の兄貴が独り占めしていたもの。


「魔女を追放せよ!」


 老近衛兵の叫び声が脳裏で反響する中、なんとか魔術を一つ習得した。




つづく



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