「私の剣になってください」
ミリィは忘却呪文に覆われた国に戻っていた。
水中を移動し、国内に入る。
相変わらず虚な表情の人々。
ここで人々は永遠にこのまま過ごすのだろうか。
果てしない話だと思う。
ミリィは正直、自分の寿命に関しては半ば諦めつつあった。
クラフトには言っていないが、後三年保つかどうかだろう。
しかし、それで良いと思っている。
アイリンが自分を避ける理由もなんとなく察している。
なら、上手くいけば良いと思う。
歩いて、王宮の扉を開ける。
若者が、以前と変わらぬ様子で待っていた。
そして、睡眠しているらしいリンド。
「……護衛ではなかったのですか?」
「この国に変化はない。まともな者はおかしくなっていくのだよ。だから必要な時まで睡眠させた」
淡々と言う若者。
「女は女様になり男は男様になる。感情的になり、排他やすれ違いが起きる。人間とは一皮剥けばそんなものだ」
自殺者が多いと言うのは永遠に耐えかねただけの話ではなさそうだなと思う。
あまり知りたくなかった。
「リンドを私の護衛にしたいのです」
ミリィは単刀直入に言った。
若者は唖然とした表情になる。
「しかし私の不死者暗号が」
「私が忘却呪文で消しましょう。一旦、私が預かります」
「しかし、出来るのか? 忘却呪文の維持で弱体化したとは言え、現在の私の魔力を超えねばならぬのだぞ」
ミリィは、無言で魔力を解放した。
膨大な魔力が国を貫く。
慌てて両手を前に出す若者。
「まて、まて、それ以上は駄目だ。この国を覆う呪文が崩壊してしまう」
そう言って、微笑んだ。
「わかった、君に託そう。スカーレットの残した芽は、このように咲いていたか」
「元々、寿命を考えねばそれは可能だった。今は、命を削ってでも護衛が欲しい」
リンドが目を開き、起き上がる。
ぼんやりとした表情だ。
「リンドさん、話が変わりました」
「んー……ミリィちゃんじゃん? 行ったんじゃなかったっけ?」
「クラフト様は国に帰りました。異形の者が国を支配したのです」
リンドは立ち上がる。
「じゃあ、病を回復する術は⁉︎」
「私と、探しに行きましょう」
そう言って、ミリィは手を差し伸べる。
「私の剣になってください」
リンドは頷いて、その手を取る。
「ここからは、あんたと私の旅だ」
つづく




