「嫌でございます」
「それは、ある晩のことでした」
歩きながらアイリンが言う。
「異空間から次々に異形の者が現れるようになり、あっという間にミルドを征服したのでございます」
「数で来たか」
それなら兄に土がついたというのも理解できる。
「しかし、兄上なら対応ができたように思うが……そんなに強いのか、異形の者は」
「一騎一騎がヴーンクラス。それも大量に」
「ヴーンの対処は簡単」
ホムンクルスの少女が呟くように言う。
「蓋を開いたところに魔法を叩き込むだけ」
「ほう」
護衛にとつけてもらったのだが、戦力になりそうだ。
「しかし、これは急がねばならぬな」
そう言って俺は立ち止まる。
「そちら、私の背に乗れ。高速で移動する」
「嫌でございます」
即答だった。
「陛下は好色でございますね……」
呆れたように言うアイリン。
どこか引いているように見える。
「いや、俺、オッサンだから! 今更女の子と触れたってときめかないから! 状況、状況、わかるかな!?」
「移動速度なら私も陛下にひけを取りません。速度を上げましょう」
そう言って、アイリンは再度駆け始める。
確かに、速い。前より速くなった。
俺はホムンクルスの少女をひっつかむと、高速移動を始めた。
異形の者に支配された故郷。
一体、どんな様相になっているのだろうか。
不安が沸き立った。
つづく




