「酸素は歴史を紐解けば最強の虐殺兵器だった」
「こうなっては観念しよう」
二日の探索でお互いクタクタ。
ここらで一つ仮眠を取ろうと言うことになった。
互いに番をすることにする。
まずはミリィの睡眠だ。
「しかし、お気をつけください、陛下。何かあればすぐに私を起こすように」
「ああ、わかっておる」
俺は優しく言う。
「知っていますか、陛下。最強の殺戮兵器のことを」
「ヴーンか?」
それぐらいしか思い当たるものがない。
古代人の知識が今の時代にあまり残っていないと言うのもあるかもしれない。
「酸素ですよ」
淡々とした口調で言うミリィ。
「酸素とは、空気のことか?」
「そのようなものですね。厳密には空気は様々なもので構成されているのですが、我々が吸い込んでいるのは酸素でございます」
「……酸素の何処が猛毒なのだ?」
「我々は酸素ができた後に生まれた生物。それ以前の生物にとって、酸素は毒にしかならなかったのです。酸素は歴史を紐解けば最強の虐殺兵器だった。スカーレット様の知見です」
俺は黙り込む。
もしも世界が俺達の適応できていないもので満たされれば、生き物などひとたまりも無いのだろう。
「くれぐれも、異変を感じたら、真っ先に私を起こすよう。目に見えるものだけが敵とは限りませぬ」
「これでもそなたよりはサバイバル経験があるつもりだがなあ」
「レイヴン様尺度で考えられても困ります。では」
そういってミリィは目を閉じた。
静かなものだった。
そのまま、ミリィは起きなかった。
いけないと思いつつうとうととし始める。
二日徹夜だ。
ミリィの睡眠も長いし、自然と俺も眠くなる。
その時、足音がした。
「旅の人かい」
若い女性の声だ。
「道に迷ったなら出口まで案内してあげるよ」
優しくいう。
「そうもいかんのだ」
俺は淡々とした口調で返す。
「我々は長寿の法を探して旅をしている。目的のない旅ではないのだ」
「それでは、どうあってもこの国の首都を探すと?」
「ああ」
周囲を、殺意が漂い始めた。
「なら、死んでもらうしかなさそうだ」
さっきまでの優しい口調はどこへやら。静かな口調で、女性は言った。
俺はミリィを背にして立ち上がった。
手には剣。
活き活きとしていた。
この国でやっとつかんだ足がかりだった。
つづく




