「これは……」
「これは……」
アイリンは階層の前で立ち止まっていた。
主君達の足取りは掴めた。
しかし、ヘンリルの階層は見事なものだ。
この先は足取りを追えないのだろうか。
そんな不安が鎌首をもたげる。
ハイラル国は既に後継ぎがいる。
主君達がいなくなっても国は保たれるだろう。
しかし、皆心配している。
あの二人を。
どうしたものかと少し考え込む。
「困っているようだね」
頭に声が響いた。
スカーレットの声だ。
「スカーレット様、ですか?」
周囲の気配を探りつつ言う。
「君は既に成人したミリィと違い何かと危うい。幾分か心配になった」
「ありがたい話です」
苦笑交じりに言う。
「どうすればこの階層を越えられましょうか?」
「なに、その国の王に直接交渉してあげよう。君が先に行けるように。ただし」
「ただし?」
「その先にあるあの国は少々厄介だ」
スカーレットをして厄介と言わせる国はいかなものだろうか。
アイリンは少々不安になった。
+++
一日かけて霧の中を歩いた。
どこまでも霧。
国を覆う、霧。
「若干、飽きてきたな。人の気配も探知できん」
俺はぼやくように言う。
ミリィも頷く。
「どうもこの霧は厄介なケがあります。気配が探りづらい。読心も少々機能していないのです」
「寝るのも少々不安だなあ。武で来る相手にお前は対処できるか?」
「レイヴン様クラスじゃなければ、多少は」
少し自信なさげに言うミリィ。
レイヴンに距離を詰められて俺に対処を頼ったのは苦い思い出だろう。
「もう一晩、歩くか。どうも調子が狂うな。夜が来る時間かと思ったが暗くはならない」
「あるいは、忘却呪文に満たされたヘンリルのように、この国はなにかに覆われているのかも知れません」
二人、考え込む。
「とりあえず、歩くのみだ」
俺の言葉に、ミリィは頷いた。
つづく




