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放浪王子と引きこもり姫の追放社不結婚  作者: 熊出
第十章・成人期???国編

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「奇妙な術だ」

 霧の中で気配を感じて、俺達は立ち止まった。


「感じているか?」


「感じておりますれば」


 二人、頷きあう。

 殺意ではない。

 しかし明確な警戒心。


「出てきてはくれぬか、我々に害意はない」


 そう言って武器を手放す。

 妻も杖を放り出す。

 それは防衛を忘れたわけではない。

 徒手空拳でも敵を倒せるという自信からくる行動。


(……やや慢心かな)


 しかしいざ対人戦となれば殺しは躊躇うところだろう。

 風を切る音がした。


 短剣。しかも六方向から。


「奇妙な術だ」


 そう淡々と言い、二本を握りしめる。

 残り四本は俺の体を貫くかと思ったところで霧となって消えた。


「幻影魔法の一種、というところでしょうか。それにしてもこの速度でこの幻影は見事なものです」


 ミリィが淡々とした口調で言う。

 彼女も察していたらしい。


 俺は武で知り、妻は魔で知る。

 俺達はその分野でも極まった存在と言えた。


(やはり慢心かなあ)


 けど自分より弱い相手を甚振る趣味もないし。


「怒ってはいない。出てきてくれ。対面で話をしよう。この国のことも聞きたい」


 糸で繋がっているらしい。短剣が引かれる。

 しかし、動かない。

 俺の握力が相手の腕力を圧倒的に抑え込んでいるからだ。


「話が、したい」


 俺は淡々と言う。

 そのうち、糸がだらんと垂れたのがわかった。

 気配が去っていくのがわかった。


「この国のこと、何かわかると思っていたのですがね」


「……全く、今夜の宿もままならぬとは」


 溜め息混じりの俺達だった。

 この国は霧に包まれている。

 その他のことは、一切、わからない。


つづく

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