第4話「狩り」
前回までのあらすじ
不死身の少女、アタナシアは魔女にさらわれた双子の身代わりとなって生贄になった。その時現れたのは、本来現れるはずない悪魔で、その場にいた魔女達は惨殺された。
───今回───
バンガルシア視点
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ギャバン視点
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バンガルシア視点
バンガルシア・ドットトールは何より秩序を重んじた。
曲がったことが嫌いだったのだ。
12歳の頃、近隣で起きた殺人事件の逃亡犯3名を一人で相手取って、捕らえたのも秩序の破壊者が許せない故であった。
そして15になるが早いか、その正義感を買われてサラマリア教の旧派、トライアングル直属の対異端部門へ招待された。
今や、人を害する黒魔術を扱う、黒魔女専門のハンターである。
通り名は「灼炎のバンガルシア」
その職業柄、相対するのは黒魔女である為、対抗手段としてハンターは同じく黒魔術を習う。
彼にとって、それは何よりの屈辱であった。
悪をもって悪を誅する。そこに正義は無いからだ。
だが、割り切らねば立ち行かぬ。
そこで彼は考えを改めた。
黒魔女は「人ではなく畜生である」と。
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当てもなく森を走る。この狼の姿でも、息は切れるのだ。あの時、迂闊に小娘を殺すのではなかった……!
思わないじゃないか……本当に不死身だなんて……!
それに、あの時召喚された悪魔。あれはなんだ。本来召喚しようとしていた悪魔より遥かに高位の悪魔……!
こちらの要求など一蹴される。奴らにとって、人間などノミ以下だ……!
魔女が魔術を修練する一側面に、悪魔と渡り合う為の武力の保持がある。だが、あれは……あれはそんな人間のちゃちな技術など足元にも及ばない……!
全身の毛が逆立って、脳味噌が全身に命の危機だけを伝えていた。背後で起きている惨状など、気にしている間などなかった……!
そして逃げた先に、奴がいた。金髪を刈り上げたナナフシのような細身の男……!
話に聞いたことがある。灼炎のバンガルシア。黒魔女を人とも思わぬ鬼畜……!
ゴウッ、と突然、目の前に炎の壁ができる。
私の周囲は火の円で囲われている。
……檻のつもりか……。
「虚仮にしよってぇ……!」
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炎はいい。
どんな暗闇も照らし出す。
かつて炎のない世界の夜は暗闇だったろう。
暗闇とは恐れだったろう。
「原初の恐怖」だったろう。
で、あれば。
暗闇を打ち砕くこの炎は、「原初の希望」だったのではないか。
「小童ぁ!逃げ回ってりゃあ良い気になりおって……!」
巨躯に根付いた体毛を逆立てながら狼はそう言った。
「狩人に背を向ければ、それ即ち、死するだけの獲物である」
私はそう返した。
「来たれ来たれ炎の精よ。照らせ照らせ永久の闇。偽りは真に、盛りて伸びよ。猛き猛き。いざ尽くせ」
私が左手を前に出し、そう唱えると火球が現れる。火の精霊が作り出す、灼炎である。
「わたしを誰と心得るぅ!そんなちゃちな火遊びで、私を殺せると思うてかッ!」
狼は前かがみになり、力を貯め、一気に私に向けて飛びかかる。
「わたしはッ100年生きた黒魔女だ!!」
「随分空虚な百年だったな」
私は畜生に向けて、分裂させた火球を四方八方から放った。
***
「……驚いたな」
周囲の木々や草花は先程の戦いにより、炭化している。荒地となった大地に、それは横たえていた。
大概、私の火球を受けたものは即死するのだが、この狼はまだ息がある。
火傷を通り越し、皮膚は炭と化しているというのに。肺も熱でやられているはずだ。今生き延びたとて、そう長くは無いだろう。
「くっくくっ」
狼は可笑しそうに笑った。
「何がおかしい」
「いいこと教えてやるよぉ。この近くにもう1人魔女が居るぅ」
「魔女……?」
「そうさぁ。不死身の魔女さぁ。やつは己の不死を利用して、悪魔の召喚を際限なく行えるのさぁ」
そんなものがいるのか。それは……最優先して殺すべき畜生だ。
だが……
「何故貴様がそれを私に教える。意味がわからない。仲間だろう」
「仲間ぁ?はっはははっ!あんたぁ、面白いこと言うねぇ。魔女が一枚岩だと思ってのかい?そんなわけないだろう。でなければ、各国の魔女があのミイラを保有することは無かったさぁ」
「私からすれば、どれも同じ畜生だ」
「そうかい。そりゃ単純でいいやなぁ。とにかく、ここから一番近くの村に行きなぁ。そこに、不死身の魔女はいる……」
そう言うと、狼は動かなくなった。
地獄に行ったのだろう。
とりあえず、回収部隊に連絡しなくては。
そして……不死身の魔女……か。
殺さねばならぬ。秩序の為に。
次回更新は本日20時になります。
凄惨な夜を越した(2、3話)アタナシアのその後とは。
お楽しみに!




