番外編 裏root.ⅲ 麻音×航汰 恩田麻音 & 亜桜和奏の共通項。美人クラス委員長の嬌声。
恩田麻音、というのが、あたしの名前。
高2の現在、クラス委員長を務めるあたしは、周囲からは、真面目な忠犬のようなイメージを持たれているようだ。
処女と勘違いされることもあるけど、実際にはそんなことはなく、男子との経験だって普通にある。
そんなあたしの、小学生時代のあだ名は『オンオン』だった。
名前の頭とお尻の部分を繋げただけのニックネーム。男女問わず、みんなから呼ばれていたそのあだ名。意外とお気に入りだった呼び名。
……しかし、『ある出来事』をきっかけに、今では誰にも呼ばせなくなった。
——そう。あれは忘れもしない、中学1年の夏。
殿村くんが現れるまで、男の子に一切興味を持たなかった和奏。
そんな彼女が、小6の頃にちょっと仲良くしていたらしい男の子と、あたしがお付き合いすることになった。
彼は、あたしに生まれて初めてできたカレシ。
そして、今でもトラウマになっている、初エッチした際の出来事。
◆◇◆◇
「…………! …………!」
——初エッチの際、
自身の口から発せられた、
ケモノのような喘ぎ声。
(……えっ?!
あたしの声、これじゃあ、まるで……?!)
男子に裸を見られる羞恥心や、
挿入の痛みよりも勝るトラウマ。
——その、野性のケモノのように激しい喘ぎ声。
それに驚愕したのが原因で、
お気に入りだった、あだ名を
封印する羽目になったのだった……。
◆◆◆◆
あたしは現在、同じクラスの相田航汰と付き合っている。
——彼との馴れ初め。
それは、あたしの親友、亜桜和奏と、最近になって和奏と仲が急接近した殿村優についての関係、
……そして辛そうな凛のこと。
それらについて、殿村くんの友達である航汰に相談したことからはじまる。
凛と和奏の性的指向についてはなんとなく察していたが、具体的な部分については聞くのも憚られるため、よくは知らなかった。
和奏については、あまり心配はしていなかった。
本人に自覚はないかもしれないけれど、1度好きになれば、男性でも受け入れられるように見えたから……。
なにせ、あたしの元カレと仲が良かった時もあるくらいだしね……。
——しかし、凛については、和奏がいないと駄目だ、というのは、見て分かっていた。
それもあり、たとえ高校の間だけでも、和奏が男の子と接触するのをできるだけ阻止したかったのだけど……。
——まあ、好きあう男女を引き離すなんて、無理な話よね。
……だって、あたしだって、航汰と仲良くなって、
エッチしたかったんだから……。
◆◆◆◆
航汰のことについては、以前から気になって、チラチラ見たりしていた。
——もしかしたら、この相談をきっかけに、航汰と仲良くなれるかな? なんて思ったりもした。
そんな風に、己の利益のために、誰かの思いを利用してしまう自分に、ヘドが出た。
殿村くんがクリスマスプレゼント選びに付き合ってくれと言ってきた時。
なんだかんだ言いつつ、彼に付き合ってしまったのは、それらに対する自身の贖罪的な面があったのかもしれない。
◆◇◆◇
——そしてとある放課後、黄昏時。
相談と称して、航汰の部屋へと行ったあたし。バッグには『ゴム』が1箱入っている。
コンビニで買う時、恥ずかしさで声が裏返っちゃったりもしたけれど……。
何度も訪れた彼の部屋。学年一位の成績を誇る航汰のプライベート空間。
トップの成績を維持するため、本棚にうず高く積まれた、参考書の山。なんとなく、ボーッと見やる。
——彼があたしに気があるのは以前から分かっていた。
教室で、航汰があたしとヤりたいと言っていたのも、本を読むふりをしつつ、横目でこっそり聞いていた。
中1の時に付き合っていた彼とはすぐに別れてしまい、高2の今に至るまで、彼氏のいなかったあたし。恋の駆け引きなんてよく分からない。
(航汰から告白してくれないかな……もしくは、あたしから告白する——?)
あたしとヤりたいとか話していたのに、ヘンなところで臆病なのか、なかなか手を出してこない彼。
(彼と付き合いたい、エッチもしたい……。
でもどうしたらいいのか分からない……)
……そんなことを考えながら。
——ぽすん、本棚に寄りかかる。
そのちょっとした軽い衝撃。
しかし、棚の上、不安定に積み重ねられていた大量の参考書が、あたし目掛けて降ってきた。
(あぶない——!)
咄嗟に目を瞑るあたし。
ドサッという鈍い音。
航汰の、ウッ、という小さな呻きが聞こえた。
——おそるおそる目を開ける。
……仰向けになった、あたしの体。
航汰が、あたしの体を庇って抱きしめている。
大量の参考書は、彼の背中に当たってしまったらしい。
「恩田、大丈夫か……?」
「う、うん……え?」
——ふと、胸に感じた違和感。
自身の胸元へと、視線をおろす。
彼の右手が、セーラー服の上からあたしの乳房を鷲摑んでいた。
「あっ、すまない……!」
事故とはいえ、慌てて手をどかそうとする航汰。
——しかし、咄嗟にあたしの体を庇ってくれた彼。
意を決したあたしは、彼の手をとり、自身の黒セーラーの中へと入れる。
ハッ、とする航汰の顔。
あたしは服の中でブラジャーを上にずらし、むきだしになったふたつの膨らみに彼の手を重ねて、触らせてあげる。
「………………ッ!」
ナマの胸。固くなったあたしの乳首が、航汰の手のひらに当たっている。
(あぁ、心臓止まりそう……!)
あたしはスカートを穿いた両脚を大きく開き、愛液でびしょびしょに濡れたショーツを、彼の前に晒した。
「…………航汰、シていいよ…………?」
「なに言ってるのか分かってるのか…………?」
「うん。エッチ、しよ…………」
令和のご時世。
築いた栄華も、一晩で崩れる現代。
昨今の、イケメンの人気者といえども慎重にならざるを得ない、複雑な性事情。
あたしから同意の言質を得た航汰。
彼の目に野性の光がともった。
——そのままあたしたちは、生まれたままの姿になり、おたがい激しく求めあった。
中1以来、久し振りのセックスに、以前よりも更にすさまじく、ケモノの遠吠えのような喘ぎ声をあげながら……。
◆◇◆◇
——気が付くと、窓の外は完全な暗闇。
裸でベッドに横たわるあたしたち。
ベッドのそばには、大量の使用済みゴムの山……。
0、03ミリの薄い隔てに封じ込められた、性の残滓。
(——殿村くんに、和奏とのこと言えた義理なんかないわね……)
ゴムの山を眺めながら裸の胸で自嘲した。
——そして。
あたしはベッドの上で航汰から告白され、付き合うことになった。
それからは、あたしが生理の時以外は、彼と毎日エッチしてしまっている……。
◆◇◆◇
放課後の帰り道。
「——なんだか、あたしと和奏って似てると思わない?」
目の前の航汰に、思わず漏らしてしまったひとこと。
彼の目が、あたしの黒セーラーの胸元を押し上げる、そのふたつの膨らみへと向く。
「胸のことなら全然似てないだろ。
亜桜は91だけど、麻音は85で全然違う——、
——ブルォッ!?」
「……不適切発言よ? 令和じゃなくても、ね」
「スマン……」
あたしの平手打ちを食らい、赤くなった頬をさする彼。
——イケメンでモテそうな航汰。たが、意外なことに、あたしがまだ2人目の彼女らしい。
どうりで、口先ばかりで女慣れしてないわけだ。
男子同士なら気遣いできるのに、女子に対すると口が軽くなっでしまうのが災いしているのかもしれない。
「あのね、和奏と似てるのは、口調のことよ。『かしら』とか、『なのよ』とか……」
「……まぁ、口調なんて被ったところで、どうしようもないだろ?」
「そうなんだけどね……殿村くん、あたしに和奏のクリスマスプレゼント選びを頼んできたじゃない? あたしに和奏を重ねてみてるのもあるんじゃないかしら……」
「優に害はないから、気にしなくていいと思うけどな……」
「……航汰は、あたしが殿村くんと話してても、嫌じゃないの…………?」
「……麻音は、俺に夢中だから、浮気や不倫の心配はないからなぁ……」
「…………ッッ!」
あたしに全幅の信頼を寄せてくる航汰。
以前、殿村くんが、クリスマスのプレゼント選びに付き合ってほしいと言ってきた時、もちろん彼にそのこともレインで伝えたが、平然としていた。
——もうすこし彼に嫉妬してほしいという気持ちもある。
「……で、麻音。とりあえず俺の家、来ないか?」
「……ちょっと、今日、腰が限界で……、
勉強もあまり進んでないから、そっちもやりたいし、
流石に毎日だと親御さんにバレそうだから……」
この連日におよぶ航汰との激しい行為により、あたしの腰は完全に悲鳴をあげていた。
勉強もなかなか進まずに、成績維持がキツい。
……だが、この腰の痛さについては、毎日エッチできるほどに、あたしの体が健康であるという証でもあるのだ。
「……勉強もたしかに大事だよなぁ……、
ただ、今日なら、親が一泊旅行で不在だから、俺のベッドでひと晩中、ヤり放題だぞ? まぁ、腰が痛いなら無理することはないが……」
航汰の言葉に心が揺らいだ。
「はぁ……仕方ないわね……。
でも、今日は1回だけよ……?」
重い腰をあげるあたし。
「おっ、ヤる気になったか。
——でも麻音ってさ、アノ時の声、遠吠えみたいで凄いよな。
『オーン、オーン!』って、まるで、麻音のあだ名の『オンオン』みたい——、
————ウギャワワアアァァァーーー!!!!」
地面に転がり、股間を押さえて悶絶した彼。
「——前回は、みんながいたから許したけど……、
ホントに息の根、止めるわよ……?」
「……ズミマゼン……」
「……はぁーー……」
◆◇◆◇
——夜。航汰のベッド。
すでに何度も体を重ね合わせ、互いの性の虜になっているあたしたち。
野性の本能をむきだしにし、無我夢中で彼とひと晩じゅう交わり続けた。
——あたしが自らのあだ名を封印したきっかけ。
普段はおとなしい犬が、不安げに鳴くような。
その『オーン、オーンッッ!』という、ケモノの遠吠えのような嬌声をあげながら……。
◆◆◆◆
——翌朝。重い腰を抱えて自宅に帰ったら、親にこっぴどく叱られた。
あたしの腰の痛みはいつまで経っても引くことはなかった。
◆◆◆◆




