番外編 裏root.ⅱ 優 × ——ちゃん ふたりのファーストKiss。
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和奏に、『僕がもしも、同性愛者だったら』という話をされて思い出した、過去のひと幕。
小学3年までクラスが一緒で、今は遠くに引っ越してしまった男の子。
背は、僕より数センチ低く、男の子にしてはちょっと髪の毛が長めで、今思えば、なんとなく和奏に似た顔立ちだった。
そのかわいさに、顔を見てドキリとしたこともあったくらいだ。
僕もたまに顔立ちから女の子と勘違いされることもあったが、その子は、本当に女の子かと錯覚してしまうかわいらしさがあった。
かわいげな見た目から、僕はその男の子を、
『——くん』ではなく、『——ちゃん』と、ちゃん付けで呼んでいた。
その頃、好きな女の子もいなかった僕は、若干の恋慕の想いもあったかもしれない。
——ちゃんは、周囲とはあまり馴染めておらず、僕自身もあまり周りとうまくやっていけるタイプではなかった。
僕たちは親同士がPTAで交流があったこともあり、親つながりから、休みの日、一緒に遊ぶことも多かった。
◆◆◇◇
小学3年。とある土曜の昼下がり。
外で遊んでいた僕たちは、突然降り出した雨に、ずぶ濡れとなった。
——ちゃんを連れて、僕の家へと急いで帰り、一緒にお風呂に入ることになった。
脱衣所で裸になった僕たちは、体を洗い、温かい湯船に浸かる。
——ちゃんは、顔立ちが女の子っぽいだけで、普通に男の子のモノは生えている。
むしろ、毛まで、ちょろっと生えてきているくらいだ。
「優くん、ぼく、今度引っ越すんだ……」
——ちゃんに言われた一言。
「え」
心臓が止まりそうになる。
「そ、そうなんだ……」
あくまで平静を装う僕。
「ねぇ、優くん……ちょっとエッチなこと、してみる……?」
——ちゃんの口から、衝撃の一言。
「え……? うん……」
エッチなこと。
それがなにかは分からない。
しかし、イケナイことだろうとは思いつつ、素直にうなずいてしまう。
「ん……、」
僕より、数センチ背の低い——ちゃん。
上目遣いに見つめてきたかと思うと、不意に僕のくちびるへと自身のくちびるを重ねてきた。
……ほんの刹那の間。すぐに離れていく。
たった、2、3秒ほどの軽い交わり……。
「——ちゃーん、優ーー?
お風呂あがったら、プリンあるからねー!」
脱衣場から母さんの声。
「——分かったー!」
母さんの呼びかけに、大きな声で答える。
「ね、ねぇ、さっきのこと……」
不安そうな、——ちゃんの顔。
「……うん、ふたりだけの『ヒミツ』だよ……」
精一杯の笑顔をつくる僕。
「……うん、ありがとう!」
僕に抱き着いてくる、——ちゃん。
裸の平らな胸からは、熱い鼓動が伝わってきた。
◆◆◇◇
カノジョからキスの経験について問われた時、正直に話すべきか、逡巡したこともあった。
しかし……、この出来事だけは、僕がしっかり墓場まで持っていく。
これは、僕と、——ちゃん、
ふたりだけの『ヒミツの出来事』だから……。
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