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大学生は頭が悪い ~アットホームなサークルです。笑顔が絶えないバイト先です。懇切丁寧に指導する大学です~  作者: ノーパクリ・ノーオマージュ
2限目 モラトリアム ~ 期末試験と夏休み ~
83/85

82 旅は道連れ世は情け


 翌日。


「あの時の約束を果たすとしようか」


 約束の相手の前に立ち、俺は宣言した。


「は?」


怪訝、不審 何言ってんのこいつ。

そんな内心を隠しもしない七瀬の冷めた目線が、突き刺さる。


「誓ったよな、七瀬。俺達はともにやどかり祭を作り上げ、その後の試験を乗り切ろうと」


 七瀬のそんな視線は慣れ切ったもの。俺は構わずに本題に入る。


「あー、確かにそんな話はしたけど」


 ようやく俺の言わんとしたことを理解したらしい七瀬は、隣のゆずちゃんと目を合わせ、


「私達、とっくにやどかり祭実行委員会の遅れ分、取り戻してるし」


「「だにい!?」」


 その余裕発言に俺達は驚愕を叫ぶ。


「い、いつの間にそんな事態に」


「や、あんたらがさんざ講義ぶっちして遊び惚けている間に」


 思わず呻く俺に、七瀬はしらーっと冷めた目線を送ってくる。グッと呻く俺達だが、続く言葉が出てこない。


「この役立たずがっ」


「だったらお前が何とかしろっ」


 八代と俺は小声で役立たずな互いを罵りあう。

 まずい。ここで引き下がるわけにはいかない。モヤシのノートを失った今、俺達に残された望みはここしかないのだ。


「そ、そんなことを言っていいのかな」


 声を震わせながらも何とか言葉をつづけた俺は一縷の光を見出した。


「なによ?」


 俺の震え声に七瀬は余裕の問い返し。


「覚えてないのか?」


 しかし、自らのストロングポイントを認識した俺の声に、もはや怯懦はない。


「なにを?」


 そんな俺の様子に、七瀬は若干の不振を覚えたようだ。


「忘れもしないやどかり祭準備日。あの激戦の日。俺達はともにあの激動を乗り切った」


 情緒豊かに俺は語る。


「情に訴えようったって無駄よ」


「ふっ、そんな不確かなものになど頼らん」


 あまりに浅はかな指摘に失笑が漏れる。


「そうあの日、俺達は共に戦った」


 苛立たしそうに眉を顰める七瀬に俺は告げる。


「では、その時の板書は誰に頼んだのだったかな」


「……クッ」


「細谷っ!」


 すべてを察した七瀬は悔し気に声を詰まらせ、反対に八代は歓声を上げる。


「そう、この俺に頼んだんだったよなぁ!」


「クゥッ」


「素晴らしい!」


 珍しく悔し気に表情を歪める七瀬と八代の喝采に、俺は勝利の高笑いを上げた。

 フハハハハハッ、愉快愉快!


「あれ? でもあの日、細谷さんって結局準備に来てましたよね?」


 ふと、ゆずちゃんが不思議そうに疑問を口にした。


「あれ、そういえば結局こいつも来て」


 七瀬はゆずちゃんの言葉を繰り返し、スゥッと視線を講義室の一角に流した。

 

 視線の先には、俺達を憎々しげに睨むブサイク三人衆。


「あいつらに頼んでくるからいいわ。あんた用無し」


 あっさりと俺に見切りをつけ、七瀬は机に手をついて立ち上がろうとした。


「「ま、まてっ!」」


 咄嗟にその肩を手で押さえつける。


「共に戦った戦友を見捨てるのか!?」


「やめてくんない、その言い方。ホント不名誉だわ」


 戦友の涙の説得にも、七瀬はパシッとあっさり手を叩き切る冷徹さ。


「思い出せ! あの栄光の日々を!! 俺達が共に輝いていた青春を!!!」


 目に涙し、声を上げ、俺は一緒に駆け抜けた日々を語り掛ける。


「別に私たちはその後もきちんとした日々を送ってるけどね。あんた達堕落組と違って」


 しかし、揺ぎ無き七瀬の武士道が揺るがない。


 クッ。この頑固一徹武士を折れさせるには。

 八代とアイコンタクトを交わし、俺達の視線は地面へ下向く。


「ちょ、ちょっとっ!」


 ようやく焦りをはらんだ七瀬の声も遥か頭上。俺達の体は床を這い、頭は地に擦り付けられている。


 ジャパニーズ土下座。

 武士ならば当然ご存じ。日本人全身全霊の懇願ポーズである。


「や、やめてよ、目立つじゃない!」


 その通りだ。この同額類生が溢れる講義室。そこでの衆目にお前は一体どこまで耐えられるかな?


「八代君イケメンなのに」

「細谷君はともかく」

「あの二人、昨日は暴力騒ぎしてたし」


 ほら見ろ。この学類女子のヒソヒソ話が聞こえるか? 早く折れた方がいいぞ。俺のためにもな!

 ……ダサメンざまあみろな半面、俺はともかくってどういうことですかね。


「あ、葵。少しくらい手を貸してあげても」


 ゆ、ゆずちゃん。羞恥と低調な学類女子評価に流れる俺の血涙が、ゆずちゃんの優しさに温もりを帯びた。


 ここまでか! ここまでしてもダメなんかぁ!? 

 グゴゴゴと血涙顔を上げれば、深い深いため息が頭上から降ってきた。 


「……仕方ないわね」


「「な、七瀬様!」」


 御大の受容に俺達は喝采を上げる。


「代わりにあんた達も手伝いなさいよ!」


 そんな俺達に、七瀬は命令するように叫んだ。


 ――手伝う?


 微かな疑問を抱きながらも、俺達は七瀬様の後に付き従うのだった。



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