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大学生は頭が悪い ~アットホームなサークルです。笑顔が絶えないバイト先です。懇切丁寧に指導する大学です~  作者: ノーパクリ・ノーオマージュ
2限目 モラトリアム ~ 期末試験と夏休み ~
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81 やはり暴力……! 暴力は全てを解決する……!!


「クソッ! あのクズがッ!!」


「友情を金に換えようなんてなんて奴だ!」


 俺達はやり場のない怒りを学食の机に叩き付ける。


「落ち着けよ」


「奴がクズなのは紛れもない事実だが、今は奴にイニシアティブがあるのは間違いない」


「くそっ、どうすれば」


 俺は机に肘ついた両腕で頭を抱え込む。


「まあ、待てお前ら」


 そこで、嘘のように冷静なゴリラが割り込んでくる。


 なに余裕こいてんだ、このゴリラ? 低能な類人猿の分際で何か考えがあるというのか?


「落ち着いて考えろよ」


 猜疑に満ちた俺達の視線を一身に受けながらも、ゴリラの余裕は崩れない。


「必要なのはあいつじゃない。あいつのノートだ」


「ほう」


「確かに」


「その心は」


 存外に的を得たゴリラの指摘に、俺達は希望を見出す。


「どれだけ粋がったところで、所詮あいつは非力なモヤシだ。数と力ではこちらに分がある」


「「「おおっ!」」」


 脳みそまで筋肉に変えた漢の雄々しき姿に俺達は喝采を叫ぶ。


「「「「クククッ」」」」


 やはり暴力……! 暴力は全てを解決する……!!


「「「「フハハハハッ!」」」」


 勝利を確信した俺達は、戦勝の前祝の盃を交わしながら、戦いに向けて腹ごしらえをするのだった。



   ※※※



「おらあ、寄越せや!」


「この貧弱モヤシが! 調子に乗ってんじゃねえぞ!」


「ギャー!」

 

 午後一の講義終了後の休み時間。


 俺達は早速目当ての物を調達すべく、モヤシを講義室の床に押し倒した。


「だ、誰かっ! 助けてー!」


「うるさい、黙れ!」


「お前はただその手を離せばいいんだ!」


 無駄な抵抗をするモヤシを三人がかりで押さえつけ、ゴリラがモヤシの手のバックを引き剥がした。


 勝ったッ! 期末試験編、完っ!!!



「何をやってるんだ、君達は!」


 と、唐突にイケメンボイスが響き渡り、肩を掴まれた。


 振り向けば、入学当初、俺好みの黒髪かわいい子ちゃんを誑かしていたクソイケメンの姿がそこにあった。なんだ、こいつ藪から棒に。


「なにって」


 俺達は顔を見合わせる。


「ノートを奪おうとしてるだけだぞ」


 なんの用で現れたか知らんが、とりあえず聞かれたことに答える。


「……え? ほ、本気で言ってるのかい?」


 すると、なぜか知らんがイケメンはドン引きで一歩後ろに退いた。


 なんだ、こいつ。何をそんな引いてんだ?


「やだ、野蛮」

「最低。信じらんない」


 イケメンの態度に首傾げていると、周囲で女子がヒソヒソと何事かを囁いているのに気付く。


 ハッと慌てて顔を上げてみれば、講義室中の目が自分達に降り注いでいた。


「信じらんない」

「犯罪者じゃん」

「原始人よ、原始人」


「「「「グッ、グウゥゥ」」」」


 心無い女子の誹謗中傷が俺達のナイーブなメンタルに突き刺さる。


「き、君達、友達じゃなかった?」


「友達じゃないよ! こいつら自分達がノート取ってないからって寄ってたかって僕のノートを取ろうとするんだ!」


「あっ、モヤシてめえ」


 俺達が怯んだ隙に俺達の拘束から抜け出したモヤシが、イケメンの背に逃げる。


「え、マジクソじゃん」

「自業自得なのに、人のノート盗ろうとしてんの?」


 なんか怖い系のお姉さんっぽい声が聞こえる。


「えっと」


 イケメンはドン引きながらもモヤシを背に庇い、


「事情は知らないけど、人の物を力づくで取ろうっていうのは良くないんじゃないかな?」


 そんな綺麗事を宣った。


「「「「ウ、ウワーン」」」」



 いたいけな俺達は手に入れたモヤシバックを吐き返し、完全アウェーな講義室から逃げ出すしかなかった。



   ※※※



「グウゥ」


「クソ。クソゥ」


 八代と俺は頬を涙で濡らしながら、寮への帰途を歩いていた。


「俺達はただ大学生としての務めを果たすため、単位を取るために最善の努力をしてただけなのに」


「あいつのノートを盗って何が悪いんだよう」


 ヒックヒックと俺達は悔しさをしゃくり上げる。


 学類総出の集団いじめに、俺達のガラスハートは崩壊寸前、ガラスの少年時代の破片が胸を突き破らんばかりだ。


 俺の心はひび割れたビー玉の如し。このまま寮に帰って枕を涙で濡らしたいところだが、既に来週へと迫った期末試験という名の災害が俺達にそれを許さない。


 クソッ。試験もスポーツマンシップに則り、負傷欠場を認めるべきだ。俺の心はもうイップス同然なんだぞ。


 メンタルブレイクを乗り越えた俺の心に、理不尽な世の中への正当な怒りが沸き起こる。しかしこんな風に手をこまねいていても事態は解決しない。大人の階段登るシンデレラを卒業し、幸せを自らの手で掴まねばならない。


「ガッデム」


「クソ、どうすれば」


 同じ境地に至ったのだろうダサメンも悪態を吐いて頭を抱える。


 俺達は大学入学以来初めてこんなにも勤勉欲に溢れているというのに、そもそもそのために必要なノート等の情報が無ければ勉強をすることは不可能だ。


 おかしい。こんな世の中は間違っている。やはりやる気を出した俺達に必要なものを与えないモヤシは絶対悪だ。


 そんなわかりきった正論はさておき、何はともあれ情報。俺達に必要なのはそれだ。

 となれば、俺達はそれをどうにか手に入れなければ。


 と考えて待てよと、俺は重要なことを思い出す。


「約束だ」


「約束?」


 思わず口から零れ出た言葉に、八代が首を傾げてくる。


「八代。俺達には約束があるじゃないか」


「何のことだ?」


「同じ戦場を乗り越えた同志との約束さ」


「……おおっ!」


 ようやく俺の言わんとしたことを理解した八代は、可能性の獣に声を荒げた。



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