78 サボタージュⅡ
ピピピピッ! ピピピピッ!
「あと五分……」
五月蠅い電子音を黙らすため、俺は枕元を手でまさぐる。見つけたアイフォンの画面を見て、スライド。アラームを解除する。
「よし」
そのままアイフォンを元に戻して、枕に顔を埋め、
「じゃない!」
慌ててガバリッと顔を上げる。
「いかんいかん」
目を覚まそうとフルフル頭を左右に振る。
昨日は結局、そのまま午後講義をブッチしてビリヤード。結局丸一日講義をさぼってしまった。
今日こそは学生の本分を果たさねば。
そう心に誓い、俺は睡眠を求める体に鞭打って身支度を整え始めるのだった。
※※※
「おっ」
「ッチ」
これってデジャヴュ? 昨日同様、自転車置き場でダサメンと鉢合わせる。
しかしシチュエーションこそ同じだが、こちらは心晴れやか、愉快で仕方ないのに対し、ダサメンは舌打ちする始末だ。全く無礼な奴だ。
「これはこれは、昨夜大負けした八代さん。ご機嫌はいかがですかな?」
仕方なく品行方正な俺が、大人の挨拶というものを教えてやることにする。
「たった今、最悪になったところだ。朝っぱらから不愉快な面を見たからな」
「これは異なことを仰る。昨日も楽しく遊興を共にした仲だというのに」
とんだ言いがかりに俺は驚きを総身で表すが、八代は不愉快そうに再度舌打ちする始末。全く躾のなっていないストレイドックだ。俺は呆れに首を振る。
「覚えてろ。次は取り返す」
「もちろんですとも。私共はお金儲けがしたいわけじゃなく、楽しく男同士の親交を深めたいだけですから。いつでもリベンジに応じますとも」
うんうんと請け負いながら、俺は心の中でほくそ笑む。挑発で簡単にミスる八代と、ラシャ破り一万円で脅したパワー型ゴリラがいる限り俺達の財布事情は改善する一方であろう。
「何はともあれ、今日こそ講義だ。遅刻するのもバカらしい。さっさと行くぞ」
「そうですな」
思わず口調は挑発スタイルのままだが、単位状況は同じである八代の最もな言葉に俺は頷いて自転車を出発させた。
まではいいが、出発して一分と経たないところで、
「おー、メガネにブラックじゃないか」
「「ふぃっ!?」」
聞き覚えしかない声に、ダサメンブラックと俺は変な声を出して急ブレーキ。振り向くまでもなく、迫りくる巨体のプレッシャーを背後からヒシヒシと感じる。
「おっ、これはいいところでいい奴等にあったな」
そして筋肉先輩と共用棟で待ち合わせていたのか。正面から肉だるま先輩がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。
「こうして会ったのも何かの縁だ。今日は飲むとしようじゃないか」
熱くる太い腕に、がっしりと首を抱えられる。
いかん。この人達に付き合っていたら、今日どころか明日の講義の行方さえも不明だ。
「飲みたいのは山々ですが、俺達これから講義でして」
「そうなんですよ。いやーまったく残念です」
咄嗟に拒否する俺に八代も追随。二人で残念だなーと顔を手で覆って天を仰ぐ。
「そうか……」
すると筋肉先輩らしくもない寂し気な声が耳に響く。
「夏になれば俺達も就活が本格化する。最後にお前達と酒を酌み交わしたかったんだがな」
目の前に立った肉だるま先輩も悲し気に顔を伏せた。
「「せ、先輩方……」」
哀愁を帯びた二人の姿に、俺達は声を詰まらせる。
ここで、別れの盃で断るような奴が、胸を張ってこの先この人達の後輩を名乗れるだろうか? いや、名乗れない。
「行きましょう! どこまででも!!」
「飲みましょう! この肝臓、潰れ果てるまで!!」
決意に胸を張り、俺達は叫ぶ。
「おお! 来てくれるか!!」
「それでこそ俺達の後輩だ!!!」
先輩達は目端の熱いものを振り払って満面の笑みを見せる。
「行くぞ! 今日は俺達の奢りだ!!」
「先輩方最高っ! ヒャッホーウ!!」
でかい拳を振り上げた逞しき漢の背中。
それを追いかけて、俺達は昼前の路地を小走りに駆けた。未だ見果てぬ朝方からの酒宴に想
いを馳せて。
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