77 サボタージュⅠ
通称、二食。
我々文系の主戦場、第二学類付属の学食へと俺達は辿り着く。もっと豪勢な食堂やレストランで贅沢なランチを決めたいのは山々であるが、学生の身分で金もなければ、ダサメンとランチデートをする気もない。
仕方なく分相応なこの場に訪れ、一番安いカレー大盛を注文したわけだが、
「お?」
「む」
見慣れたブサイクすぎる三馬鹿と鉢合わせする。
「お前ら、二限にいたか?」
類人猿代表、筋肉ゴリラが顔を合わせるなり親の小言並みにうるさい疑問を呈してくる。
「なに、大仕事を終えたばかりだからな。当然の権利として少しばかりの休息に疲れた心身を慰撫した次第だ」
「そういうことだ」
理解力が足りない類人猿に懇切丁寧に説明する俺に、八代もニヒルに笑いながら同調する。
「大仕事ってやどかり祭は二週間も前のことだろ」
「超回復ですら効果的な休息時間は二、三日」
類人猿とモヤシが人語以外で何か言ってるが意味がわからんので目を背け着席する。
「まあ、しかしちょうど良かった」
するとブサイク金髪が気色の悪い笑顔を浮かべたので、
「「いただきます」」
俺と八代はスルーして、さっさと逃走するため味気のない格安カレー二百九十円を掻き込み始める。こいつのちょうどいいが本当に良いことだった試しがない。
「二人ともビリヤードに行くぞ」
しかしブサイク面に相応しく、メンタルもブサイク且つ強靭なブサメンは俺達の総シカトにも何ら構わず話を続ける。
「急に何の話だ」
「まったくだ。いくら洒落た遊びをしようとそのブサイクは治らないんだぞ」
呆れたながら眉を顰める八代に続け、俺はスプーンでブサメンに指摘してやる。
「誰がブサイクだ!」
「それはもっともだけけど、近くにいい場所がある」
「ネカフェにビリヤードが置いてあってな。長時間安く遊べるんだ。うちの大学生行きつけの遊戯施設だそうだ」
ブサメンの性懲りもない雄叫びをスルーしてモヤシとゴリラが補足してくる。
「ほーん」
さして興味もないが、三馬鹿にしては無駄でない情報に俺は相槌を返す。
「やってみると案外楽しくてな、これが」
ビリヤードなど似合いもしないゴリラだが、よっぽどご執心なのか関心の薄い俺達の気を引こうとしてくる。
「まあ、午後の講義があるからな」
「うむ。行ってみたい気もするが、午前の講義も出てないことだしな」
こちとら既に講義をサボっている身。ようやく大学に来たのに、ここから遊技場に直行は流石に学生としてマズいだろう。
「知らんのか。午後の心理学概論と社会心理学は一学期十回の講義中六回出席するだけで単位を貰える神講義だぞ」
「なに、本当か?」
素晴らしき情報に思わずブサメンを見る。こいつはブサメンのくせにやどかり祭実行委員会のことといいやたら情報通なのだ。
「もちろんだ。こんなちょっと調べればわかる情報で嘘はつかん」
うむ、ブサイクだが嘘を言っている瞳ではない。
「それは素晴らしい」
うむうむと俺は満足して頷くが、ただでさえやどかり祭前後の欠席で単位は危ないのだ。情報こそ素晴らしいが、それがイコール、ビリヤードに行く理由とはならない。
「ということで行こうじゃないか」
「賭けは人数が多い方が面白い」
ゴリラが再び誘いの手を開き、モヤシが不吉なことを言う。
「賭け?」
ピクリと八代が反応し、問い返す。
「ワンゲーム一人百円出して、そのゲームを勝ったプレイヤーの総取り」
「なるほど」
どこか神妙に頷く八代を見て、ブサイク三人衆はニヤリと顔面を歪めた。いかん、八代の決闘者気質が読まれている。
「まあ六回出ればいいということであれば、ここで一回位サボっても構わんだろう」
案の定、ちょろインよりちょろい八代は秒で攻略された。
「流石、八代話がわかる」
「男同士の付き合いは大切だからな」
「集団行動は狩りの基本」
八代の気が変わらぬよう、三人組はちょろインが喜びそうな言葉の数々で持て囃す。
「男子校出身八代颯太。男の付き合いと聞いては断れんな」
そしてちょろインはまんまと悪漢共の掌の上だ。ちょろいことこの上ない。
「ふん、イケイケ。優等生たるこの細谷将司には関係ない」
某オルコッ〇並みにあっさり攻略された八代をスプーンでしっしと追い払って、カレーを掻っ込み終わった俺はバカの巣窟を後にしようとする。
「なんだ、細谷は行かないのか」
「学生の本分は勉学だ」
絡みついてくるゴリラの呪縛を一刀両断し、俺は背を向ける。
「放っておけ。メガネぼっちゃんは賭けに負けるのが怖いそうだ」
「おおんっ!?」
聞き捨てならない嘲笑に振り返る。
「確かに。所詮机にかじりついて目を悪くしたダサメガネだしな」
「真面目系黒メガネに賭博は酷だったか」
「碌に賭け事もできない尻の青いお坊ちゃんに強要は可愛そう」
すると三馬鹿まで憐みの顔で首を横に振る始末。
「ふ、ふざけるなよ? 〇学生の頃からポケモンカードにトランプ、果ては花札や麻雀でお年玉を賭けてたこの生来のギャンブラー細谷将司に向かって」
俺は額の血管をピクつかせながら言い返すが、
「「「「でも、来ないんでしょう?」」」」
四人組のブサイクすぎる煽り顔に、その血管がブチ切れた。
「ああん!? そこまで言うなら行ってやらぁ! 後で吠え面かくんじゃねえぞ!」
「いいぞ、細谷!」
「それでこそ漢だ!」
「漢たる者、黙って勝負」
「よし! それじゃあ、さっさとビリヤードへGOだ!」
逸る血気に肩を怒らせ、俺達は二食を後にするのだった。
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