75 祭りの後の、後の祭り
「「「お疲れ様でーす」」」
「お疲れ様ですー」
「「おう、お疲れー」」
「「お疲れ様ー」」
第二エリアの学内駐車場。百人を超えるやどかり祭実行委員会の中でも、頭一つ抜けて高い巨漢先輩タッグは簡単に見つけることができた。
今日はやどかり祭後、初めての花金。
そして、打ち上げの日。やどかり祭実行委員会、一同大集合。もしかして、やどかり祭実行委員が全員集まるのってお初なのではないだろうか? いや、祭り終わってからのお初って(笑)。
――でも、こんなに沢山の人で作ってたんだな。
「どう、社会復帰できた?」
感慨にふけっていれば、お姉ちゃん先輩がにこやかに聞いてくる。いや、社会復帰て。やどかり祭実行委員会は刑務所かなんかですか? 強制拘束・無賃労働・社会奉仕。……あれ? あながち否定できない?
「なんとか。流石に翌日は講義行く気になれなかったですけど」
苦笑気味に七瀬が答える。ですよねー、あれが世に言う燃え尽き症候群。やり切って、完璧に出し切っちゃって、健全な大学生活復帰、大変でした。あと、流石は武士、インターバル一日か。ダサメン&アイは三日だが、それは言うまい。
「よーし、バス来たから順番に乗り込めー」
あ、細メガネ先輩チッス。お久しぶりっす。
一台目には乗り込めなかったので、二台目に総計はイン。この人数規模の宴会できる会場は徒歩圏内に無かったらしく、まさかのバス移動だ。
「よーし」
「久しぶりに行くとしようか」
飢えた猛獣。アルコールモンスターがビニール袋から取り出したるは、
「「ゲッ!」」
あの日以来、見ることの叶わなかった琥珀色のお薬だよ?
その封印のリボンを解いて、巨漢先輩タッグは邪悪に口の端を吊り上げる。
「「さあ、乾杯の時間だ」」
あれ? 世間一般で乾杯ってビールじゃないっす?
「「ぃ喜んで!」」
なんてのは甘えたボーヤの考え。久しぶりのご褒美に俺達の肝臓も喜びに打ち震えるってなもんさ。
「なら、私ももらおうかしら」
「え、穂乃果?」
「ほらー、マーサちゃんも飲もうよー」
マザー&エンジェル!?
期待に目を向ければ、マーサ先輩は諦めたように笑って、
「ま、今日位はね」
紙コップを小粋に掲げた。
フゥー! 楽しくなってきやがった!
「わ、私も飲みたいです!」
「ゆず!?」
俺達の後ろの座席で、ゆずちゃんまで大胆宣言。
「ゆず、あれは……大丈夫?」
「大丈夫ですー!」
フンスフンスと意気込むゆずちゃんだが、確かに七瀬の心配も禿同。
「でも、あれって四十パーセントくら」
「こんな時にそんなこと気にするのを野暮って言うです?」
珍しく七瀬の言葉を遮ったゆずちゃんのまさかの発言に一同キョトン。
「ハッハッハ! その通りだ!」
「よく言った、ゆず! それでこそ俺達の後輩だ!」
心底嬉しそうに大音声で喝采し、肉だるま先輩は琥珀色のお薬をドバダバダー。
いいぞ! やれやれ!
……先輩、やっぱやりすぎないでくださいっす。
「確かにそうね。肉だるま先輩、私もお願いします!」
武士まで節制を破り、紙コップを捧げ持つ。オーノー、みんなが壊れてく!
……まったく最高だっぜ☆
「さあ、全員、杯は持ったな?」
「「「「「「はいっ!」」」」」」」
「おうっ!」
「それじゃあ、やどかり祭実行委員会に! 総合計画局に!! 俺達の祭りの成功に!!!」
「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」
可愛い声も混ざった発声で、
「「フゥー!」」
「「ックァー!!」」
全然可愛くない酒を飲み干す。久しぶりだとマジできついな、これ!?
「「「ごちそうさま」」」
それを普通に飲み干すうちの女子s……可愛い? イヤ、マジで可愛いっす。エンジェル&マザーっす。今度は嘘じゃないっす。武士は武士。
「……ッ……ゥ」
「ゆずちゃん、無理しないでっ!?」
流石に癒し系マスコット小動物にこれは酷。
「……いえ、私も皆さんと」
ゆずちゃんっ! いじらしさにキュンと胸打たれていれば、マーサ先輩がその手を取る。
「気持ちは凄い嬉しい。でも、ここで潰れちゃったら、この後、みんなで楽しめないよ?」
だから、とエンジェルスマイル。
「私にその気持ちと一緒にちょうだい?」
ヤダ、格好いい。
トゥクントゥクン震える鼓動に赤面する俺とゆずちゃんの前、男前エンジェルがゆずちゃんの分のアルコールを飲み干す。
「まったくお前ら最高だ!」
「まだまだ行くぞ!」
落ち着いたのを見計らって、先輩巨漢タッグは継戦表明。
「望むところです!」
「明日は土曜ですからね! トコトン行きますよ!」
「おお、流石だな!」
「よーし、飲み干すとしようか!」
ガッハッハとご満悦な巨漢先輩タッグ。
ええ、今日ばっかりは明日がどうなろうとついていく所存ですよ。先輩達と、最初で最後のやどかり祭の打ち上げなんですから。
初っ端からウィスキー乾杯。まったく頭おかしいですけど、あんたら最高っす!
最初っからフルスロットル! テンションアゲアゲな俺の目に、仰け反る本企組のAと猿が映る。
親指をこっちへクイクイ、カーモンベイビーアメリカ。
お前らも来い。こっちの世界へな。
首を横へフルフル、ノー。
フー、まだ自分の世界を開けないか。とりあえず頷いておく。
ホッとした顔の二人。まあ、宴はまだ始まったばかり。今夜はやどかり祭実行委員会随一の無礼講。店についたら巻き込むとしよう。
「その勢いで大丈夫?」
そんなことをしていると、七瀬が耳打ちしてくる。
「お? 珍しい、気遣ってくれてんのか?」
「自分で帰れないと周りが迷惑するから聞いてるだけよ」
うわー、やっぱりお前ってそういう憎まれ口のが似合うよね。
「帰りは任せたぜ、七瀬!」
「最高に格好いい男ね、あんたって。普通逆じゃない?」
「ハッハッハ。普通が何であろうと、俺は今日今この時、全力で飲むと決めているんだ」
「……バカ?」
うーん、シンプルな罵倒が一番効きますぞ。
「でもまあ」
七瀬は先輩方を見やり、
「逆にあの飲み方についていく方を任されても困るし、仕方ないから請け負ってあげるわよ」
「ありがとよ! 最高だ! あと、お前も一緒に飲んでいいんだぞ?」
「はいはい。先輩達を送れる程度にね」
あれ? 俺どこ行ったの?
と、楽しく前哨戦をしている内に、バスは宴会場に到着し、
「よーし、打ち上げ行くぞ、お前ら!」
「「「「「「「オー!」」」」」」」
最初で最後の、最高の夜が始まる。
――この日撮った集合写真を、俺はきっと生涯なくさない。
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