67 企画受付開始
PM1:00 やどかり祭案内所テント 企画受付開始
「物品の借用ってここですか?」
企画第一号が案内所の総務局員に尋ねる。開始早々とは優等生企画だ。
「なんの物品の借用になりますか?」
総務局員が問い返す。
「机椅子とガス・調理器具です」
「ガス・調理器具は追越駐車場でレンタルを行っています。机椅子は隣の机椅子ブースで借用手続きを行ってください」
「はい。わかりました」
案内を受けた企画がこちらに来る。おお、開始早々初のお客さんか?
「机椅子の借用をお願いします」
「では、企画名をお伺いできますか?」
「広島県人会です」
「承知しました。少々お待ちください」
俺が受け答えしている間にも、ダサメンが広島県人会の借用シートを探している。五十音順でかなり後ろだな。
「これが机椅子の借用シートになります。長机6、教室用机2、椅子5で大丈夫ですね?」
広島県人会のシートを見つけたダサメンが、記載内容を見せながら確認する。
「大丈夫です」
「それでは、こちら記載の共用棟倉庫から机椅子の運び出しを行ってください。企画終了時は借り出した時の通りに返却してください」
「わかりました」
広島県人会はシートをダサメンから受け取り立ち去っていく。
「おお……」
思わず俺は唸ってダサメンに拍手を送ってしまう。
「なんだ、その拍手は」
「いやー、お前成長したな」
「……ふん、上から目線は気に食わんが、言葉通りだから仕方あるまい」
ダサメンは俺の言葉を素直に受け入れ、そっぽを向く。
いや、ほんとあの人見知りがよくもまあ。お姉ちゃん先輩も凄い凄いとご満悦だ。
「お前ら、気持ちはわかるが、ドンドン次が来るぞ」
「うぇ!?」
肉だるま先輩の言葉に横を見れば、総務局員の前にはすでに長蛇の列。ステージ企画とか以外は大概机椅子借りるから当然、
「お隣の机椅子ブースへどうぞ」
ウェーイ!
PM1:30 やどかり祭案内所テント コンティニュー
「……ようやく途切れたか?」
「そのようだな……」
受付が落ち着き、ダサメンと俺はようやく緊張から解放される。
「お疲れ様。二人ともよくできてたよー」
「うむ、初めてにしては上出来だ」
お姉ちゃん先輩がパチパチ手を叩き、肉だるま先輩も褒めてくれる。
「お二人も手伝っていただいて、ありがとうございました」
「ありがとうございました」
俺とダサメンは頭を下げる。
受付が俺達一組だけだと詰まってしまったため、途中からこの二人が半分請け負ってくれたのだ。お陰で大分助かった。
「いえいえー、どういたしまして」
「気にするな。俺達は序盤は比較的手が空いているからな」
「そうなんですか?」
肉だるま先輩の言葉に俺は首を傾げる。
「ああ。俺達はトラブル対応メインだからな。企画が多く出揃ってからが本番だ」
「会場配置も電気も企画が増えてからじゃないと問題がわからないからね」
「というと?」
ダサメンが追及する。うん、俺もよくわからん。
「電気は電気を使う企画が増えてから、他の企画が自分のところの電気使ってるだの、それにすら気付かず電気を使ってブレーカーを落とすだのだな」
「会場配置は場所がわからないとかは最初からあるけど、企画が増えてから他の企画が自分の使うはずの場所にいるとかだねー」
「なるほど」
「あーなるほど」
言われてみれば納得だ。
「机椅子もそうだぞ」
肉だるま先輩の恐ろしいお言葉。
「「え?」」
「今のが忙しさの第一波だな。受付開始と同時の企画受付の集中時間帯。ただ、受付当初に来る企画なんて、比較的真面目なところが多いから問題は少ない。受付自体は忙しかったが問題もなくスムーズだったろ?」
「言われてみれば確かに」
「すいません。海洋研究会です」
「あ、はい」
話の途中で企画が来て一時中断。処理を終えて、
「失礼しました。続きを教えてください」
「ああ。さっき言った通り序盤の企画は問題が少ない上に、どこも机椅子が余ってる状態だから問題も起きない」
ふむふむ。
「で、この後は今みたいにちらほら企画が来るわけだが、受付時間の半分以上が過ぎた15時過ぎ位から問題が起きてくるわけだな」
「「……というと」」
ダサメンと俺は息を飲む。
「まず指定された場所に机椅子がないとかだな」
「え、なんでですか!?」
「きちんと過不足が出ないように割り振りましたよ!?」
意味がわからず俺とダサメンは叫ぶ。
「こっちが過不足なく割り振っても、間違えて別の場所から持ってく企画もいるからな」
「あー……なるほど」
「いや、でもそうならないようにこうして案内と借用シートを」
「ここで受け付けた人間と実際に運搬する奴は別だったりするからな。まず伝達の行き違いがある。まあ、そんなのマシなほうで、ここで適当に聞き流す奴とか、そもそもここに来ないで勝手に持ってく奴もいる。一番最低は申請もしてないのに勝手に持ってく奴とかな」
「無法地帯過ぎませんかね!?」
「ここはスラムか!?」
あまりにあんまりな理由に驚き呆れる。
「社会福祉研究会です」
「あ、私やっておくね」
「あ、すいません」
「いいから話聞いておいた方がいいよー」
「すいません、ありがとうございます」
また中断しそうになったが、お姉ちゃん先輩が対応を請け負ってくれたので、肉だるま先輩は続ける。
「いいわけないし、断固許さん。まあ、申請なしで持ってくのは二、三年に一度あるかレベルのレアケースだがな。ただいずれにしろ、問題が起きてしまえば、対処せざるをえん」
まあそれは確かに。
「どう対処すれば?」
ダサメンも現実的な対応を確認する。
「できる限り原因を追究し、根本から解決するのがベストだが、現実問題そんな時間的余裕はないことがほとんどだ。だからとりあえずは予備の机椅子を放出する」
「あー、それで」
講義室二、三個はどの企画にも机椅子を割り当てず、温存するように言われていた理由を察する。
「そういうことだ。問題が発生した講義室に下手に手を付けると余計に訳がわからなくなるからな。問題が発生した講義室は現状維持、その講義室から机椅子を借りる予定だった企画は予備の講義室からの机椅子を回す」
なんか警察の事件現場の現場保全みたいだな。
「で、あとは祭りの間に予定にない机椅子の借り出しをしている企画がいないか、予定より机椅子が残っている講義室がないか等確認して原因究明、対応」
うん、探偵かな?
「最悪どうしようもなければ、祭りが終わって机椅子の返却後に辻褄合わせだな」
遠い目をする俺達に肉だるま先輩は、究極の解決策を教えてくれる。
わー、これで安心だなー(棒)。
「まあ、そう心配するな。やってみれば楽しいパズルだぞ」
だったら素直にパズルをしますが!?
「それにいざとなったら、俺達に任せろ」
最後に、そんな頼もしいセリフを言って、肉だるま先輩は親指を立てた。その後ろで、私もいるよーとばかりにお姉ちゃん先輩も手を振ってくれている。
「「はい、ありがとうございます」」
頼りがいしかない先輩達の姿に、俺とダサメンは思わず笑っていた。
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