65 電力配置
AM10:30 平砂宿舎10号棟前
ゴミ箱設置を片付け、先輩達と合流。
「なんだお前ら。もう終わったのか?」
筋肉先輩は少し驚いたように確認してくる。
「ええ。幸いメガネも合流してくれたんで、手分けしてできましたから」
「なんだ。お前は講義担当だったんじゃないのか」
「任せてきました」
笑う肉だるま先輩に俺も笑って答える。
「困った学生さんだねー」
「そういうお姉ちゃん先輩も困った学生さんじゃないですか」
嬉しそうに笑うお姉ちゃん先輩。講義をサボるタイプだとは思わなかったが、そんなところもマジマイホーリーマザー。
「それでこそやどかり祭実行委員。この作業はとにかく時間かかるから一人でも多いほうが助かるわ」
そして満足げなマーサ先輩もいて、総合計画局員勢揃い。こんな時に俺だけ講義なんて、それこそ嘘だろ。
「そうだな。ということで、余裕もないから早速説明するぞ」
話もそこそこ、筋肉先輩は作業を終わらせ立ち上がる。
「これから手伝ってもらうのは、俺達電気担当の電気配線だ」
「この電気配線図に従って、コンセントから電工ドラムで企画実施場所まで電気を引き込む」
言いながら、肉だるま先輩が電気配線図を一年四人に配布する。
「実際に見たほうが早いな。一つやってみよう」
言いながら筋肉先輩は歩き出す。
「まず確認するのは、配線図中の赤丸。ここが電力供給源だな。そして、その電力供給源からそれぞれ何メートルの電工ドラムが幾つ引かれているかを確認する。この供給源からは50m、30m、20mの電工ドラムがそれぞれ一つずつだな」
「確認したら必要な電工ドラムを持って、電力供給源へ」
……思ったよりもややこしいな。電工ドラムを持って歩き出した先輩方の後ろについて歩きながら、電気配線図と睨めっこする。
「ここの電気供給源は女子寮だな」
ミワクのハナゾノッ!?
「男は立ち入り禁止だからな。女子寮は女子に配線に行ってもらう。マーサ頼む」
「はーい」
……畜生。ヂクショウッ!
「男子寮の場合は逆。ちなみに電力供給源は絶対に間違えるな。系統ごとに使える電力上限が決まっているから、下手すりゃブレーカーが飛ぶぞ」
え、マジで? それ、結構責任重大じゃね?
ビックリな情報に慄く間にマーサ先輩が帰還。
「屋外の青丸が電工ドラム設置場所だ。とりあえずそこまで電工ドラムを引っ張る。で、青丸の場所に電工ドラムを設置するわけだが、この時、必ず配線を全部出し切ること」
え、なんで? 片付ける時、巻く手間増えるじゃん。
「配線は電気が通ってるわけだからな。巻いたままにすると熱が籠って配線が溶ける可能性がある」
え、マジで!? そんなことあるの?
「屋外で使ってるわけだからな。そうすれば言わずもがな感電の危険性も出てくる。滅多に起きない事態ではあるが、万が一を防ぐために必ず守ること」
肉だるま先輩もいつになく真剣だ。
「そういうことだ。とりあえず50m電工ドラムがここだな。次に30m電工ドラムを接続、同じことの繰り返し」
言いながら、カラカラ電工ドラムを引いて次の接続先へ。
「30m電工ドラムがここ。最後に20m電工ドラムだな」
カラカラ、カラカラ。
「とりあえずこれで配線はできたな。それぞれの企画がこの電工ドラムから電気を使用するわけだ。余談だが、当日の見回りでは企画申請物品以外のもの、スマホの充電等してないか確認して注意すること」
物品の台車の方に戻りながら筋肉先輩。
え? そんな細かいことを?
「電力上限はかなりシビアな系統もあるからな。下手なものを接続されると電気が飛んで、同じ系統を使ってる企画は全部オジャンだ」
肉だるま先輩補足。
……ワーオ。先輩巨漢タッグ、見た目にそぐわず結構細かい調整してたんですね。
「で、配線が終わったところで、最後に目張りだな」
筋肉先輩が台車からダンボールとガムテープを取り出す。
「通路の後ろはいいが、こういう通路を跨いでいるところだな。その部分の配線を全部ダンボールを張り付けて固定する」
あー言われてみれば、祭りの会場で見たことあるかも。
「転倒予防のために重要な作業だ。誰かが引っ掛かって電源が抜ければその先の企画オジャンのおまけ付きだ」
肉だるま先輩。
わー、嫌なおまけだなー。
「と、これで以上だな。これを電力配線図の全てについて行ってもらう」
……これで一系統分ってことか。結構手間だな。
配線図を見れば、当然のことながら配線区域は祭りの実施区域全域に広がり、50系統はありそうだ。……クク、机椅子確認耐久リレーを思い出させるクソ作業じゃないか。
「台車が二台しかないからな。マーサとブラック、ゆずは俺とこの区域の作業を続けよう。肉だるま、穂乃果、七瀬、メガネと追越宿舎分の台車を持ってってそっちの作業を進めてくれ」
「「「「「「「了解」」」」」」」
オラ、ワクワクすっぞ!
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