62 いいから神輿だ!
4アワー アフター アゲイン。アンダー体芸食堂 やどかり祭実行委員会神輿作りスペース。
俺達の休日は、まだまだこれからだ!
休みも無ェ。時間も無ェ。遊ぶ時間もまるで無ェ!
金も無ェ。賃金も出ねェ。毎日仕事がぐーるぐる!
朝起きて。飯食べて。三時間ちょっとのお仕事♪
昼食べて。移動して。また三時間のお仕事♪
おらこんな職場嫌だ。おらこんな仕事嫌だ。
脳内現実逃避しながら、ペンキを塗るだけの簡単なお仕事レースをひた走る。
なぜ人は働くのだろう?
ロボットが受付案内をし、被災現場を駆け巡り、将棋でプロ棋士を打ち負かすこの現代。果たして俺達人類が働く必要などあるのだろうか?
哲学的な疑問に思い馳せながらも、えーんやこら。作業を続ける俺は異常を察知した。
「おい、お前。仕事をさぼってどこへ行く?」
裏切者は決して許さない。それが俺達、やどかり祭実行ギャング団。
「悪いな……18時に協賛企業さんが委員会室に訪問してくる予定なんだ」
憔悴しきった様子で、渉外局員らしき男は申し訳なさそうに微笑んだ。
「そ、そうか。すまなかったな。俺達ファミリーに裏切者がいるはずもなかったな」
「ああ、もちろんさ。終わったらまた戻ってくるよ」
リスポーンを誓い、渉外局員は頼りない足取りで去っていく。
その隙を突くかのように、もう一人立ち上がる男、猿。
「おい、猿。神輿のメイン担当たる本企局員のお前がどこに行く?」
「申し訳ねーが、おらも18時からステージ運営局・PAさんとステージ運営の打ち合わせがあるだ」
そう答える猿の目は、怪しい薬でも決めてるかのようにトリップ状態。
「ああ……もうそんな時間? ゴメン、忘れてた。行こうか、猿君」
猿の言葉に思い出したとばかりに、ステージ運営局員らしき女子も立ち上がる。その目はもうなんというか……飛ぶぞ?
「そ、そうか。二人とも気を付けていって来いよ」
「ああ、戻ってくるまで頼むだ」
「よろしくね」
アハハとやけくそのように笑いながら天を仰ぐその姿は、子どもの頃なりたくなかった職業Nо1の仕事にくたびれたサラリーマンそのもの。……どうしてこうなった?
「どうして、俺達はこんなことをしてるんだ?」
「口を動かしてる暇があるなら手を動かせ」
思わず漏れた本音に、ダサメンが情け容赦ない一言をお見舞いしてくる。
「……はい」
しかし、それは正論。ゆえにおれはただ悄然と頷き、作業を続けるしかなかった。
? アワー アフター。アンダー体芸食堂 コンティニュー。
「う……」
寒さと体の痛みに目が覚める。
冬が終わり、春が訪れたとはいえ、夏はまだ遥か遠く。おまけに冷たいアスファルトの上にダンボールを轢いただけでは、冷気を防げなくとも仕方なし。
そんな簡易ベッドとも言えぬ場で寝ていたせいで、体の節々が痛い。
頭が覚醒すれば、状況が飲み込めてくる。
路上に置かれたパソコンから鳴り響く愉快な音楽。確かなんか有名なアニメの電波ソングだ。
それを口ずさみながら作業を続けるゾンビ共。それはまるで休むことを知らない兵隊のようだ。
ハハ、神輿作りは楽しいなあ。
俺もゾンビが取り付いていない一角に向かって歩き出す。途中で落ちている刷毛を装備しながら。
俺は無神論者。神や霊魂、天国や地獄なんてものは信じていなかった。しかし、これからは宗旨変えをしようと思う。
だって、ほら。確かに地獄はあるのだから。
ここは地獄―! 地獄! 楽しいじご、じご、地獄だよー!
※※※
そして訪れたやどかり祭本祭二日前、五月三十日……改め前日三十一日早朝。
虚ろな瞳。脱力し弛緩した体。精気無き亡者の群れ。
その中央。憔悴した夏海ちゃんが、最後のパーツを捧げ持つ。
「この子で最後」
土台の釘に差し込み、瞬間接着剤がその甲殻を固定。
「みんな、ありがとう」
振り返った夏海ちゃんが、疲弊の中、それでも満面の笑みを浮かべた。
「「「「「「「「「「ッシャオラーーーーー!!!」」」」」」」」」」
「「「「「「「できたーーーーーーーー!!!」」」」」」」
隣のダサメン、反対の七瀬、周りの名も知らぬ君達。みんな、そこに直れ。
ハイタッチ! ハイタッチ!! ハイタッチ!!!
アンド! 抱きしめ! ぶちかまし!! 抱擁の正面衝突!!!
アドレナリン、脳汁ドッパドパ!
近所迷惑、早朝なんてなんやその。テンションのままに俺達は雄叫びを上げる。
そして、糸が切れたように死にゆく戦士達。
終わった。ついに、完成したのだ。
「ハハハ」
達成感と疲労感に満たされながら、俺も先に逝った仲間達の後を追い、ダンボールの上に倒れ込む。
もうゴールしても、いいよね?
「あかん、メガネ。ゴールしたらあかん。まだ始まったばかりやないか!」
Airは名作。異論は認めない(キリッ!
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