59 倍プッシュだ
キーンコーンカーンコーン。
「「……」」
言葉もなく、俺達は互いの目を合わせた。その瞳に宿る意志の力は弱弱しい。
おかしいな。高校の頃なんて、一日の授業の終わりを告げるチャイムが待ち遠しくて仕方なかったのに、今は講義が終わってほしくないと思ってる俺がいるよ。ようやく学生らしい勤勉の精神に目覚めたってことかな。ハハハッ。
「ここまでくると、流石に同情物だな」
「生命力が感じられない」
ハハッ、ソフモヒゴリラとモヤシ。同情してくれるのか? この哀れな社畜達を。
「ふっ、委員会活動をネタに女子と戯れてるこいつらにはいい様じゃないか?」
殺すぞ、ブサメン?
もはや余裕なく、素直な殺意を発する俺達にブサメン金髪はヒッと身を引いた。
「ま、まあ、落ち着け。そんなお前達にいい話を持ってきてやったんだ」
「……ホントか?」
「もちろん本当だとも」
「じゃあ、さっさと言え」
端的な言葉しか発さなくなったダサメンと俺。
「聞いて喜べ。この過半数が女子を誇る我らが心理学類でも、やどかり祭実行委員会での出店と神輿作成が決まってるそうだ」
……はっ?
「本当か!?」
理解拒否の俺達をよそに食いつくソフモヒゴリラ。
「モチロンだとも。こんな重要な話で嘘を吐くわけがないじゃないか」
いつもと違い心の余裕たっぷり、満ち満ちた表情でブサイク金髪は頷いている。
「ッシャー!」
「悪くない」
アメリカ人ばりのオーバーリアクションでガッツポーズするソフモヒゴリラと本当にレアな上機嫌モヤシ。
……いや、ちょっと待って?
「麗しき女性陣との共同作業だ。しかも重ねて言うが我が学類の男女比は六対四で女子が多い。つまり一対一でいけば女子の方が余る。あとは……わかるな?」
ブサイク金髪がブサイク面に不敵な笑みを浮かべ、キザったらしく天に掌側を上向けた拳から人差し指を伸ばす。嗚咽物のキモさだ。
「オーイエ、オーイエス!」
「フフ、フフフッ」
我が世の春が来たとばかりに、ソフモヒゴリラとモヤシも気分上々。ヘーイDJ。
え? これって嬉しいことかな?
確認のためにダサメンに目を向けてみる。
無。虚脱。脱魂。
口からゲロと一緒にエクトプラズムも抜けそうなダサメンがそこにいた。……ですよねー。
「というわけだ。お前らもよかったな。念願の女子との交流ターイムだぞ」
あ!?
声なき怒りが俺達から立ち上る。
「細谷、八代。ちょっといい?」
前科者になることを厭わない俺達の殺意を止めたのは、人斬りが生業の武士、七瀬。
ええい、止めるな! 我は殺るのじゃ! 自分はよく人とか会話を一刀両断してるくせに、俺達にはさせてくれないというのか! 介錯仕る!
「あの、その」
そんな俺達にどう声をかけたものかといった慌てた様子丸出しのゆずちゃん。
それに毒気を抜かれるというか、もう浄化。からの意気消沈。
たとえ相手がこのゴミクズでも罪は罪。人は人を殺してはならないというのか。
「ああ、とりあえず1C棟か」
俺は諦めに立ち上がる。
「ええ、行きましょ」
頷いた七瀬に続き、俺達はその場を後にした。
チッ、行け行けと吐き捨てたげな表情を俺達にだけ向けるバカ三人組に見送られ。
……亜人類ブサピエンスだから、ワンチャン殺してもセーフにならないかな?
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