54 自己紹介(今更)
翌日。
今日も今日とて仕事のため、社畜一号・二号はやどかり祭実行委員会室の門を叩く。
「「お疲れ様でーす」」
「「「「「おーお疲れー」」」」」
室内にいた多くのお仲間が挨拶を返してくれる。
「「おー来たか」」「「お疲れ様」」「お疲れー」「お疲れ様ですー」
そんな中、非常に見覚えのあるメンバーが勢揃い。まさかの総合計画局全員集合だ。最近はそれぞれ委員会室外での作業なんかもしてるから、珍しいパターンだ。
「説明会の資料作りか?」
パソコン席に着座した俺を見て、筋肉先輩が尋ねてくる。
「ご明察の通りです。先輩方も?」
「同じくだな」
筋肉先輩が頷く。
「左に同じ」
エンジェル&マザーも同様のようだ。
「七瀬さん達は?」
ダサメンが一年女子sに尋ねる。
「私達も同じく。プラスでゴミ箱に貼るゴミの種類カード印刷」
と七瀬。
「全員そうか。企画説明会も来週だしな。頑張るとしよう」
「「「うーす」」」「「「「はーい」」」」
筋肉先輩の言葉に全員が頷いて、作業する。
パソコンの台数は限りがあるので、各担当ペア毎に一台で作業する。二人で昨年資料のコピペを見ながら、着座したほうが必要に応じて訂正を加える方式だ。基本は例年と変わることなどないので、ほとんど確認だけだが。
各担当、確認の言葉を交わしながら作業を進める。企画への説明・注意は非常に重要な案件だが、正直載せられる分量には限りがあるので、やがて小康状態に落ち着く。
「そうだ、筋肉。大切なことを忘れていたぞ」
そのタイミングで、思い出したように肉だるま先輩が俺達にも聞こえるように言ってきた。
なんだ!? 酒か!? 仕事か!?
経験則から来る防衛本能が俺に三戦の構えを取らせる。
「一年のヤドカリネームを決めてないぞ」
しかし、肉だるま先輩の口から出たのはそんな拍子抜けの言葉だった。
「おお! そういえばそうだな!」
うっかりしていたと筋肉先輩は手を叩いて、俺達に向き直る。
「ということで、お前達のヤドカリネームを決めようと思う。作業しながらでいいから、いいものがあったら言ってくれ」
なんか緩い感じで始まったな。
「えっと、ヤドカリネームって筋肉先輩、肉だるま先輩みたいなあだ名のことでしたよね?」
俺は当時の酒のせいで薄い記憶から辛うじて思い出す。
「そうだぞー。なんでもいーぞー」
仕事しながらなせいか、関係なくか。ホントに緩い感じだ。
「どんな風に決めるものなんですか?」
七瀬がパソコン画面から視線を外し、先輩方に向き直る。
「俺と筋肉は……まあ、見たまんまだな」
と、肉だるま先輩。まあ、そうでしょうね。
「マーサ先輩とお姉ちゃん先輩は、名前と雰囲気からですか?」
七瀬はエンジェル&マザーにも話を振る。マーサ先輩とお姉ちゃん先輩?
「そう。私はまんま名前ね」
「私はよくわからないけどお姉ちゃんっぽいからって」
苦笑気味に二人が答える。あれ? ちょっと待って。
「お二人のヤドカリネームはマーサさんとお姉ちゃんさんなんですか?」
「そうだけどどうしたの……ってそういえば」
答えながらエンジェルは驚いたように口を手で覆う。
「……そういえば、自己紹介もしてないわね」
そうですね。50投稿を超えてながら驚きなことに。
「そうだったか?」
とぼけた局長、筋肉先輩は不思議そうに首傾げる。
「八代、筋肉先輩と肉だるま先輩とはしましたが、女性陣とはしてない気がします」
流れで何となく来ていたが、正式な自己紹介はしていないはずだ。ここまで一緒の局で活動しといてこれマ?
「確かに葵ちゃん、ゆずちゃんとは別にしたけど、細谷君、八代君とはしてないかも」
マザーも驚きと困惑のない混ざった苦笑を浮かべる。
「言われてみれば、入局届けで名前は知ってたが、七瀬、双葉と自己紹介はしてないな」
肉だるま先輩も今思いついたとばかりだ。……なんで入局の時しなかったんですかね?
「そうか。特に困らなかったから、これはうっかりしていたな」
ワッハッハとわれらが局長はこりゃまいったと大笑いだ。いやいや、嘘でしょ? 誰一人疑問に思わなかったん? 大らかでいい集まりだなー。
「うむ。それじゃあ、ここで一度全員自己紹介しておくか」
ソウデスネ。もはや突っ込むだけ無駄なので、いち早くエンジェル&マザーのお名前を伺うため静粛にする。
「俺は総合計画局長兼電気担当、応用理工学類三年の藤原大誠だ。ここではヤドカリネームの筋肉の方が通りがいいな。よろしくな!」
知ってる。野郎はいいから早く次プリーズ!
「同じく電気担当、応用理工学類三年の杉山宏だ。俺もヤドカリネームの肉だるまの方が通りがいいぞ。よろしくな!」
前に同じ。次! 次!
「会場配置担当、国際学類二年の桃瀬穂乃果です。ヤドカリネームはちょっと恥ずかしいけど、お姉ちゃんです。名前でもどっちでも呼びやすい方で読んでね」
オーマイマザー。美しいヴィーナスに似つかわしいご芳名だ。ほのかのほは、稲穂の穂に違いない。何せ稲穂のように豊かな実りが頭を垂れている。ヤドカリネームも納得の包容力だ。
「同じく会場配置担当、心理学類二年の葉月真麻。ヤドカリネームは名前まんまだけどマーサ。だから、普通にマーサって呼んで」
マイエンジェル、今なんと!? マーサって呼んで? お名前で……下のご芳名でお呼びしても構わないので?
ヒデキ感激に身を震わせていると、その感慨を邪魔する視線一つ。その元凶を辿れば、七瀬がもはや見慣れたジト目で俺を見ていた。……ハイハイ、一年の先陣を切れということですね、特攻隊長。いつも通り自分でやればいいものを。
「机椅子担当、心理学類一年の細谷将司です。よろしくお願いします」
先輩方の自己紹介から、まだないヤドカリネームのみを省いて自己紹介を済ます。
その後、謎の空白。疑問に隣を見れば、ガッチガチに顔を強張らせたダサメン一人。
「おい、早くしろ」
軽く肘で小突いて、自己紹介を促す。ここにいるのなんて、もはやよく知ったメンバーだろうが。
「わ、わかってる」
そんな風に言いながらも未だガッチガチなダサメンの前。我らがゆずちゃんがスーハースーハーお手本のように深呼吸して、ダサメンに微笑みかけた。なんだと!?
許さざるご褒美に殺意の波動を向けるも、
「つ、机椅子担当、心理学類一年、八代颯太です。よろしくお願いします」
ゆずちゃんスマイルにATフィールドを解かれたダサメンは何とか自己紹介をこなしていた。
許すまじ……というか女子耐性ないこいつなら余計にガチガチになるかと思いきや、よく普通に自己紹介できたな。って、お前、なにゆずちゃんにサムズアップしてんだ、コラ。
「美化担当、同じく心理学類一年の双葉柚子です。よろしくお願いします」
よくできたね。思わず拍手しちゃいそうだよ。
って、ゆずちゃん! なに、サムズアップしてるの!? バッチイからこんな人にサムズアップ返ししちゃいけません!
「同じく美化担当、心理学類一年の七瀬葵です。よろしくお願いします」
心中で悲鳴上げる俺に関係なく、七瀬があっさりトリを締めて、自己紹介は終わった。
ああ、もしかしてこいつ先陣を俺にやらせて、自分がトリを務めるつもりだったのか。強硬派に見えてその実気遣い屋な相変わらずさに、やれやれと我知らず口元が緩んだ。
投稿数50を超えてからの自己紹介。以後、お見知りおきください。
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