44 真のエコロジストにしてフェミニスト
「でもまあ、これはあくまで最終手段だから」
危機一発したくて堪らなそうな巨漢タッグを、エンジェルが一時停止させてくれる。
「まずは話し合いかな?」
言葉を継いだのは我らが良心、ホーリーマザー。
「それで、それぞれどうしてその担当をしたいの?」
オーマイエンジェル! それ聞いちゃいます?
これはまずいですよ。真っ当な質問だけど、真っ当な質問だからこそ、まずい。なにせこちとら動機には不純物しか存在しません。
「私は入局の時も言った通り、マーサ先輩とやってみたくて入ってるんで」
OH! 躊躇った自分が馬鹿らしいほど清々しく、不純な動機を言い放つ漢が一人。しかもご本人を前にストレート告白。お前、もっと文脈だとか雰囲気をだな。
「えーっと、ありがと?」
ほら、エンジェルも珍しく戸惑いがちじゃないか。
「あと、ゆずと一緒にやりたいですし。付け加えるなら、あのバカ二人のどっちかと組むのもごめんですし」
おっとっと、さらに不純物の宝石箱やー。加えてゆずちゃんの後の。いりましたかね? むやみに人を傷つける行為は褒められたものじゃありませんよー。
ほら、お前の不躾さを良く知る俺はともかく、女に免疫がないのに女に拒絶されたダサメンなんか、ショックでコヒュコヒュ、口パクパクさせる金魚みたく呼吸困難になっっちゃってるじゃない。あと、俺の名誉のために付け加えるなら、俺が組みたかったのは女の子なゆずちゃんで、あなたは武士、きらきら武士イン・ザ・スカイなお前とじゃないからな!
「貴様の意見はわかったがな。こっちもこっちで美化担当希望なわけだ。その意見は覆らんぞ」
異議ありとばかりにズビシと七瀬を指差してやる。
「あっそ。で? そもそもなんで美化担当希望なわけよ」
言ってみなさいよとばかりに七瀬は机に肘付いた手に頬を載せて、俺を見返してくる。
まあ、お行儀の悪いアマですこと。
「環境破壊が声高に叫ばれる昨今。美化活動に興味を持つのは、まさにその元凶・渦中にある人類という種の一員として至極当然のことではなくて? さらに清廉潔白なエコロジストを自称するこの細谷将司。数トンのゴミが出ると聞いては見過ごせませんことよ」
地球の未来に想い馳せ、痛む胸に手当て、俺はリンカーンばりに力説する。
「はいはい」
「!?」
だというのに必殺仕事人・七瀬。僅か四文字で俺の熱演を切って捨てる始末。こ、このアマ!
「や、茶番に付き合うほど暇じゃないから」
「!?!? ま、まあ、茶番ですって? 切実に地球の未来を憂う私の純真な心をそんな一言で台無しにするなんて! 決して許されることじゃなくってよ!」
バンバン机を叩いて、俺は痛切に反論する。
「うむ、茶番は捨て置きどうしたものか」
「そうだな。このままでは話が進まん」
「!?」
だというのに、巨漢先輩タッグまで俺の涙の訴えを無視して話を先に進めようとする。
酷い! 酷いわ! 立ち上がり、クキィーとハンカチを咥え涙目で訴えようとするが、ふとマイエンジェル&マザーがいることを思い出し、俺はスッと大人しく席に着く。
チッ、失敗か。不純しかない七瀬の希望に対し、これ以上ないほど崇高な動機を掲げたというのに、何たる集まりだ。エコ意識の欠片もないとは嘆かわしい。まったく役に立たないエコなどクソくらえ。
「八代はどうだ?」
筋肉先輩はダサメンに話を振る。よし、ダサメン。任せたぞ!
「お、俺は」
あ、あかん、これ。ダメダメな空気が話す前からビシバシ伝わってくる。しかし、それでもやり遂げてもらうしかない。
さあ、参りますこの問題。ここはなんとしてもお答えいただきたい。俄かに頑張る、ハチャメチャ頑張る。あなたの人生を変える、大事な、大事な……アタァック、チャァアーーンス!
「び、美化担当がいいです」
0点! 失格!! 今すぐお帰りください!!!
なんでお前とペアを組まにゃならんのだ! グギギと歯を噛み締めながら言葉の続きを待つ。
……三十秒経過。…………一分経過。
「え、終わりか?」
なんの理由も説明も出てこないダサメンに思わず素で問い返す。その俺に対し、ダサメンはコ、コクリとロボットのようにぎこちなく頷く始末。口下手ってレベルじゃねえぞ!?
「うむ、理由はわからんが、細谷よりは想いが伝わった」
「そうだな、切実な訴えだった」
「おかしな話過ぎませんかね!?」
だというのに先輩巨漢タッグからは謎の高評価。
社会情勢を慮り、あれほど世間様に配慮した俺の百言の美辞麗句が、こんな語彙力・説明力0のポンコツAIに劣るだと!?
「あんたのはわざとらしいのよ」
断固抗議・徹底抗戦の構えの俺に、武士から無情な一言。
「ふ、ふざけるなよ? 俺は心から地球の未来を憂う真のエコロジストとして」
「それで、どうしましょう? 最終決定装置ですかね?」
きらきら武士☆ 無視? 反論すら遮って一刀両断。キイー!
「うーん、どっちも譲れないなら仕方ないけど」
頬に手をやって、マイマザーは困った声を出す。
「でも、それでいいの?」
片手に顎を載せたエンジェルが、俺とダサメンを見やる。
「と言いますと?」
唐突なエンジェルの発言の意図がわからず、俺は問い返す。
「二人がどうしてもやりたいって言うなら仕方ないと思うけど、それは女の子二人の希望を無下にしてまで貫きたい意志なのかなーって思って」
エンジェルからの指摘に、息を飲む。こ、これは試されている? 俺、試されてる?
グ、グヌヌ。い、いや、ここはいかにエンジェルのお言葉とは言え、男女平等を貫かなければ。
女の希望がなんだ! それは俺達の希望が否定される理由にはなりえない! 俺は、何かといえば男女平等と宣いながら、都合のいい時だけ女子ぶり、男ぶる似非フェミニストとは違うのだよ!
真のフェミニスト細谷将司としての矜持を胸に、俺は同じ席を争うライバルに目を向けた。
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