39 それでいいのか?
「バカやってんじゃないわよ!」
「「ガハアッ!?」」
はずが、顔面への衝撃に寸断される。
「今は三文芝居する時間じゃないでしょーが。さっさと行くわよ」
顔を押さえる俺達の前、漢七瀬、仁王立ち。
男二人に同時グーパンは一応とはいえ生物学上、女子としていかがなものでしょーか!?
「アアン?」
「「すいませんでした」」
私が上、お前が下な!
そう言わんばかりの威圧の風に自然界の序列を思い知らされ、俺は反論もせず、泣く泣く頭を下げる。
こんなの絶対おかしいよ!
グーパンと敗北に痛む俺の頭に、小さく冷たい感触が触れる。
「大丈夫ですか?」
屈みこんだ俺達より、ちょっとだけ高いところから降ってくる柔らかな声。
さすりさすりと心地よい感触が労わるように頭を撫でてくれる。
ああ、僕達の癒し、ゆずちゃん。
小さなその姿を見上げて、俺とダサメンは歓喜に打ち震える。君のためなら死ねる。
「その、でも、葵の言うとおりだと思います」
ぐっと息を飲んで、
「私達のお神輿ですから。私達も行きましょう」
ゆずちゃんは宣言した。
「……そうだな」
ゆずちゃんの手の感触を名残惜しそうにしながらも、ダサメンが立ち上がる。
「もちろんだ」
そりゃ、そうだ。
そもそも、俺が一人に押し付けるのはおかしいって言ったんだ。その張本人が参加しないなんてふざけた話だ。
「よし、行くぞ」
「お前が仕切るな」「はいっ!」「だからそう言ってるでしょ」
三者三様の反応ながらも、三人とも付いてきてくれて、俺達は議論の輪へと進む。
進むものの、そこで発せられる声は、明らかに最初の勢いを失っていた。
「どうしたんだ?」
手近にいたモブ誰かに尋ねる。
「んー、なんつーか手詰まり感?」
初対面のわりに気さくなモブ誰かはお手上げといった感じでバンザイ。
「いろんな意見は出たけど、これってのがね」
「決定的なのがないよな」
「まあでも、例年の見てもこんなもんじゃないか? これ以上、どうってのは難しいよな」
周りの数人も肩を竦めたりしながら、モブ誰かの言葉に反応する。そして、その会話が議論の停滞をこの上なく物語っているようだ。
まあ、言われてみればそうか。どんなヤドカリにするか。それだけの話。
だからこそ、より詳細なアイディアをと言っても中々出ないかもしれない。
「あー、まとめるとかわいいデフォルメのヤドカリってとこかな?」
Aもこれ以上はお手上げか、まとめに入っている。それはコンセプトどうこうってレベルでもないが、確かにそれ位しか言いようはないんだろう。
「そんなとこだな」
モブなんとかも、Aのまとめに賛同し、他数人もぱらぱら肯定の声を上げる。
なんというか、それはそんなとこだなというよりも、それ位しかないなという消極的な同意に見えた。しかし、議論に参加せず浮かれていた俺には、まったくもって発言権はないし、代替案もないから何も言えない。
「そっか。それじゃあ、そんな感じで考えればいいかな?」
夏海ちゃんが笑顔で頷いて、請け負おうとする。
――その笑顔が、なぜか遠く感じられた。
だから、予感がした。これは良くない。
でも、この空気間の中、口出すことへの恐れがあり、
「んー、それでいいのか?」
そんな俺の内心を、もう聞きなれた感がある声が代弁する。
ああ、ホント、お前って空気読まないんだな。
笑ってしまいそうなある種の安心感に目を向ければ、終息を図った場の空気に、あっさりと疑問を突き付けた猿がとぼけたように首を傾げていた。
みんなの視線を一手に受けながらも、注目されるのには慣れているのか、慌てた様子もなく猿はがりがりと短髪を掻き毟る。
「……その心は? 猿渡」
ガン〇ム提案の時同様に、Aが猿の真意を確かめる。
しかし心なしか、その切れ味はガ〇ダムの時より鈍い。
「いや、なんつーか」
上手く言葉にできない。
そんな様子で猿は腕組し、目を閉じる。言葉は出ない。でも、猿の言わんとするところは、なんとなくみんなわかっていた。だって、ただ一言発された猿の疑問だけで、さっきまでの終息の空気が霧散してしまっていたのだから。
「……あー、俺だってわかってるよ」
やけくそのように言って、Aも髪をがりがり掻き毟った。
「でも、他にいいアイディアあるか?」
困ったように、Aは笑った。
そういうことだ。
議論したくせに、出てきたのは当たり触りのないアイディアだけ。元がヤドカリをどうこうしようというだけの話だ。それも仕方ないだろう。
でも、それは何か違う。皆、思ってる。それでも、答えがない。
だから、Aはまとめ役として、出た意見でまとめざるを得なかったのだろう。
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