36 デザイン
「んじゃ、擬人化はなしで、あとはリアルとデフォルメだけど」
新入生A、すっかり進行役だな。まあ、板についてるし、話が早いから助かる。
「見た感じ、ほとんどデフォルメだったな」
と、新入生H。
確かに言う通り、過去十年分位のやどかり祭実行委員会の作品を見た限りデフォルメ八に対して、リアル二といったところか。
「まあ、さっきから散々言ってる当初の話を考えれば、あんまリアルにする意味はないよな」
「それな」
気やすくモブなんとかが同意してくる。なんだ、モブのくせに馴れ馴れしいな。
「そうだねー、そもそもが抽象的なモチーフだし」
ありがとう、夏海ちゃん。
「それに作るコスト的にもリアルの方が大変だと思うよ」
付け足し夏海ちゃん。
「そうだよな。んじゃ、デフォルメってことでいいか?」
新入生A……面倒だな、もうただのAで十分だ。Aの確認。異論のあるものはない。
「となると、あとは実際のデザインだけど」
Aはちらりと夏海ちゃんを見てから、全体を見回す。
なんだ、その意味深な目。うちの夏海はやらんぞ!
「やってくれる人とかいる?」
まあ、それで手を上げる奴はいないよな。
流石のバカ猿も静かなようで良かった……とか思ってたら、あいつ、誰もいないなら仕方ないなみたいな溜息ついてないか!? マズいぞ!
「それじゃ、私に任せてもらっていいかな?」
俺の危惧を可愛い声が遮る。見れば、夏海ちゃんが肘から先だけをちょこんと上げていた。
「悪いな。そうしてもらえると助かる」
予定調和。そう言わんばかりにすんなり、Aは夏海ちゃんに軽く頭を下げた。
「夏海ちゃんは、神輿にメインで取り組める本部企画局員で、しかも芸専。デザインをしてもらうにはうってつけの人材だと思うけど、皆どうかな?」
Aの説明台詞な確認に、微かな騒めき。
さもあらん。
ゲイ専。なんと恐ろしい響きだ。
まさか、まさかこの可愛い夏海ちゃんがBL好きだったなんて! この世には神も仏もいないのかよ!?
「バカな想像してそうだろうから言っとくけど、違うわよ。芸術専門学群だからね」
目の前が真っ暗になった状態の俺に蜘蛛の糸。七瀬の補足に俺は思い至る。
芸術専門学群。
そう言われれば聞き覚えがある。その名の通り芸術を学ぶ学群だ。
なるほど、そういうことか。ようやく得心が行って胸を撫で下ろす。まったくそうならそうって言えよな。恐ろしい略し方しやがって。
ちなみに芸術を専攻できる公立大学は日本においては、そこそこレア。さらに、ここは芸術専攻がさらに数少ない国立。夏海ちゃんは、その狭き門を潜り抜けた未来のアーティスト候補様というわけだ。そう言われてみれば、さっきから神輿作りに関しても、やたら実践的な意見を出していた。
進んでやりたい人間もいなければ、否定する理由もない適材適所。満場一致の拍手で夏海ちゃんがデザイナーに任命される。
「ありがとー。それじゃ恐縮ながら、不肖、高橋夏海、本年のやどかり祭実行委員会の神輿のデザインを担当させていただきます」
ビシッ、とおでこの前で敬礼をし、夏海ちゃんは神輿のデザイン担当を拝命した。
やだ、何それ可愛い。
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