33 目標
「あー、その前にちょっといいか?」
唐突にその他の声が割り込む。なんだ、と思って見返せば、確か最後に細メガネさんに物資関係の確認をしてたモブえーっとなんだっけ? 確かH?
「どした?」
モブAの問い返し。
「デザインもだけど、その前に目標決めたほうがよくないか?」
「それね」
「それだ」
ついにハモりまで見せる七瀬featモブA。ムムッ?
「目標ってどういうことですか?」
ああ、純粋なゆずちゃんはいつでも俺に癒しをくれる。
「肉だるま先輩が言ってたでしょ? 神輿はやどかり祭実行委員会以外の団体、各学類の新入生も作るって」
ゆずちゃんに答えるのはやはり七瀬。
その横で、肉だるま先輩? とモブA & Hがメッチャ引いている。うん、やっぱ初めて聞いたらそうなるよね、そのアダ名。
私が言ってるわけじゃなくて、もう決まってた先輩のやどかりネームだからと七瀬は弁明を挟み、
「で、全ての団体、学類が出した神輿の中で順位がつけられるの」
あー、確かに地元の祭りでも地区ごとの神輿が出て、そん中で表彰とかしてたなと思い出す。要はそれと同じことを、今回は俺達がされるわけだ。
「なるほど。目標というのは何位を目指すのかということか」
いたのかダサメン。人見知り全開してたのが、知ってる二人の会話になったから参戦してきたようだ。存在感無さ過ぎてようやく死んだかと思ってたのに。
「そういうこと。それによって神輿作りのサイズ感、デザインの凝り方、力の入れようが変わると思ってね」
と、モブH。
「なるほど、それは確かにデザインより先に確認したほうがよさそうだ」
俺も久方ぶりに発言。べ、別にダサメンみたいに人見知りしてたわけじゃないんだからね!
「そうだね。それによってデザインも変わってくるというか、それに基づいてデザインも考慮したほうがいいっぽい」
皆覚えてないかもしれないけど、俺は覚えてるよ、五ページ前のおそらく本部企画局の可愛い子ちゃん。ところでまだ聞けてないけど、お名前は?
「そんなの1位だろ?」
唐突な宣言に話してたメンツ始め、場の全員がきょとん。
いや、なんつーか猿。お前、ほんと凄いわ。空気読まないのもここまでくれば一種の才能。
「「「「「ハハッ」」」」」
七瀬、ダサメン、モブA、H、俺、他数名が思わず笑う。
「ま、どーせやるんだしね」
と七瀬。
「そりゃそーだ。どーせやるんだからな」
俺は肩を竦める。
「ごもっとも」
モブA。
「そういうことなら異論なし」
モブH。しかし、彼はただ、と続け、
「皆がそういうことでいいのかな?」
未だ何も発言してないその他大勢にモブHは問いかけた。
傍観者となっていたその他大勢は、急に水を向けられ明らかに戸惑っていた。ただ、その多くが結構情熱的な目をしていらっしゃる。
……まあ、ここにいるのはやどかり祭実行委員会なんて酔狂なもんに初期段階から入会を決めた人間だ。元々、祭りごとが好きなんだろうし、そもそもこんな流れに反論はし辛いだろう。
「こんな空気じゃ言いづらいかもだけど、さっき言った通り自由に発想、発言してもらっていいよ?」
常に一転突破な七瀬。こいつってそんな感じでありながら、というよりそんな感じだからこそ、こういう配慮はするんだよな。ただ、それがストロングポイントなお前ならいけるかもだが、普通の人間にはそんな呼び水を与えられたところで行動はし難いと思うぞ?
「ちょっといいか?」
と思ってたのに挙手する強者が1名。なに、ここってメンタル強者の集い場なの?
「もちろん」
応じる七瀬。
「目指すのは構わない。どーせやるなら勝ちたいってのは当然だしな」
とモブ……あー、もう覚えきれん! が、ただ、と続ける。
「掛けられる労力を期待されても困る。俺は広報宣伝がやりたくて入ってるんだ。局の自分の担当の仕事をメインにしたい。それに講義だってあるしな」
確かに、俺も総合計画局の仕事もあるしな。しかし、なんつー現実的な。というかよく、この場、この空気の中で言えたな。凄いぞ、モブなんとか!
「いやで「そりゃごもっとも」
反論しようとしたお猿を遮って、モブAが肩を竦める。おお、あいつ七瀬に言われたことをすぐに活かしてパワープレイしてやがる。猿は涙目だが。
「当然、それぞれができる範囲って話にはなるだろ。この委員会での自分の担当の仕事はあるだろうし、この委員会以外にサークル掛け持ちしてる奴もいればバイト入ってる奴もいるだろうからな」
モブAはそうやってモブなんとかの主張を呑む。
「ただ、神輿作りの中心は俺達、本部企画局だって局の先輩からは言われてる。本部企画局の一年は明確な担当って少なくて先輩の下でやる感じだからある程度の融通は利くし、人数も他局より多いからな。だからある程度は俺達に任せてもらって構わない」
おお、なんて頼りになるんだ、モブA。
「だから、本当に目標。意識だけの問題さ。当然できる範囲でしかできない。そのできる範囲を可能な限り広げて、その中でやる気を出して上を目指すか否か」
とてもモブとは思えないぞ、モブA。
「そういうことならオッケー。別に優勝を目指したくないわけじゃなくて、自分の役割を第一にしたいだけだからね。どうせやるならできる範囲でよりいい結果を目指すことに異論はない」
モブなんとかはニヒルに肩を竦める。
「まあ、どうせやるなら負けるつもりでやることはないな」
ダサメン!? お前、そういうタイプか!?
驚き目を見張るものの、ダサメンは照れたように顔を逸らす。え、キモイ。と純粋な感想を抱いていると、男子校は勝ち負けにシビアなんだよ、とダサメン言い訳。さいですか。興味ないです。
「オッケ。それじゃ、それぞれに事情、考え方はあるだろうけど、とりあえずは全体としては優勝を目指すってことでいいかな?」
モブHさんがまとめに入り、全員を見回す。まあ当然、ここまで来れば異論は出ない。それぞれの神輿活動に取り組む裁量も認められたわけだしな。どうせやるならよりいいものをってのは人情だろう。
「どうせやるなら負けたくないしな!」
お猿。
うん、こいつの発言は考えも裏表もないから、素直に賛同できるな。反対もしやすいけど。
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