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大学生は頭が悪い ~アットホームなサークルです。笑顔が絶えないバイト先です。懇切丁寧に指導する大学です~  作者: ノーパクリ・ノーオマージュ
1限目  やどかり祭実行委員会 ~ やりがいのある仕事です! 未経験者大歓迎m9(^Д^) ~
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31 神輿作り


「おー、割と集まったね。上々上々」


 とか思ってたら、ばっちりのタイミングで出ました、我らが委員の統一皇帝、細メガネさん。ヒーローは遅れてやってくるものですよね! もしかして楽屋裏でスタンバってました?


 しかし、待ち望んだ皇帝の登場であるとはいえ、姿を見せるだけでざわついていた皆が静まって注目するのは、流石空気を読む日本人なのか、それとも怪しい魅力、細メガネさんのなせる業か。


「待たせて悪かったね。それじゃ、これからのことを話そうか」

 そして衆目を集めても落ち着き払っている安心と安定の細メガネさん。


「まず、皆には聞いての通りやどかり祭実行委員会としての神輿を作ってもらいます」

 細メガネさんは、モブその他大勢の後ろに転がる担ぎ棒らしき木材やどでか発泡スチロール群を指差す。


「そして、これまた聞いてると思うけど、それは一年生の皆でやってもらって、僕達上の世代は手出ししません。神輿のコンセプト、デザイン、実際の作成、果ては当日の担ぎまで全部一年生だけでやってもらいます」

 ……経験者無しでやるってことか。勝手もスケジュール感もわからないってのは、割とシビアな気がするな。


「とはいっても、様子見とか差し入れで上の世代もたまには顔出すから、わからないことあれば当然聞いてもらって大丈夫」

 こちらの無言の不安をすかさずフォロー、もはや流石すぎて怖い。


「ってことで、後は自由に始めてもらうんだけど、その前に伝えることが二つ」

 細メガネさんが二本の指を立てる。


「まず、やどかり祭実行委員会の神輿について。やどかり祭っていうのは、そもそも新しい寮生歓迎のお祭りというのが始まり。寮に住むっていうのを、ヤドカリに見立ててやどかり祭って名付けてるわけだね」

 まあ、これは名目で、実際は新入生全員の歓迎だけど、と言いながら細メガネさんは続ける。


「だから、その実行委員会たる僕達の神輿は例年、そのコンセプトを体現した神輿を作ってる。つまり具体的に言えば、ヤドカリをモチーフにした神輿を作ってる」

 なるほど。って理解はするものの、なんだ。そもそもモチーフはできてるんじゃないか。


「基本的にヤドカリありき。あとはどんなヤドカリにするか。リアル志向かデフォルメかとか。細かいコンセプトとデザインについて、君達に決めてもらうわけだね」

 さいですか、細メガネさん。ところで俺の心読んでたりします?


「ただ、そうは言っても、これはあくまで基本。作り手であり、担ぎ手でもある君達。主役の君達がどうしてもこれが作りたい、表現したい、伝えたいってものがあるならヤドカリというモチーフを変えるのもありだ」

 えー、ここまで来てちゃぶ台返しっすか? フリースタイルっていいように見えて、実は枠が決まってるより大変だったりするんですよねー。


「ただ、ヤドカリのモチーフは50年以上、変わることのない伝統だってことは言っておく」

 と思ったら、これ。いや、もうこれ変えるなよって言ってるのと同義でしょ。 


 モチーフについては以上でと言いながら、細メガネさんが中指を折る。


「もう1個は期限。知ってる人も多いと思うけど、今年のやどかり祭の本祭は6月1日の土曜日。前夜祭は5月31日の金曜」

 そうなんですね!

 ……もちろん知ってたよ? いや、5月末だって確か言ってた気がするし。


「やどかり祭実行委員会の君達は当然、前夜祭から仕事が盛り沢山。となれば5月30日には完成してなきゃまずいよね? ということで神輿の完成期限は5月30日」

 となると、今日が4月10日なわけだから、あと1月と20日か。そうわかったところでスケジュール感がわからん。大丈夫な気がするよーな、短いよーな。


「神輿作りとは別にやどかり祭実行委員会の担当をしながらの作業になるからね。時間はあるようでないよ。気を付けながら頑張って」

 あー言われてみればそうなるか。総合計画局の仕事しながらだと思えば確かに忙しい&ハードそうだ。


「ただ、今ここにいるのは初期メンバー、早い段階で入会を決めてくれた1年生達。これからも入ってきてくれる子達はいるから人手は増えると思ってもらっていいよ。例年通りなら今の3倍以上の人数になると思う」

 マジか! それって結構な人数だな。俺が驚いている間にも、新しく来た子には教えてあげてね、と細メガネさんは付け足し、


「とりあえず必須事項は以上かな。何か質問とか聞いておきたいことはある?」

 細メガネ先輩は人差し指も折って手を降ろし、俺達一年組を見渡す。


「いいですか?」

 モブ、えーと、とりあえずH位? が挙手する。お行儀が良くてよろしくてよ。


「もちろん、どうぞ」

「足りない物品とかあったらどうすればいいですか?」

「ああ、それは中央図書館前の橋下の通路に物品小屋があるから、そこから持ってきてもらって構わないよ。場所は昨日部材運びをした本企の一年生が知ってるかな?」

「はい! 大丈夫です!」

 一々声が大きくてうるさいですよ、モブZ? ことお猿さん。


「了解です」

 モブHは納得して頷く。


「ちなみに物品小屋でも足りないものを買い足したいとかあった場合は、財務部に確認して金を融通してもらって」

 プラスアルファの説明を細メガネさんは付け足し、


「他はどうかな?」

 再び俺達を見渡す。それ以上、特段なにかあるやつはいないようで、声は上がらない。


「オッケー、それじゃ後は頑張って」

 質問がないのを確認して細メガネさんはヒラヒラと手を振り、背を向けてしまった。


 え? 結構丸投げ過ぎません? 経験も無ければ、何もわかってない一年を残してこの始末とは。高校時代、友達にしっかり教えるから任せておけとスノボーに連れていかれ、頂上で置き去りにされた傷害未遂事件を思い出しますよ。



 当然の如く、どうしたもんかと全員が視線を彷徨わせる気まずタイムが発生した。





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