29 案内仕れ
「さて」
チャリを持って四人集まったところで、俺は切り出す。
「それで俺達はどこに行けばいいんだ?」
「うむ、そうだな」
「はあっ!?」
「ええっ!?」
もっともな俺の疑問に頷くダサメンと、対照的に驚きも露わな女子二人組。
「あんたら、行き場所もわからないで外出てきてたの?」
心底呆れたといった感じで七瀬が頭を押さえる。
うむ、奇遇だな。俺も頭はずっと痛いぞ。
「恥ずかしながらその通りだ」
正味、二日酔いで頭は回っていなかった。
失敬、訂正だ。
今も回っていない、痛い。
「堂々と言ってんじゃないわよ。そんなあんたに恥って概念があったことが驚きだわ」
突っ込みながら呆れる七瀬さん器用。
まったく失礼な。あるに決まってるだろ。
「ふん。偉そうに言っているが、お前こそ場所を知ってるのか」
上から目線な七瀬を指差し指摘してやる。
「知ってるに決まってるじゃない」
しかし、当然のように首肯する七瀬。
バ、バカな。俺達と同じくこいつだって行き場所なんて聞いていなかったはずだぞ。
「あんたらみたいなノリと勢いだけで生きてるバカと違うから。入る前の段階である程度情報は仕入れてるし、私達が知ってるってわかってたからマーサ先輩達も敢えて場所の確認しなかったんでしょ」
まったくもって失敬なテイク2。しかし、ぐうの音も出ないし、ここは。
「そうか、苦しゅうない。案内仕れ」
「偉そうでむかつくわね」
オウ、アイアンクロー!
流石漢顔負け武士。暴力に躊躇いがない。
「あ、葵―!」
アイアンクローする七瀬の手を揺するゆずちゃん、マジポメラニアン。荒んだ俺の世界に現れた一輪の癒し。
「ダサメガネ、殺す」
嫉妬に燃えるダサメンにも、その優しさを見習ってほしい。
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空中歩道のペデストリアンデッキを突き抜けて建つ体芸棟。
その中央には、広く突き抜けた通路がある。どこか近未来的なデザイン。
この体芸エリアは、第二エリアと寮の間にあるため初日から毎日通過しているものの、未だにここを自転車で通過する時はちょっとテンションが上がる。通路両脇の体芸棟もガラス張りでちょいオサレデザインだし。
なんてお上りさんな感想も、ペデストリアンデッキが終わり、舗装された少し広めの歩道に成り下がれば盛り下がる。
左手に見えてきた体芸食堂もテラス席があると言えば聞こえはいいが、第二エリア生行きつけの二食に比べると小さくボロめに映る。
「ここ停めるわよ」
なんて思ってると、先導していた七瀬がまさにその体芸食堂を指さしていた。
こんなところに? 疑問に思いながらも、大人しく七瀬の後についていく。
「わわっ」
しかし、急な方向転換に慌てるゆずちゃんの車体がフラフラ揺れる。
「大丈夫かー?」
「だ、大丈夫ですー!」
しかし何とか持ち直してリスタート。
うーむ、七瀬も俺も長野で自転車に乗り慣れてるが、ゆずちゃんはあまり自転車を使わない生活だったのかもしれない。まさかの小動物シティガール?
どーでもいいが、ダサメンは大丈夫かと一応振り返れば難なくついてきていた。こいつも普通に自転車に乗ってたのか、バイカー(笑)だけある。
七瀬が駐輪スペースらしきところにゴールインしたので、俺達もその隣に停車。チャリを駐輪して七瀬に向き直る。
「で、どこに行くんだ?」
見たところ神輿作り会場らしきスペースなど見当たらない。
「こっちらしいわよ」
言いながら七瀬が通路に戻るように歩き出す。
「らしい?」
「私も行くのは初めてだから。聞いてはいたけど」
「なるほど」
通路に戻り、道に沿って少し寮側に下ってウォーク。
七瀬がすぐに出現した通路脇の階段へ入る。
「こんなところあったのか」
驚くダサメン。こればかりは全面同意だ。
「普通に通ってるだけじゃ気付かないですよね」
「私も聞いて初めて認識したわ」
そんな会話の間にも階段を下り終える。とても短い。学校の怪談・十三階段の半分程度しかない。
しかし、地盤自体が体芸食堂自体より低いせいか、高さは十分。
俺達の目前には、こんなところあったのかという秘密基地のような地下空間が出現していた。
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