20 私はそう問いたい
「ここだよー」
自転車を降りて駐輪する天使に倣って、俺達も自転車を駐輪する。
なお、ここは大学の敷地内で公道ではありませんし、飲酒運転もしてません。ええ、もちろん乗ってませんとも。
「第1エリアですね」
自分達が来たことのない空間を、俺達はお上りさんよろしくキョロキョロ見回す。
「そうだよー、私達人間学群生は第二エリアがメインだからまだ来たことないかな?」
挙動不審な俺達にか口元を抑えながら、天使が首を傾げる。
「そうですね。通学の時も素通りしてるんで、降りるのは初めてです」
「そっか。それじゃあ覚えておいて。この1C棟の中に私達の委員会室があるから」
委員会室。
おそらくサークルの活動ブースのようなものだろう。
しかし、サークルのブースと同じ活動のための空間であるにも関わらず、どうしてこうもお堅い響きに感じられてしまうのだろうか。
まあ、そもそも活動の硬さ、公益性等がまるで違うのだろうからそれも仕方ないのだとも思える。
だがこれは良くない。
このまま進展すればおそらく加入することになるだろう団体に、昨日からマイナスのイメージしか沸いていない。
ということで見方を変えてみよう。
例えばラブで考えてみたらどうだろうか?
サークルブースのラブ。
まさに青春、王道一直線。これぞ大学恋愛な感じが堪らない。
しかし、これは王道でありながら、いや王道であるからこそ、真っ当すぎる感が否めない。
サークルという縛りの緩さゆえにどうしても自由奔放、縛りのないフリーラブなイメージが付き纏う。
それはそれでこの上なく素晴らしいものだが、どこかエロティックさに欠けないだろうか?
対して委員会室ラブを考えてみて欲しい。
そこはかとなくいけないことをしている気分にならないだろうか?
お堅いがゆえのラブに対する背徳的ニュアンス。王道でないがゆえの堕落感。
委員会室ラブはどこかオフィスラブに似た淫靡な大人の響きを内包しているのではないだろうか?
例えるならサークルブースラブは学生物AV。反して委員会室ラブはOL物AV。
どちらも至高、捨てがたし。
しかし、よりエロを感じるのはどちらか? 君はどちらにアンチテーゼな興奮を感じるのか。
私はそう問いたい。
「ここを左の奥に行くと私達の委員会室があるから、今度また案内するね」
天使ボイスで学術的考察から現実に引き戻される。
天使は学生物とOL物の間。JKというにはスレンダーかつスタイリッシュ、OLというにはどこか熟しきってない瑞々しい新鮮さを兼ね備えている。
まさに大学生、マージナルマン。
「今日は委員会室に行くんじゃないんですか?」
天使に対する不埒な妄想の罰として、己で己の顔面をグーパンで律していると、ようやく天使にも慣れたのか、ダサメンがもっともな問いをどもることなく投げかけていた。
「うん。流石に委員会室に全員は入らないから今日はこっち」
言いながら、天使は真っ直ぐに進み、右手の扉を開いた。
天使の発言からなんとなく察してはいたが、広い部屋だった。
昨日、人間学群全体がオリエンテーションを受けた2H棟の講義室と比べてしまえば3分の1程度しかないものの、それでも優に100人は入りそうな大講義室だ。
その講義室が半分以上埋まっている。
この全員が同じくやどかり祭実行委員会のメンバー、またはメンバー候補生なのだろう。
「それじゃあ、申し訳ないけど空いてる席に座って待っててもらえるかな? あと30分位で説明が始まると思うから」
天使が申し訳なさそうに両手を合わせて頭を下げる。
「もちろんです」「モーマンタイです」
天使にそこまでされて何の否やがあろう。俺達は即座ににこやかサムズアップ。
「ありがとう。それじゃあ、また後でね」
ああ、天使が去ってしまった。
仕方なく、俺達は適当に空いている席に腰掛ける。
しかし、手持無沙汰だ。
どうしたものかと周囲を見回す。
既に仲良く話している者、距離感を図るように様子を伺う者、あるいは我関せずとばかりにスマホをいじる者、種々様々であるが、共通しているのはどうにも今更関わりづらいということだ。
同じく様子を伺っていたらしいダサメンと目が合う。
「ハンッ」「ハハッ」
俺達は互いに肩を竦め、視線を外す。
こいつと話すことなどない。
時間までアルコールに侵された体を休めるとしよう。
俺は机に突っ伏して、また意識を遠く手放すことにした。
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