19 天使の恩寵
キーンコーンカーンコーン。
「「ウゥウー」」
甲高い終業のチャイムに、目を覚まさられた。ようやく意識を失えたと思ったのにこれだ。
気持ち悪いのに意識を失っていることもできない。何という拷問。
「フゥー、講義初日から遅刻に爆睡とは、まったく恐れ入る」
「……うるさい、話しかけるな」
ブサメン金髪が頭上で調子に乗っているようだが相手にする気力もない。
「普通、新入生にこんなになるまで酒飲ませるか? というか飲むか?」
「思った通りあれはメスの捕食行動」
ソフモヒゴリラと細モヤシも金髪の後ろで何やらヒソヒソ話してているようだが、反応する
気も起きない。こちとら未だかつてない二日酔いと絶賛格闘中なのだ。
お陰様で講義初日にして午前ぶっち、午後遅刻からの講義記憶無しの大惨事。
これで大丈夫、俺の大学生活?
何はともあれ、何とか乗り切った? のだ。今日のところはさっさと帰って休み、明日から
の挽回に備えるとしよう。
何事か話している三バカを置き去りに、俺は講義室出口に向かってヨロヨロ這うようにして
歩み始める。同じ境遇のダサメンも付いてくるが構う気も起きない。
「辛そうだね、大丈夫?」
オーマイエンジェル。
重い重いドアを何とか開けた先にはヘブン。昨日の運命の出会いをフラッシュバックさせる
天使のお出迎えが待っていた。マジ卍。
「「はい、もちろんです」」
天使の手前、俺達はニッゴリと強がりの微笑みを浮かべる。
「そっか、よかった。でも、大変だと思うからよければ飲んで?」
そう言って、天使はビニール袋を差し出してくれる。
おお! 天使からのプレゼントとな!?
俺は恩寵を受け取ろうと手を伸ばすも、横合いからも伸びてくる手に気付く。
振り向けば、青白く肌艶悪いダサメンが見るも醜く顔を歪ませ凄んでいた。
「その手を引っ込めろ、半死人」
「こっちのセリフだ、ゾンビ野郎」
「アアン!?」「オオン!?」
売り言葉に買い言葉。怒りを噴出させるも残り少ない体力ゲージは既にレッドゾーン。
しかし、そんな小さなことには構っていられない。天からの贈り物、このバカに渡してなるものか。
「その、二人分あるから仲良くね?」
美しい御声に、ハッと天使の御前であることを思い出す。二日酔いで頭が回らず、天使の降
臨を失念し感情のままの醜態を晒してしまった。
仕方なく舌打ちしたい気持ちを堪えながら、俺はなぜか口元を抑えて顔を背けている天使の
手の袋を、ダサメンと取っ手を片方ずつ手に持って受け取る。
手元に引き寄せてみれば、中には見慣れぬ特徴的な金色の缶が二本。
「おお、これは!」
ダサメンはそれが何か知っているのか、歓声を上げながら一本を手に取る。何事かと不思議
に思いながらも、俺も残った一本を手に取りパッケージを見る。
ウ〇ンの力。
「こ、これは」
初めて手に取ったが、聞いたことがある。飲酒前にこれを服用すれば、地球人もスーパーサイヤ人になることができると。
蓋を捻り開け、俺達は一息に天使の恩寵を飲み干す。
おお、甘露かな。とは流石に天使からの下賜の品であっても思わないものの、想像していたよりは美味い。加えて涙のどんぐり程度には体力が回復した気がする。
これが噂のウコ〇の力のパワーか。もしくは天使の愛の力。あるいは双方のプラシーボ効果?
「どうかな?」
おずおずと、不安げに俺達の顔を覗き込む様は、まさにエンジェル!
「「はい、最高です! ありがとうございます!」」
伸ばすことも億劫だった背筋を伸ばし、直立不動で俺達は答える。
「よかったー。それじゃあ、今日も来れそうかな?」
「「そ、それは」」
流石に怯んだ。
いかに天使のお誘いといえど、あんなサバトを連日行えばタダでは済まない。主に俺の健康と単位が。
おどおど視線を泳がせていると、同様に視線を彷徨わせるダサメンと目が合った。
瞬間、互いの顔つきが決意に固まる。
こいつにチャンスは渡すまい。
「「行きます!」」
グルルと互いを噛み殺さんばかりに俺達は唸る。
「わー、ありがとう!」
ぱあっと華を綻ばせるようにして、天使は両手を合わせた。
「それじゃあ、行こっか」
天使が先だって歩き出す。
「「サー、イエッサー!」」
どうやって互いを排除しようか画策しながら、俺達はその後ろに付いて行った。
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