15 第一回ご褒美争奪戦
「ご馳走様が聞こえない」
マイマザーのマザーたる実りの感激に打ち震える俺の脇、ゲス笑いを浮かべるダサメンのボソりとした謎詠唱が響き渡る。
何言ってんだ、こいつ? 頭沸いてんのか?
「おお、よく知ってるな!」「本当に今年の一年は有望だ!」
だが、疑問に感じているのは俺だけのようで、巨漢先輩タッグは当たり前のように俺に酒瓶を差し出し、断ることもできない俺の杯に酒をなみなみ注いでくる。
「え、え?」
「さあ、穂乃果。もっと細谷を応援してやろう!」「そーれそれそれだぞ!」
どうしようかと慌てる聖母を巨漢タッグが悪の道へ誘導する。
「「「そーれそれそれ一気一気一気ハイハイハイハイ♪」」」
バカな。何を言ってるんだ、このキ〇ガイ共は。
「「「一気一気一気ハイハイハイハイ♪」」」
キチ〇イの戯言等、切り捨てればいい。
しかし、俺はそんな風に切って捨てることはできなかった。
「「「一気一気一気ハイハイハイハイ♪」」」
だって、俺の聖母がこんなにも俺に声掛けしてくれている。笑いかけてくれている。楽しそうに手を叩いてくれている。
その動きと共に揺れ動く偉大なるどたぷん様にかかれば、他一切の些事などどうでもいい。
オーマイマザー。この乾杯を、あなたに捧げる。
「ご馳走様でしたぁー!」
今度は締めの挨拶を叫んで、俺は飲み干した紙コップをブルーシートにこれでもかと叩きつけた。
「「「お・見・事♪ フーフーフーフーッ♬」」」
リズムに乗った拍手からのサムズアップした両手を軽やかに左右へ。その中心で、聖母は困惑しながらも楽しそうな笑顔を咲かせてくれる。
ああ、やはりマイマザーはマジ聖母。
「バカな……罰ゲームのはずがご褒美、だと?」
隣では衝撃を受けたダサメンが両手を地について打ちひしがれている。
フッ、人の不幸を願う愚者はそうなるということだ。
「なんだ、お前もコールして欲しかったのか」「だったら早くそう言えよ」
ざまあみろとダサメンの不幸を笑っていれば、巨漢先輩タッグが不穏なことを宣いながら、ダサメンのコップに酒を注ぐ。
「細谷だけじゃ可哀想だからな」「穂乃果、八代に飲んで飲んで飲んで行くぞ!」
マイマザーに有無も言わさず、巨漢先輩タッグはおっぱじめる。
「「「飲―んで飲んで飲んで♪」」」
巨漢先輩タッグの重低音の中でも隠し切れない聖母の美声が弾んでる。
「「「「飲―んで飲んで飲んで♪」」」」
マイマザーの御声をダサメンに届かせぬよう、俺も大声で先輩方に合わせる。しかし、
「「「飲んで?」」」
かわいさ、イナズマ級。
緩急をつけた唐突なリズムの転調、お願いするように顔の前で掌を合わせ、首傾げる聖母こともはや女神。
ヴィーナスのあまりの美しさ尊さに、俺の心肺は活動を停止した。
「グフゥッ!」
そして、その女神のチャームを正面から受けた腐れダサメンは、堪え切れずに口中の酒を噴き出した。
「どうしたんだ、粗相じゃないか」「そんなにキツかったのか」
「いえ、そういうわけではないんですが……すいません」
巨漢先輩タッグは気遣うが、ダサメンが大丈夫そうなのを見て取ると、
「ふむ、それじゃあ、SOSO粗相、行けるか?」
「ぃ喜んでぇ!」
筋肉先輩の確認に、ダサメンは全力全開の歓喜で応じる。その理由は、豊満などたぷん様の前でいそいそと両手を形作る準備をしている我が女神の御姿ゆえなのは間違いない。
「バカな! なんでこいつばかり!」
嫉妬と怒りのあまり、両手で地面を叩きつける。
「なんだ、お前も欲しかったのか! この欲しがり屋さんめ!」
「まったく今年の一年は最高だな!」
大喜びの巨漢先輩タッグは、ダバダバと俺の紙コップにこれでもかと酒を追加するのだった。
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