魔術実践基本のキ12
「ア〜久シブリダワ〜大学久シブリスギテモウ色々覚エテナイワ〜新入生レベルダワマジデ〜」
「シノちゃんは学生じゃないでしょ」
「ア〜ワカンネーワ〜徹夜明ケダカラナ〜朝日スゲーマブシーワ〜」
「何それもしかして大学生のマネなの? そんな人いる?」
久しぶりといってもシノちゃんは3日前くらいにもバッグに入って一緒に大学来てたし、昨日のシノちゃんは夜9時から爆睡だった。作り置き料理を作ってた最中に帰ってきたシノちゃんは、8割ほどの食料を胃袋に収め、すぐに寝てしまったために色々と聞きそびれたのだ。
ちなみに今朝も食欲旺盛だったシノちゃんのために、冷凍ごはんを1パック多く解凍することになった。そろそろ食費ほしい。いやいらない。高値がつく羽根を押し付けられても困る。
1限がすでに始まっている大学の構内は、カバンにインしているシノちゃんとこっそり会話しても大丈夫なくらいに人通りが少ない。2限からの日はいつももう少し遅く来るけれど、今日は許可を取って早めに蝋梅さんのところにお邪魔することにしていた。
シノちゃんがとうとうユウを見つけたからである。
「……というわけで、やっぱり予定通り連休に行くことになりました」
すっかり懐いたヒナたちを撫でつつ、蝋梅さんはちょっと眉尻を下げながら頷いた。
行方不明状態になっているユウを探しに迷宮へ行くことについて、神様にも報告しといたほうがいいのかなと思ったのである。私はもちろんだし、ユウも一応日本に住んでいる住民だ。ユウの正確な住所は知らないので、もしかしたら違う神様の管轄だったりするかもしれないけど。その場合はきっと神様がなんか伝言とかしてくれると信じよう。
まずは神社に行ってボロボロの社に向かって手を合わせつつ報告したのだけれど、人気もないしジメジメしてるしもちろんリアクションもないので、一応蝋梅さんにも同じように報告しておくことにしたのだ。蝋梅さんは人並外れた美女ではあるけれども一応ヒトではあるので、頷いたり微笑んだりとリアクションしてくれるのがありがたい。時々スズメたちが絶妙なタイミングでちゅんと鳴いたりするのもあって話しやすかった。
もう連休が迫ってきてるせいでレポートが出たりしてバタバタしているので、今日はシノちゃんの話を聞くついでに蝋梅さんへの報告も一緒に済ませてしまおうと思ったのである。
「で、詳しい場所がわかったみたいなんですけど……シノちゃん? シノちゃーん?」
キャンパスバッグの中で沈黙しているトロピカルオウムは、私が覗き込んでみると仰向けになってダラダラしていた。指を入れるとシノちゃんが両足で握ってきたので持ち上げると、ドッコラセーなどと声を発しつつ私の膝の上に着地する。机の上の方が安定感はありそうだけれど、ヒナたちがいるので諦めたようだ。ちなみにスズメたちはちゅんちゅんと何やらシノちゃんに向かって鳴いていたけれど、シノちゃんはガン無視していた。
「ヒトガセッカク安クテ狭イバッグデノンビリシテタノニ〜」
「安物ですいませんでしたー。シノちゃん、ユウ見つけたんだよね? どこにいたの? 日帰りできそうだった?」
「ン〜タブンデキルカモネ〜」
「たぶんなの? かもねなの?」
「ドウセアノ吸血鬼連レテクナラ大丈夫ジャナイ? シノチャンダケジャ頼リナイト思ッテルダシネ〜」
「いやだからサフィさんも一緒なのはシノちゃんが頼りないと思ってるからじゃないってば。シノちゃんすごい役に立ってるし強いし頼もしいから」
「ア〜モットソコナデテ〜」
相談なくサフィさんがついてくることになったのをまだ微妙に根に持っているシノちゃんは、とりあえず撫でて誤魔化しておいた。ひっくり返してワシャワシャと撫でている私を、蝋梅さんが興味深げに眺めながら銀ピーちゃんを撫でている。
「ユイミーちゃんタラゴッドハンドダヨネ〜」
「で、どういう状況だったの? ユウは大丈夫そうだった?」
「ンートネー」
モコモコに体を膨らませていたシノちゃんは、起き上がって私の膝の上に立つ。そして両翼を半開きにしたかと思うと、ゆらゆらと揺れ始めた。
「コンナ感ジダッタ〜」
「………………え? 何? どんな感じ」
「ダカラ〜、コンナ感ジ〜」
ゆらゆらと左右に体重移動をしながら、シノちゃんは頭を上下に振る。
揺れに合わせてシノちゃんは「コンナ〜感ジダッタネ〜タブンダケド〜」と歌い始めた。
いや全然わからん。
どういう状況なんだろう。踊ってるのだろうか。
ヒナを撫でている蝋梅さんも、無言で困惑しているように見えた。




