はじめての魔術6
「コノ新発売苺ホイップ白玉あん、一昨日発売シタトキカラ食ベタカッタンダヨネ〜」
「いつも不思議なんだけどシノちゃんそういう情報どこで仕入れるの? ネット? ハト?」
ヒナとテピちゃんたちを迎えに行き、スーパーで買い物をして、シノちゃんが囁き続けていたのでコンビニにも寄った。
帰ってからのひと休憩の時間で、シノちゃんは新商品を「苺ケッコー鮮度イイネ〜」などと評しながら味わっている。今日はヒナたちもおやつを食べたい気分だったらしくコンビニで小さくピーピー鳴いていたため、ふ菓子を買ってあげた。お皿を囲むようにして3羽でサクサクとつつき、ポロポロ溢れるかけらをテピちゃんたちが美味しそうに食べている。ニンニクは掃除したそうにフヨフヨ浮いていた。
廊下に置きっぱなしでいた魔術ノートは、静かに本棚の上に置かれている。私が帰るなり『お帰りなさい魔女として成長できるような出来事はありましたか? どんなときにもこの魔術ノートを携帯することによって日常における様々な現象を魔術的に解析そして記録し効率的に魔女となる手助けができます』とマシンガントークを始めたので干してあったジッパーバッグに入れた。魔術ノートはすぐに静かになった。音量が大きくなくてもずっと喋り続けられるとうるさいので、ジッパーバッグに入れたまま棚の上に置いている。
シノちゃんから3分の1ほど分けてもらった苺ホイップ白玉あん(白玉はくれなかった)を食べつつ、気になっていたことを質問する。
「シノちゃん、私を個人的に狙ってるひとがいるって何? なんでそうだと思ったの?」
「ン〜アノネ〜ユイミーちゃんッテネ〜今食ベ頃ナンダヨネ〜」
「どういうこと」
「魔女ニナロウトシテルカラ〜、体ノ魔力モイキイキ元気デショ〜?」
「いや別に魔女になろうとはしてないけど」
「デモ魔術ニツイテハ完全ニトーシローダカラネ〜、他人ノ魔力喰ウ奴ニトッテハ〜、ウマミノアル雑魚ナンダヨネ〜」
雑魚呼ばわりはちょっとアレだけど、迷宮最強エリアにある死の森に住む死の鳥シノちゃんからすると、魔女未満な私はその通り雑魚レベルなのだろう。
「人間モネ〜、健康ノタメニハ安クテ栄養価高イゴハン食ベタイヨネ〜」
「ああ、魔力とかあるひとにとっては、私は栄養価あって倒しやすい相手に見えると」
「シノチャンレベルニナルト魔力ノ器デカスギワロタダカラ〜食事ハ純粋ニ美味シサ優先ダケド〜、弱イ奴ラハネ〜強クナルタメニ魔力多イヤツヲ喰ッタリスルンダヨ〜」
「それって実際魔力を増やすのに意味あるの? 前に魔力の器があるとか聞いたけど、魔力の多い相手を食べたら、その魔力の器が大きくなったりするの?」
「ドウダロウネ〜シノチャン器ノ広イ鳥ダカラヨクワカラナイケド〜、食ベタラ一時的ニ魔力増エルノハ間違イナイト思ウヨ〜ゴラテメクソガキィッ!!」
シノちゃんは白玉の隣のクリームをつついたピーちゃんに対してかなり心の器が狭い対応をしているけれど、魔力が高いことは確かなので、食べたら云々の詳しい仕組みはわからないようだ。
「元々魔力多イヤツハ最初ッカラ強イトカネ〜、強イ親ニ守ラレテタリスルデショ〜。デモ魔女ハネ〜、魔力目覚メハジメテモ強クナルノニ時間カカルダカラネ〜」
「あんまり強くない存在にとっては狙い目なんだ」
「サービスタイムッポイダヨネ〜」
例えるなら、「今なら3割引」とかシールを貼って表示しているような状態だろうか。
そんなお得感で人を狙わないでほしい。
「マーデモチャッチャト魔術マスターシタラ〜魔力目当テノ奴トカボコボコニデキルカラネ〜頑張ッテ魔女レベル上ゲテネッ!」
「だから私は別にそのレベル上げるつもりないんだけど……えーと、魔女になろうとしたら、魔力がイキイキするの? つまり、魔術を勉強し始めたらってこと?」
「ソンナカンジダネ〜チョット麦茶チョーダイ〜」
「でも私、魔術の勉強って始めたばかりというか、昨日教材パラ見しただけレベルなんだけど。それでもわかったりするの?」
「ソコダヨネ〜」
私にクチバシを拭いてもらい、テーブルの上を移動してお猪口から麦茶を飲んだシノちゃんがぐりっと勢いよく首を傾げた。角度がつきすぎて頭がほぼ逆さになっている。
「アヤシイ気配ネ〜チョット前カラ感ジテタカラ〜変ダヨネ〜。シノチャンガ天才ッテダケジャナサソウダヨネ〜」
「ちょいちょい抜け出してたの、ユウのことだけじゃなかったんだね」
「ソウナノヨネ〜。デモコノ辺神様イルシ〜、ユイミーちゃんモ変ナコトシテナイカラ〜ナンデカナッテナルダヨネ〜」
シノチャンなりに不思議に思って調べてくれているようだ。人のことをオヤツウーマンとか呼びつつも、色々と面倒を見てくれているところが優しい。
指で頭の辺りを撫でると、シノちゃんはプェーと鳴きながら目を細めた。
テーブル越しに見えている魔術ノートが『身を守るためにも……魔術……勉強しませんか……』とかすかに囁いていた。




