ゲーム遭遇日記 その3
(10/15)サブタイトル変更しました。
内容に変更はありません。
ステータスがリセットしてからここまでの戦闘回数は4回で消費したスタミナは380。
内訳は消費スタミナ90が2回、100が2回。
ちょっと前は60や70で済んでいたことを考えると、消費量が増えたということがよくわかる。
まぁ、それに伴ってスタミナの量も増えてはいるんだが。
ちなみに、戦闘中妖精さんはどこにいるかわからない。
少なくとも視界の中には入っておらず、いつの間にかにいなくなっている。
そして戦闘が終わったあと、どこからかふよふよやってきて角材の先端にとまるのだ。
そのまま鎮座し”ここは私の場所!”と彼女(野郎?)は主張するので、移動中俺は松明を持っているかのように角材を持って移動している。
この妖精さん、出会った時よりも大きくなっているような気がする。
ピンポン球くらいの大きさだったはずの球体はいつの間にか拳ほどの大きさになり黄緑色の光を発している。
不思議と眩しくはないその光の球体を目を凝らして見てみても、あの小さな手は見えてこない。
そのかわり発見したのが妖精さんの羽だ。
黄緑色の奥にあるそれは、ネオンライトのような細い線で縁取られ、透き通った膜が張ってある。
上下二枚ずつの四枚のそれは蝶ではなく蜂の羽のもので、縁取りと同じ骨格が透明な膜を支えるように伸びている。
いや、この場合は骨格の間に膜が張ってあると言った方が正解なのだろうか。
角材の先端にとまっているせいでほとんど羽ばたかないまま開いていた。
上の縁取りから離れるほど薄く、まるでシャボン玉の膜のように七色の光に光っている。
ということは、羽の骨格の根元から端に向かってだんだん薄くなっているのかもしれない。
光の干渉ってやつだな。
それとも、羽の表面に凹凸があるのだろうか。
乱反射ってやつ。
でも、それだと白っぽくなるはずだから、やはり徐々に薄くなっていると考えた方が自然か。
生物学的な知識は皆無に等しいし、高校の物理的な考察しかできないな。
スマホでもあれば蜂の羽についてググれるのだが……。
そんなことを考えながらじっくりと見つめていたら、羞恥心に耐えられなかったのかどこかへ飛んでいってしまった。
さて、ここまで俺が長々と妖精さんの羽について語ったことで何が言いたいのかというと。
とてつもなく、暇だ。
ただただ歩くだけというのが辛い。
時たまモンスターとの戦闘があるが、そんなのはものの10分もかからずに終わるので、あとはひたすら歩くだけだ。
自分で動くようになる前、つまり2回目の魔王戦のあたりまでは何とも思わなかった。
自分で動けるようになってしばらくは実験をしたり、魔法の特訓をしたりしていたから、そんなに気にならなかった。
魔法をいったん脇に置くことにし、突如現れた武器にも少し慣れてきた。
すると、やることがただ歩くだけになってしまう。
暇だ、とてつもなく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
妖精さんを探しているが見つからない。
すねているのだろうか。
仕方なくそのまま歩いていると、目の前に鉄のような金属で縁取られた木箱を発見した。
『宝箱を発見した!』
おぉ、これが宝箱か。
これこれ、これこそまさしく王道ファンタジーって感じだな。
表面はニスで塗られているのかつやつやしていてさほど古い感じはしないが、金属の角は少しだけ酸化している。
箱を正面から見ると鍵穴はついておらず、後ろを見てみると宝箱のふたと本体は蝶番でのみつながれている。
箱の大きさは、2Lのペットボトルジュースが6本入っている段ボールくらいだろうか。
もちろん、横に長い状態だ。
しゃがみ込んでも微妙に低く、ちょうどふたが開けにくいぎりぎりの高さである。
何気なく持ち上げようとしたが、宝箱は地面から微動だにしなかった。
押してみる。
動かない。
引いてみる。
動かない。
蹴り飛ばしてみる。
小指が痛い。
結論としては、この宝箱は地面に固定されているのだろう。
そういえば、宝箱を持ち上げるシチュエーションなんか想定していないだろうし。
だが、こんな道の真ん中に置いてあって邪魔にならないのか?
勇者しか通らないからいいのか。
仕方ない、ちょっと開けづらいがこのまま開けることにしよう。
だが、どうすればいいんだ、これ?
持ち手や手をかけるくぼみが見当たらず、箱とふたは一分の隙間なく閉じられている。
上に引っ張っても開かない、指をかけるところもない。
というか、もしかしてこれ真空なんじゃないか?
だったら、俺の筋力でどうこうできるものじゃないよな。
でも、中身は非常に気になる。
もし、これがいい靴だったら?
ニン◯ク卵黄だったら?
怪しい薬だったら?
もしかしたら、竜の肝かもしれない。
素早さ2から少しでも上がればスタミナの消費が少なくてすむ。
ニ◯ニク卵黄や怪しい薬、竜の肝ならスタミナの量が増える。
……それがうまいのかとか、食い物としてどうなのかというのは別として、これから進んでいくのに確実に役立つ。
だが、力の限り上に引いても、それによって腰が痛くなっただけでふたのほうは軋みもしない。
というか、角材が邪魔で持ちづらい。
こんな所でも邪魔するのか、この角材(呪い付き)。
試しに右脇に挟んでみたら、手から離れたのでもう一度ふたに挑む。
…………痛い痛い痛い痛い!
角に肉が食い込んで地味に痛い!
俺は涙目になりながら力技で開きそうにないと結論づけた。
ならば、何か仕掛けがあるとみた。
まずは、あえて上から押してみる。
箱の強度が高いことが確認できた。
単純な仕掛けではない、とすると、もっと複雑な仕掛けだろうか?
この宝箱押しても動かないように見えるが、もしかしたら微妙に動いているのかもしれない。
そして、それがスイッチになっていて、押した順が正しければ開く仕組みになっているのかもしれない。
仮に、正面から押す、正面から引く、右から左へ押す、左から右へと押す、という4パターンを組み合わせていると考えてみる。
4パターンを一度ずつ規定の順番に押し引きするとすると、組み合わせは24通り。
一度ずつに縛られないとすると、4回押し引きするだけで256通りあると考えられられる。
さらにいうなら四回で済むとは限らない。
5回以上押し引きしなければならないかもしれないし、押し引きのパターンも4回では済まないかもしれない。
何百通りか、はたまた何千、何万通りか。
いつまでも押して、引いて、押して、引いて…………。
……そんなもんやってられるか!
イライラとした俺は突如生まれた衝動をどこかにぶつけるように右手を振り下ろした。
カッーーーーーー
木と木がぶつかる鈍い、でもどこか乾いた音が響く。
……カシュッ……。
え?
ちょっとまて、今の音は?
もしかして、ふたが開いたのか……?
慌てて確認すると、さっきまでなかった隙間が箱とふたの間にできている。
指をかけてみるが、さっきまでの苦労がうそのように何の抵抗もありはしない。
この角材で叩くのが開けるための鍵だったのか。
ここまでの試行錯誤をあざ笑うように、嘘くさいくらい単純な仕掛け。
いつの間にかに戻ってきていた妖精さんはなにしてんのとでもいうようにきょとんとしている。
あっけない結末にHPがゴリゴリ削られたような気がする。
…………俺の、さっきまでの苦労は、いったいなんだったんだ。
読んでくださりありがとうございます。
そして、まさかの宝箱が終わらなかった……www




