SS
昨日一話更新しています。
今回は視点が異なるかなり短いサイドストーリーになります。
読み飛ばし可。
SS 〜とある砂のなかで。〜
質量のある闇というのはこの場のようなことを言うのであろうか。
限られた中で知り得た言葉が、そのような疑問を生み出した。
のっぺりとした闇。
そして、この空間における唯一の白く光る、パネルのようなもの。
そこにはこの計画の要となるデータが映し出されていた。
その文字達は、絶えず舞い飛ぶ黒い粒子に飲み込まれており、ぼんやりとしか見ることができぬ。
なんとかおおまかな数字が読み取れる程度であろうか。
さきほどまではこのデータすら見れなかったことを考えると、計画の進行を喜ぶべきだろう。
計画はゆっくりと、着実に進行している。
それは確かなことだろう。
だが……まだ足りぬ。
示す数値はまだ小さく、目標の値には遠く及ばぬ。
そもそもパネルの数字が読み取りづらいこと自体が、この計画の未完を如実に示しているだろう。
無論、焦る必要などはどこにもないことはわかっている。
しかしながら終点の見えぬ数字に焦りが出てしまうのは、我が未だ未熟ということなのだろう。
もう一度、はじめから今までまでの数値の推移を見てみる。
データの傾向を見ると、やはり我が自ら断つことが一番事が進行するようだ。
できることなら兄弟達などに託さず、我自らその身を断ちたい。
だが、それは不可能だ。
我にも越えられぬ理がある。
それは絶対の理であり、我の力をもってしても変える事のできぬ理。
幾度試みたかはわからぬが、結果はまったく変わらなかった。
それに、この計画において我の代わりをできる者はおらぬ。
ここで我が倒されてしまったら、計画の全てが霧散してしまうであろう。
いくら無茶が効いたとしても、倒されてしまっては元も子もない。
そのようなことは我には許されぬのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……」
遥か遠くから聞こえてくる慟哭。
彼にも酷なことをしているとは思っている。
だが、それだけだ。
ここで罪悪感をもったとしても何も変わらない。
彼に与える苦痛を減らすことなどできないし、するつもりもない。
苦痛を与える我が彼の為にできることなどなにひとつない。
罪悪感を持ちつつなんの罪もない彼に鞭打つなど、なんと烏滸がましいことか。
ならば、我は己の行いを肯定する。
いくら非道な行いであったとしても、これは我が始めたこと、我のすべきことなのだ。
また一人、砂のなかから兄弟が誕生した。
しばらくその場でうごめいたかと思うと、闇の中へと消えていく。
生まれたばかりの兄弟達を死地に向かわせるのは心苦しいが、彼らの犠牲はこの世界の礎となるだろう。
この世界のため、全ての罪は我が背負おう。
我ら兄弟のため、我らの平和のため。
兄弟たちよ、死地に向かえ。
その身を我に、世界に捧げよ。
全ては我らの、兄弟達の未来のために。
読んでくださりありがとうございます。
次回は主人公視点に戻ります。




