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(仮)ゲーム制作日記  作者: 少々
③ 魔法?なにそれおいしいの?
19/24

ゲーム探索日記 その9

難産でした……。

いつもより長めです。

濁った思考は何も生まず、ただただそこに漂うだけだった。

虚空を見つめる目はなにも写さず、何も感じない。

彼はぴくりともせず白い大地で膝を抱えていた。

太陽も月もない世界は、どのくらいの時が経ったのかも示さなかった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




膝を抱えて微動だにしなかった瞳に、ふと、赤いものが映った。

うつろな目でそちらを見ると、大きな紅葉の葉が2枚。

いつの間にこんなものが……?

一瞬、そうは思ったもののただそれだけだった。

未だ彼は動かない。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




ずりっ、ずりっ、と何かを引きずる音が聞こえる。

音のする方を見ると、引きずられている真っ赤な紅葉。

その葉っぱよりも小さいだろう妖精さんがどこからとってきたのか薬草を引きずってきたのだ。


ずりっ、ずりっと少し引きずっては休み、また少しずつこちらへと引きずってくる。

やがてこちらへとたどり着くと、二枚の薬草が重なる上によいしょっとばかりに持ってきたのを乗っけて、一仕事したとでもいうようにその上をくるくると回る。

そうしてから、俺の顔に近づいてきて、小さな光の中からもっと小さい手が出てきて、いたわるようにそっと顔に触れた。


小枝と間違えてしまいそうなほど細く小さな手。

だけど、その小さな手は確かな体温を持っていた。


誰かに触れられるのはいつぶりだろうか。

元の世界でもしばらく誰かに触れていない気がする。


そっと触れられた手の触感が俺がここにいることを証明してくれている。

それはじんわりと心地よく体中に染み渡ってくる。


あぁ、そうか。


君は心配してくれたのか。


だから俺が何度も食べていた薬草を重いだろうに持ってきてくれたんだな。

何度も何度も引きずって、大変な思いをして。

今だってこうやって気遣ってくれている。

なによりもその気持ちが、今、素直に温かいと思える。


正直、未だ先が見えない不安はある。

突発的なバグだったのかもしれないが、こんなことが何回もあるのかもしれないし、実際に自分が消滅するような事にもなるかもしれない。

イレギュラーとういなら、そもそも俺の存在自体がイレギュラーだ。


だけど、これまで進んできた事は無駄だった訳ではない。

今、こうして君と触れ合えるのも、ここまで進んできたおかげなのだから。

元の世界に戻れる保証などどこにもないが、それでも前に進むしかない。


今の俺には ”打倒魔王!” などと思いっきり叫ぶほどの気力はない。

プログラミングをする際には、まず細かい段階に分けてから少しずつクリアしていく。

その理念にのっとって、まずは妖精さんリオの全身が出来上がるまでがんばろう。

さっき、手ができていたということは、手のほうからだんだんと姿ができてくるのだと思う。

目に見える目標があればそれを希望に少しずつ先に進んでいけるはずだし、魔王が出てくるのは時の運だよりなんだ。


未だ体は重く、動きたくないという気持ちもある。

だが、俺は勢いよく立ち上がり、拳を上に振り上げる。



「よしっ! 復活!」



妖精さんリオもうれしそうにチカチカ点滅している。

さっさと先に進むか!


三枚の薬草を口に頬張りながら先に進む。

妖精さんリオには申し訳ないが、薬草三枚は正直辛い。

これしか食べていないから、風変わりな葉っぱに飽き飽きしている。

見た目的にも(赤い色は食欲増進するとはいわれているんだけども)食欲をそそるようにはなっていない。

妖精さんリオに「食べる?」と聞いたら慌てて逃げてしまった。


いやぁさ、確かに見つけるたびに口にしていたから薬草をチョイスする事はなんら不思議なことではないんだが。

自分の嫌いな物を人によこすのって……。

いや、それもこれもみんな妖精さんリオの心遣いだ。

俺のようなムシケラが文句を言う権利などこれっぽっちもないのだぁ!



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



『モンスターが現れた!

MHP:240 MSP:10 MPP:7 MOP:6 MEP: 275』


お?

ゆがみの輪郭がさっきよりもはっきりとしてきたな。

ぼんやりとしていた境目が、黒いススのようなものが集まったようになっている。

まぁ、未だはっきりとした形はないみたいだが。

なんというか、人くらいの大きさのもやって感じかな。


とりあえず、魔法はしばらく封印だ。

きっと、まだ魔法が使える時期じゃあなかったんだろう。

ほら、よくある”イベントクリアによる能力解放”ってやつ。

そう考えれば、またひとつ道しるべができたじゃないか。

……そんなイベントを組み込んだ覚えはまったくないが、ひょっとしたらあるかもしれないという夢を残してください。


とりあえず素早く胴体だと思われるところに殴り掛かった。

案の定右の方へ避けられ、本体から出てきた腕のようなものが振り下ろされる。

だが、

「腹がガラ空きだぁ!」

右手の肘を突き出し、肘鉄を喰らわせる。


『勇者の攻撃

モンスターに 1624 のダメージ

勇者は勝利した。』


よしっ、一度は言ってみたいセリフその15を言ってやったぜ!

……うん、冷静になると恥ずかしいな、これ。


まぁ、とにかく、ひとまず羞恥心はおいておいておこう。

なんか、一度避けられることが前提になってきている気がする。

俺のすべきことは”なるべく少ないスタミナの消費でモンスターを倒し先へ進むこと”。

なるべくモンスターの動きを見極めてちゃんと攻撃をあてられるようにしなくては。


『ステータス 体力297 スタミナ 394 素早さ2 防御力22 攻撃力20 です

勇者は名もなき原っぱを600M移動した。』


いつの間にかにステージが変わっている。

バクだろう。

動揺しつつ薬草を収穫する。


『モンスターが現れた!

MHP:160 MSP:15 MPP:16 MOP:13 MEP: 430』


ログを見なくてもそんなことはわかる。

なぜなら、目の前に現れたのは、俺の二倍はあるんじゃないかと思うくらいの巨体だったからだ。

これ、どこを狙えばいいんだろうか。

輪郭がはっきりしていたならどこを狙うか検討がつくが、のっぺりとしたもやではどこを狙えばいいのかわからない。

うーん、たぶんこれは人型のモンスターと見ていいんだろう。

今までに出てきた種類として、拳のようなもので攻撃してきた人型とみられるタイプと触手で攻撃してきたタイプがいた。

現時点で触手のようなものは見えていないからおそらく人型だろう。

というか、コイツが触手で攻撃してくることが想像できない。

だって、大きさ的に巨人だ。

だいたい3メートル級ってところか。

……首筋を狙おうにも首がどこにあるかもわからないな。


まぁ、とりあえずコイツは人型だと仮定して、”弁慶の泣き所”つまりすねの辺りを狙おう。

いわゆる、ローキックだ。

ちゃんと決まれば立てなくなるほど痛いらしい。

なんで殴らないのかは……うん、察してください。


ゆがみの動きを伺いつつゆっくりと近づいていく。

大丈夫だ、まだ動いていない。

あんな巨体じゃあ動くのものろいと見た。

サッカーでシュートを決めるように足の辺りを蹴り飛ばしてやる。


大きく息を吸い、覚悟を決める。

ふくらはぎに力を込め、大きく踏み込んで勢いをつける。

そのまま大きく二歩、三歩

四歩目で左足を軸にして、デカブツの脛に蹴りをかましてやる。


だが、俺は素早さの差というものを舐めていた。

鷹揚に構えていたそいつは俺の蹴りを垂直にジャンプして躱しやがった。

宙に浮く巨体と振り切ってしまった俺の右足。

この状態での回避などはできるはずもなく、巨体が地面に落下した衝撃で地面に倒れ込む。

ダメージはないが、非常にかっこ悪い。

デカブツはその場で四股を踏んだような体勢で見下ろしている。

そこにはない目と口が虫けらをもてあそぶようにあざ笑っているような気がした。


なめやがって。

腹と思われるところに殴り掛かる。

だが、あっけなく受け止められ、投げ飛ばされる。

受け身はとれなかったが、防御力補正のおかげでダメージはない。

起き上がろうとして自分の体が異常に重いことに気がついた。


くそっ、なりふりかまってられないか……。


重くなった体に鞭打って、だいたいの目標を定めてひざまずき、両手を地面につける。

そう、まるでクラウチングスタートのように。

ふくらはぎと腕にありったけの力を込め、魚雷のように勢い良く飛び出していく。


体当たり・改

急所頭突きウィーク・ヘッド!」


そう、目標は両足の付け根。

衝撃を考えただけで内股になってしまいそうな、男女関係なく急所となるであろうポイント。

はじめはそこを殴ることをためらったが、つべこべ言っていられなくなった。

無心を努め、急所に頭を突っ込んでいく。


頭上から衝撃。

地面に叩き付けられる。

今のは……手か。

ははっ、まさしく蠅のようにたたき落とされたってわけか。


今のでスタミナを使い切ってしまったのだろう。

うつぶせに手をついたまま仰向けになることすらできない。

いや、この場合、仰向けにならなくて正解だったかもしれない。


巨体はおもむろに足と思われるものを上げ、小さなアリを踏みつぶす。

地面に手が白い土の中に沈んでいく。

背中から響いてくる骨のきしむ音。

腰椎だか胸椎だかはわからない。

ゆっくりと背中から負荷がかかる。

まるで耐久実験のように。

自分が悲鳴を上げているのか激痛で脳みそが揺さぶられているのか。

そして、何かが砕ける音と激痛で視界が一気に狭くなる。


あぁ、やっと…………



『勇者は敗北した。』



ーーーーーーブツッ………………。




これにて二章完結です。

ちょっと下品でしたかね……。

思っていた以上に長くなってしまいました……。

次回から三章突入です。


感想等いただけたら狂喜乱舞します。

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