ゲーム探索日記 その3
『モンスターが現れた!
MHP:120 MSP:8 MPP:14 MOP:5 MEP: 520』
よし、実験その2だ。
今回必要なことは、モンスターよりも速く動くことだけだ。
ただそれだけでいいんだから、さっきのブリッジより簡単だ。
地面に膝を着き、両手を付けてクラウチングスタートの姿勢をとる。
目を閉じて深呼吸。
それからおもむろにカウントを始める。
5、4、3、2、1……
足の筋肉に力を込めるように意識する。
筋肉が縮小し、コイルのように地面を蹴りだす。
その前屈みのまままっすぐ前に飛び出した。
ゆがみはよけようと動いたが、そんなの微々たることだ。
俺は拳を握り、頭をかばうように右腕の肘を前に突き出す。
飛び出して加速した勢いのまま、俺は前屈みにゆがみに体当たりをした。
『勇者の攻撃
モンスターに 792 のダメージ
勇者は勝利した。』
一瞬手応えを感じたかと思ったら、ゆがみはあっけなく霧散していった。
うん、よし。
とりあえず、自分で動いて攻撃することは可能なようだ。
俺としても操り人形のように操られるよりかは自分で攻撃(物理)したほうがずっといい。
ログを確認すると、先ほどの攻撃の消費スタミナは60。
感覚的にも50m走をしたときと同じくらいの疲れ具合か。
まぁ、妥当な量だろうな。
もっと精度を上げれば少ないスタミナで攻撃できるようになるかもしれないが、今はこの発見を喜ぶべきだろう。
さて、次はどうしようか。
実験をするにあたって一番手っ取り早かったのが ”体当たり” だった。
ポ◯モンでも最初の技は体当たりだし。
ただ、俺はこのゲーム的に”体当たり”は認めん。
魔王登場!
勇者、すかさず体当たり!
〜そして世界に平和が訪れた〜
なんてぱっとしない……?
あれ?
いけんじゃね?
勇者決死の一撃みたいな……?
いやいや、勇者はかっこいい技でなんぼのもんだろう。
決して体当たりや殴るだけではない。
なんか、もっとこうさ
「漆黒の拳」(物理)とか、
「彗星の瞬き」(物理)とか……
くっ、俺の黒い過去がうずくぜ……。
『モンスターが現れた!
MHP:160 MSP:10 MPP:9 MOP:10 MEP: 420』
次はスタミナを設定してから自分で動いてみようと思う。
攻撃方法は右ストレート。
攻撃方法を何度か脳内でシュミレートし、ログに目を向ける。
『ステータス 体力243 スタミナ 294 素早さ2 防御力17 攻撃力16 です
どのくらいの力をこめますか?:』
スタミナ一桁目の4という数字が気になるから、スタミナを74消費しよう。
ログの後ろに74とイメージすると、やはり体が勝手に動き出した。
俺はその動きに合わせて動き、そして、自分の意志とタイミングでゆがみを殴りつけた。
『勇者の攻撃
モンスターに 1067 のダメージ
勇者は勝利した。』
……う〜ん。
そのまま操られるよりかはいいけど、やっぱりどこかしっくりとこない。
どこかずれているというか、なんというか……。
この感じは、あれだ、空港にある歩行者エスカレーターの感じだ。
自分の足で歩いているはずなのに、なまじ速いからふわふわとしているように感じるあの感じ。
100%自分の意志や力ではないから何となく落ち着かないのかもしれない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局、自分の意思だけで攻撃することにした。
『モンスターが現れた!
MHP:220 MSP:8 MPP:5 MOP:10 MEP: 220』
さて、次は飛び蹴りにチャレンジしようか。
ゆがみから離れられる限界まで下がってみる。
だいたい10mくらいはなれたところで何かの引力によってそれ以上離れられなくなった。
まあ、助走をつけるのには十分だろう。
その場で2、3回ジャンプしたあと、ゆっくりと駆け出した。
長距離ランニングよりちょっと速いくらいのスピードで走り、ゆがみより少し離れたところで踏み込みんで、ゆがみに蹴りを入れた。
しかし、助走が足りなかったのか鋭さが足りなかったのか、俺の渾身の飛び蹴りはあっけなく避けられてしまった。
ゆがみの腕が頭の上を通る。
ぶんっと風を切る音がした。
『モンスターの攻撃。
しかし、勇者は攻撃を防ぎきった。』
くっ、ミスった。
体勢を崩したまま次の攻撃に移ろうとするが、ゆがみのほうが速い。
とりあえず殴りかかったら、拳がゆがみにたどり着く前にゆがみに突き飛ばされた。
『モンスターの攻撃。
勇者に 28 のダメージ』
そのまま突き飛ばされた勢いにのってモンスターと距離をとる。
結果、地面にケツを強打したが気にしてはいけない。
とにかく落ち着いて次の行動に移らなければ。
またかわされたらせっかくケツを痛めた意味がないじゃないか。
どうも蹴りは無駄が多い攻撃らしい。
攻撃力は高そうだが、ケンカ経験値ゼロの俺にはハードルが高い。
それに、ステータスでの攻撃力が高いのだから、無理して破壊力をつける必要はないのだ。
そうすると、必然的に殴るか体当たりになるな……。
拳を固めて力を込めるイメージ。
素早くゆがみに近づき下から拳を突き上げる。
"正義の拳‼︎"
『勇者の攻撃
モンスターに 935 のダメージ
勇者は勝利した。』
肩で息をしながらその場に座り込もうとしたが、ケツが痛くておそるおそるになってしまった。
なんか、ほんとにいろいろと情けない。
ケツの痛みに顔をしかめつつステータスを確認すると、スタミナが106減っていた。
どうりで前の戦闘より疲れているはずだ。
そして、いつもより多いスタミナの消費は攻撃に失敗しても同じようにスタミナが減るって証拠がだろう。
二手目の攻撃をくらったときに消費したスタミナが一桁目の半端な6という数字に表れているんだろうな。
やはり、自分で動いて攻撃するにも相応のスタミナが必要であるようだ。
これまでの経験から考えると、スタミナを回復しない限りスタミナ切れまであと2回くらい戦闘をすることになるだろうか。
後2回は多いのか、少ないのかはわからない。
けど、このまま座っていたって魔王はやってこない。
こんなふざけた世界から抜け出したいならば、ひたすら進むしかないんだから。




