ゲーム探索日記 その2
『モンスターが現れた!
MHP:260 MSP:7 MPP:7 MOP:14 MEP: 320』
そういえば、さっきの戦闘で消費スタミナを入力したら、体が勝手に動き出した。
あれはいったいどういうことだろうか?
…とりあえず、検証としてもう一回消費スタミナを入力してみよう。
素早さ7くらいなら、スタミナは50くらい消費すれば平気だろう。
『どのくらいの力をこめますか?:』の後ろに50という数字を思い浮かべる。
するとやはり操り人形のように俺の体は勝手に動き出し、ゆがみに近づいていくではないか。
ゆがみのぼんやりとした胴体からは手のようなものを生やし、それを振りかぶろうとしているが、その間に俺の体はゆがみに近づき、ゆがみに向かって右ストレートを繰り出した。
『勇者の攻撃
モンスターに 744 のダメージ
勇者は勝利した。』
なんというか、平手で水面をたたいたような衝撃と言えるだろうか。
やはり一瞬の手応えのあとすぐに感触がなくなり、ゆがみも消えていった。
それと、勝手に体が動くのも、なんかしっくりこない。
いや、しっくりこないというより、はっきり言って不快だ。
自分の体(のはず)を自分の思っていないように動かされるのはこんなにも不快なのか。
ちょっとこれはなんとかならないだろうか…
薬草のプチプチした食感だけを楽しみつつ移動しながら、問題の解決方法を考える。
まず確かめることは動かないことは可能かどうかだろう。
もし抵抗できたとして、消費したスタミナはどうなるだろうか?
使われぬまま消えてしまうのか、それともモンスターにダメージを与えるのか。
ダメージを与えられるならまだしも、そのままダメージを与えられずにスタミナ消えてしまうとしたら、他の解決方法を探すか、あきらめて操り人形に徹するしかない。
そういえば、スタミナといえば同じ50の消費でもここに来たばかりの頃より疲れが少ない気がする。
スタミナの量が増えたから全体に対する消費スタミナの割合が小さくなったからか?
しかし、消費スタミナ自体も増えているから結局疲労具合は変わらない。
むしろもっと負担がかかっているかもしれない。
『モンスターが現れた!
MHP:220 MSP:8 MPP:8 MOP:11 MEP: 320』
さてと、実験だ。
素早さが8だからスタミナは70消費しよう。
だが、どうやって動かないようにしようか
ただぼんやりと立っているだけでは体は勝手に動いてしまうだろう。
しかし、完全に動けない体勢なのも考えものだ。
これはプログラムなのだから、こちらが動かない限りモンスターも動かないとは思う。
しかし、この世界においては必ずしもモンスターが攻撃せずに待ってくれるとは限らない。
動けない状態でフルボッコになるのは嫌だ。
どんな姿勢ならいいだろうか。
ただ立っている訳ではなく、動きづらく、とっさに回避ができるような姿勢?
膝を抱えて座るのは、きっと体が勝手に動いてしまう。
武士のように腕を組んであぐらをかいてみるか…?
いや、それこそ動きやすい姿勢だろう。
いっそのこと逆立ち…は静止状態で維持するのが難しい。
俺の場合、逆立ちの状態を維持するには壁が必要なのだが、ここにはそんなものはない。
インドア派の運動センスのなさをなめんな。
体育のマット運動の後転で後頭部を強打したときは本当に情けなかった。
あとは…ブリッジなんてどうだろうか。
静止状態を維持するのができそうで、なおかつ動きにくい。
回避は横倒しに倒れればいいだろう。
よし、ブリッジにしよう。
ゆがみのほうに頭を向けて仰向けに寝転び、手と足の力で体を持ち上げる。
ゆがみが見れるようにあごを突き出すと、妖精さんがあごのところに止まり、面白そうに点滅しはじめた。
……なんだこれ?
まあいい、以外とこの体勢は辛いからさっさと終わらせよう。
腕がぷるぷるしているのを我慢しつつ、スタミナを70消費する。
『勇者の攻撃』
自分の足が振り上げられたと思ったら、体が地面に対して垂直になった瞬間、俺の腕は腕立てのように地面を押し、宙に飛び上がる。
地面が遠く速く流れていく。
そのまま空中で体をひねってモンスターの正面に着地、拳を固めてそのままの勢いでゆがみをひと突きした。
『モンスターに 1072 のダメージ
勇者は勝利した。』
うぉあっ!
なんじゃこりゃ?!
これが、異世界効果ってやつか?!
こんなアクロバティックな動き、現実でもテレビくらいでしか見たことがない。
腕力だけで人が宙を舞うとか、いったいどんなファンタジーだよ。
いまさらだが、俺は根っからのインドア派だ。
講義とバイト以外必要以上に外へ出ない。
休日は家に引きこもり、ラノベやマンガを読みあさる。
行くとしても良心の痛まない古本屋で立ち読みくらいか。
それに、体育は5段階評価で3で決して運動神経のよい方ではない。
むしろ悪い部類だろう。
ちょっとバスケをやったら突き指で指の第二関節を剥離骨折した。
しかも、そんときは推薦の面接の直前だったっけ。
推薦の試験はかなりのトラウマになったな……。
まあとにかく、新体操のような動きなど全くできないはずだ。
こんなありえない動きは、自分でやっててかなり気持ちが悪い。
ていうか、なんでいちいち殴るんだよ!
攻撃方法 = 殴る もいい加減にしろ!
そのまま踏みつけるとか、もっと他にも攻撃方法があるだろう?!
なんで殴るって一択なんだ!
……殴る以外にも攻撃は可能だろうか……?




