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ゴブリンの討伐を終えた俺たちは、街へ戻ることにした。


「それにしても、まさか全部収納できるとはな」


ルーナは歩きながら、何度も俺の方を見てくる。


「俺も驚きましたよ。まさかこんな能力があるなんて」


「空間魔法か……いや、普通の空間魔法とは少し違う気もするがな」


「そうなんですか?」


「まあ、詳しく調べるのは後だ。まずは素材を売りに行くぞ」


「はい!」


街に到着すると、俺たちは冒険者組合へ向かった。


受付で依頼書を提出し、討伐したゴブリンの数を報告する。


「ゴブリンの討伐ですね。確認いたしますので、少々お待ちください」


受付嬢が確認を終えると、報酬を渡してくれた。


さらに、回収した魔石や牙も買い取ってもらう。


「こちらが討伐報酬と素材の買取金額になります」


「ありがとうございます」


受け取ったお金を確認する。


思っていたよりも稼げた。


ゴブリン自体は大した素材にならないと言っていたが、数が多かったおかげだろう。


「初めてにしては上出来だな」


「師匠のおかげですよ」


「まあな。俺様がいなかったら、どうなっていたことか」


ルーナは得意げに胸を張った。


「さて、今日は頑張ったし飯でも食いに行くか」


「いいですね!」


俺たちは冒険者組合の中にある酒場へ向かった。


酒場は冒険者たちで賑わっていた。


大きな声で笑う者、仲間と話し込む者、酒を飲んで騒いでいる者。


まさに冒険者の集まる場所という雰囲気だ。


俺たちは空いているテーブルに座り、料理と飲み物を注文した。


しばらくすると、料理と酒が運ばれてくる。


「お待たせしました!」


テーブルに並べられた料理を見て、俺は思わず笑顔になった。


肉料理にスープ、パン。


豪華とは言えないが、今日の俺にとっては十分なご馳走だ。


「師匠もお酒を飲むんですね」


「当たり前だろ。俺様だって酒くらい飲むぞ」


「見た目は小さいですけど……」


「なんか言ったか?」


「いえ、何でもありません!」


ルーナはグラスを持ち上げる。


「ほら、お前も飲んでみろよ」


「いいんですか?」


「冒険者になった記念だ。少しくらい飲んでみろ」


俺はグラスを受け取り、一口飲んでみた。


「……うっ」


思わず顔をしかめる。


「なんだ、その顔は」


「あまり美味しくないです……」


「ははっ! 酒なんてそんなもんだろ」


「日本じゃもっと美味しかったですし」


「ほう? お前の世界の酒はそんなに美味いのか?」


「はい。種類もたくさんありますし、美味しいんですよ」


「へぇ……ますます行ってみたくなったな」


ルーナは興味深そうにグラスを傾けた。


それから俺たちは料理を食べながら、いろいろな話をした。


俺の世界の食べ物や飲み物、ルーナが知っている魔物や魔法の話。


気がつけば、かなりの時間が経っていた。


そして……。


「おい、もう一杯だぁ!」


「師匠、もう結構飲んでますよ」


「うるせぇ! まだ飲める!」


どうやらルーナはかなり酒に強いらしい。


いや、強いというより、飲み過ぎているだけかもしれない。


その後も飲み続けた結果、帰る頃にはルーナはすっかり酔っ払っていた。


「師匠、帰りますよ」


「んぁ? 帰るのかぁ?」


「はい。歩けますか?」


「歩けるに決まってんだろぉ……」


そう言いながら、ルーナはふらふらと立ち上がった。


そして一歩踏み出したところで、俺の方へ倒れ込んでくる。


「うわっ! 師匠!」


「むにゃ……」


完全に酔い潰れてしまったようだ。


仕方がない。


俺はルーナを背負うことにした。


「軽いな……」


小柄な体なので、思ったよりも軽かった。


そのままルーナをおんぶして、家まで帰る。


「よいしょっと」


家に着くと、俺はルーナをベッドに寝かせた。


「お疲れさまでした、師匠」


返事はない。


すっかり眠っているようだ。


俺も疲れていたので、そのまま自分の寝床に入った。


こうして、異世界での初めての討伐と冒険者としての仕事は終わった。


翌朝。


「うぅ……」


ルーナの声で目が覚めた。


「頭いてぇ……」


どうやら二日酔いらしい。


「飲み過ぎた……」


「おはようございます、師匠」


「ああ……おはよう……」


ルーナは頭を押さえながら、ゆっくりと起き上がった。


「てか、いつ帰ってきたんだ?」


「昨日の夜ですよ」


「どうやって帰った?」


「俺がおんぶして帰りました」


「……はっ?」


ルーナの動きが止まった。


「おんぶだと?」


「はい。歩けそうになかったので」


その瞬間、ルーナの顔がみるみる赤くなった。


「て、てめぇ! 恥ずかしいことしてんじゃねぇーよ!」


「えっ? でも、仕方なかったじゃないですか」


「他から見たら親子じゃねぇーか!」


「まあ、いいじゃないですか。師匠はちっちゃいんですから」


「……はぁ?」


ルーナの声が急に低くなった。


「てめぇ、今ちっちゃいって言ったか?」


「えっ……」


「殺すぞ」


冷たい声だった。


冗談ではない。


俺はすぐさま床に手をつき、勢いよく頭を下げた。


「すみませんでしたぁぁ!」


スライディング土下座である。


「次はないぞ!」


「はい! 気をつけます!」


危なかった……。


師匠の地雷を踏んでしまったらしい。


朝食を済ませると、ルーナはいつもの調子に戻っていた。


「さて、今日は修行だ」


「はい」


「まずは走ってこい」


「分かりました!」


俺は外へ出て、いつものように魔力を全身に巡らせながら走り始めた。


その間、頭の中では昨日の空間魔法について考えていた。


せっかく手に入れた能力だ。


もっと詳しく調べておきたい。


走り込みを終えたあと、俺はルーナに相談してみた。


「師匠、昨日の空間魔法なんですが、色々試してみてもいいですか?」


「おう。面白そうだしな。やってみろ」


俺は庭に置いてあった石や木材、道具などを収納してみることにした。


まずは小さな石。


次に木材。


さらに少し大きな道具。


どれも問題なく収納できた。


「なるほど……」


ただし、一つ気づいたことがある。


「師匠、これって触れないと収納できないみたいです」


「ほう?」


「目の前にあるものでも、手が届かないと入れられません」


「なるほどな。今のところは触れたものを収納する能力ってことか」


俺はさらに色々なものを入れてみた。


少しずつ収納する量を増やしていく。


どうやら容量には上限があるらしい。


ただ、その上限はかなり大きい。


「だいたい分かってきました。容量には限界がありますけど、かなり入りますね」


「どれくらいだ?」


「そうですね……街ごと入るんじゃないかと思うくらいです」


「おいおい、それはやべぇな」


ルーナは驚いた顔をした。


「普通の魔法袋とは比べものにならねぇじゃねぇか。便利な能力だな」


「そうですね。荷物を運ぶ必要がなくなりますし」


さらに、もう一つ気になることがあった。


「あと、時間が止まっているかもしれません」


「時間が?」


「昨日入れたゴブリンを出してみたんですけど、見た目が変わっているようには見えなかったんです」


「腐敗してねぇってことか?」


「はい。まだ一日しか経っていないので、確実ではないですけど」


「それは面白いな。もう少し調べてみる価値はありそうだ」


「なので、確認のために数日間入れておこうと思います」


「そうだな。食べ物なんかも入れてみたらどうだ?」


「それも試してみます」


空間魔法については、まだ分からないことだらけだ。


これから少しずつ検証していこう。


その日の午後。


俺はルーナの家にある本を読んでいた。


魔物や薬草についての本は一通り目を通している。


その中で、気になる言葉があった。


「師匠、ちょっと聞いてもいいですか?」


「なんだ?」


「本で見たんですが、ダンジョンってどんなところなんですか?」


ルーナの手が一瞬止まった。


「ダンジョンか……」


「はい。魔物がたくさんいる場所なんですよね?」


「ああ。魔物が出てきたり、珍しい素材や魔道具が見つかったりする場所だな」


「宝物もあるんですか?」


「あるにはある。だが、危険も多いぞ」


ルーナは本を閉じ、俺の方を見た。


「ダンジョンは普通の森や洞窟とは違う。中の構造が変わることもあるし、強力な魔物がいる場所もある」


「へぇ……」


「興味があるのか?」


「まあ、少しは。冒険者なら一度は行ってみたいですし」


「ははっ! その前に、まずはゴブリン相手に一人で戦えるようになれ」


「ですよね……」


ルーナは楽しそうに笑った。


「ダンジョンに行きたきゃ、もっと鍛えろ。話はそれからだ」


「はい!」


俺は再び本に目を落とした。


この世界には、まだまだ知らないことがたくさんある。


魔法に魔物、魔道具、そしてダンジョン。


これからどんな経験が待っているのだろう。


少し怖いけれど、それ以上に楽しみでもあった。


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