↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/14

13


あれから一ヶ月以上が経った。


俺は毎日、ルーナの家で特訓を続けていた。


朝は体力作り。魔力を全身に巡らせながら走り込み、その後は魔法の練習。


午後からはルーナと一緒に街の外へ出て、様々な魔物の討伐や薬草の採取を行った。


最初はゴブリン一匹を倒すのにも躊躇していた俺だが、今では自分一人でもある程度戦えるようになっている。


もちろん、強い魔物が相手なら話は別だ。


それでも、この周辺に出てくる魔物なら、以前ほど苦労することはなくなった。


短剣の扱いにも慣れ、魔物の弱点や素材の取り方も覚えた。


そして、空間魔法も毎日のように使っている。


荷物を持ち運ぶ必要がないので、冒険者としてはかなり便利な能力だ。


ただ、魔法の方はというと……。


「よし、今日はここまでだ!」


「ありがとうございました!」


俺は額の汗を拭いながら、ルーナの方を向いた。


「段々良くなってきたじゃねぇか」


「本当ですか?」


「ああ。最初に比べれば随分マシになった。体力もついてきたし、短剣もそれなりに扱えるようになったな」


「ありがとうございます!」


「まあ、魔法は微妙だがな」


「うっ……」


そこは相変わらずらしい。


魔力操作はできるようになったものの、攻撃魔法を使おうとすると、威力が弱かったり、狙いがずれたりする。


ルーナのように自在に魔法を扱うには、まだまだ時間がかかりそうだ。


「まあ、この辺ならもう大丈夫だな」


「この辺って、周辺の魔物ですか?」


「そうだ。お前一人でも、ある程度は対処できるだろう」


「はい。最初よりは自信がつきました」


「よし。そろそろダンジョンでも行くか」


「えっ! ダンジョンですか?」


思わず声が大きくなった。


以前から気になっていた場所だ。


魔物が出てくるだけでなく、珍しい素材や魔道具、宝物なども見つかるらしい。


いつか行ってみたいと思っていた。


「行くぞ。ただし、準備はしっかりするからな」


「分かりました!」


「まずは食料と水。それから着替えも必要だな」


「着替えですか?」


「ダンジョンにどれくらい滞在するか分からねぇだろ。汚れたり濡れたりすることもある。予備は持っておけ」


「なるほど」


俺は言われたものを確認しながら、空間魔法に収納していく。


食料、水、着替え、必要な道具。


こういうとき、空間魔法は本当に便利だ。


普通なら荷物を背負って歩かなければならないが、俺にはその必要がない。


「よし、これで大丈夫か?」


「はい。だいたい収納しました」


「じゃあ、これも頼む」


ルーナが持ってきたのは、少し変わった形の大きな袋だった。


「これは?」


「アイテムの簡易テントだ。これも収納しておいてくれ」


「テントですか?」


「ああ。水があればシャワーも浴びられるし、ベッドも付いてる」


「えっ、シャワーまであるんですか?」


俺は驚いて袋を見つめた。


見た目は普通の荷物に見えるが、そんな便利な機能があるらしい。


「かなり便利だぞ。少し固いけど、ベッドもある。野宿するよりずっとマシだ」


「そんなものまであるんですね」


「昔、友と一緒に作ったんだよ。かなり便利だけど、一人用だけどな」


「へぇ……師匠が作ったんですか?」


「俺様と友がな。まあ、細かい話はまた今度だ」


ルーナは何でもないように言った。


俺は簡易テントを受け取り、空間魔法に収納した。


昔、誰かと一緒に作ったものか。


ルーナにも、いろいろな過去があるのだろう。


「あと、これも持っていくぞ」


今度は小さな瓶をいくつか取り出した。


中には赤みがかった液体が入っている。


「これは何ですか?」


「回復薬だ。ケガしたとき用にな」


「回復薬? そんな物まで売ってるんですね」


「当たり前だろ。冒険者にとっては必需品みたいなもんだ。傷を治したり、体力を回復させたりできる」


「すごいですね」


「ただし、何でも治るわけじゃねぇぞ。重傷なら効果も限られるし、失った腕が生えてくるような代物じゃない」


「なるほど……」


「今回は少し多めに買っておく。お前が無茶をする可能性もあるからな」


「俺、そんなに無茶しますか?」


「するだろ。自分の実力も分からずに突っ込む奴は、だいたいそう言うんだよ」


「気をつけます……」


ルーナは回復薬を俺に渡した。


俺はそれも空間魔法に収納する。


「師匠、回復薬って自分で作れるんですか?」


「作れるぞ。薬草や魔物の素材を使うんだ」


「そうなんですか!」


「今度、作り方も教えてやるよ。薬草の見分け方も覚えてきただろ?」


「はい。まだ全部は分かりませんけど」


「まあ、少しずつ覚えればいい」


ルーナは腕を組んで、俺の顔を見た。


「それに、今回は俺様も一緒に行く。死ななければ回復魔法も使ってやるよ」


「死ななければって……」


「ははっ! 冗談だよ」


本当に冗談なのだろうか。


この師匠なら、笑いながら言いそうで少し怖い。


「とにかく、無理はするな。ダンジョンは森とは違う。逃げ道が限られることもあるし、奥へ行くほど危険になる」


「分かりました」


「お前はまだ経験が浅い。俺様の指示には従え。勝手な行動はするなよ」


「はい!」


俺は腰の短剣を確認した。


食料、水、着替え、簡易テント、回復薬。


必要なものはすべて空間魔法に収納した。


準備は整った。


「よし、行くぞ!」


ルーナが玄関へ向かう。


俺もその後に続いた。


異世界に来てから、いろいろなことがあった。


言葉も分からず、魔物に追いかけられ、路地裏で途方に暮れていたあの日。


そんな俺が、今では冒険者組合に登録し、魔物を倒し、ダンジョンへ向かおうとしている。


自分でも不思議なくらいだ。


「ケン、何ぼーっとしてやがる。置いてくぞ!」


「あっ、待ってください!」


俺は慌ててルーナの後を追った。


いよいよダンジョンだ。


どんな場所なのか、どんな魔物がいるのか。


不安もあるが、それ以上に楽しみだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。