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イケメンパラダイスへ召喚されたけど、あたしは暗黒邪神でした  作者: 柴野独楽


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第3章 愛と復讐の暗黒邪神ザドレア! 1

     1

 「……ハムンザの砦を跡形なく破壊し、ショターニキ魔法師団を残らず捕らえてから半月の後。魔法師団以外に戦力を持たぬショターニキ連合国をやすやすと平らげた我らが暗黒邪神ザドレア様は、お疲れになった御身をしばし休めんがため、帝都ブサを離れ、帝国北方の山中にあるザドレア教総本山「ドブース神殿」へと鎮座なさった。そこで、やがてきたる次への戦いに備え、英気を養う日々を送っておられたのである……」

   ――初代暗黒大神官ズィーロ著『ウォマイラ帝国正史』大五巻第二章「つかの間の安息」より――


 「ちょっと、アンタたち!これ一体どういうことだよ!」

久しぶりに例の鎧をがっちり着込んだあたしは、ダンダン足音を鳴らしつつ「祈りの間」へと侵入すると、開口一番そう叫んだ。

 と、祭壇の前に跪き、一身に祈りを捧げているズィーロたち顔面凶器三人組が、あわてた様子で一斉に振り向く。

「イ・ケメン・ガイル・ゾー。これはこれはザドレア様、お呼びいただければ、我らのほうからまいりましたものを」

「イ・ケメン・ダ・ゾー。下賤なる我らのためにご足労いただき、ありがとうございます」

「イ・ケメン・ダ・ゾー。卑俗なる我らのためにお手を煩わせてしまいましたこと、深くお詫びいたします」

「して、今回はどのようなご用件でしょうか?」

 即座に祭壇からあたしへ向き直った三人は、両腕を高くかかげ、深々とお辞儀する。が、そんな見せかけだけの礼儀正しさにいつまでもだまされているほど、あたしもバカじゃない。

「呼びつけたところで、あんた方、飢餓に苦しむ民のため食糧調達計画を練らねばとか、接収した神殿の補修計画のため職人と打ち合わせをしなければとか、適当な言い訳ばっかりして、ちっとも来やしないじゃん!」

「それはその、我らにも責務がございますゆえに、いきなりお声をかけていただいても、なかなか……」

「即座に御許へ参上いたしたいのはやまやまなのですが、迷える民を導くことこそ最優先でございますので」

「ええ、ですから、まことに申し訳ございませんが、事前にアポを取っていただければと」

「……今日アポ取ったとして、いつ頃話せるのさ?」

「そうですな、万難を排し、決死の覚悟で積み重なった諸事を片付けるとしまして……」

「不眠不休で、犬馬のごとく働き続けたといたしまして……」

「一月……いえ、二月ほど後には、御許に参上する栄誉をいただけますかと」

 しれっとした顔でバカなことを言い出す三人の前で、あたしは激しく首を横に振った。

「いやいやいやいや、ありえんでしょ!なに二ヶ月って!ひょっとしてアンタたち、あたしを避けてるの?ねえ!」

 そう言うと、三人は揃って、目を大きく見開き、大慌てで両手を大きく振り動かす。

「いいいいいいえいえ、ザドレア様をささささささ避けるなど、そそそそんな……」

「そそそそそそそうでございますよ、まままままた面倒なこと言われるのがいやだから、さささささ避けてるなんて、そんなことは……」

「いいいいいからおとなしく部屋でじっとしてろなんて、けけけけけ決してそのようなこと考えてなど……」

「じゃあ、なんだって、ただあたしの部屋に来るだけなのにそんな後になんのよ!こんな石の像に祈る時間はあるくせに!」

 祭壇を仰ぎ見ると、そこには、高さ5メートルは優にある『暗黒邪神ザドレア像』がそびえ立っている(さすが、ザドレア教総本山の正神殿だけあって、巨大なくせにめっちゃリアルな、ものすごく良くできた像ではある)。けれど、どうせリアルに造るなら、ちょっとは神々しい姿に知りゃいいのに、これがまあ、デブでニキビだらけでその上短足胴長で、あたしとは全く似ても似つかないブサイクな像なのである。

「そそそそれはその、邪神様に祈りを捧げるのは、我らに課せられた崇高な義務の一つでございますし」

「我らが毎日祈りを捧げることで、民の見本とならなければなりませんし」

「それになにより、石像はわがまま極まりない文句をギャーギャー並べ立てたりしま……ムゴガモムエムワヌ……」

 しれっと余計なことを言うイナーチャの口を、ズィーロとヤムザの二人が慌てて覆い、ついでに鼻まで押さえられたせいでもがき苦しむイナーチャを尻目に、こちらへ困ったような愛想笑いを送りつける。

 その様子をむっつり顔で眺めていたあたしは、おもむろに首を左右に傾けてコキコキとならすと、足を開いて腰を落とし、ぐっと拳を固めた。

「あっ!ザドレア様、暴力はいけません、暴力は!」

「そうですよザドレア様、それに、我らウォマイラに向かっての力の顕現は、聖なる契約にて禁じられております!ですから、どれほど拳を振るわれたところで、どうせ我らに当たることは……」

「今まで散々試したから、アンタ方を殴ったり蹴ったりできないのは分かってる。けどさ、それ以外のものなら破壊できるよね?例えば、あのムカつく邪神像とか」

「おおおおおおやめください!あれは、500年前、ザドレア様が前回降臨なさった時のお姿を映して造られ、以来連綿と民の信仰を集めてきた、由緒ある神像なのです!」

「そうですよ!せっかくあんなに本物そっくりにできてますのに!」

「どこが本物そっくりやねん!あたし、あんなデブでニキビだらけでシガラキダヌキみたいな体形ちゃうわ!」

「いやいや、なにを言うてますねん!誰がどう見ても生き写しでんがな!」

「ふざけんな!あんなんちゃう言うてるやろ!ああ、もう頭きた!ぜってー壊す!あんなしょーもないもん、絶対ぶっ壊したる!」

 怒りのあまり、思わず普段使っていた言葉とは違う、しかし、どこか妙に聞き覚えのある言語で――後でイナーチャに確認したところ、その言葉はウォマイラ帝国西方にある「カ・ンサイ」と呼ばれる地方独特のものらしい――叫び、祭壇の台座に跳び上がって正拳をたたき込もうとしたところで、ズィーロとヤムザに抱きつかれてしまい、わちゃわちゃともみ合いなどしているうち、とうとう、ズィーロが叫んだ。

「分かりました、分かりましたから!これからはなにを差し置いてもザドレア様のお呼びとあれば即座に御許へ駆けつけます!ですから、どうか、どうかおやめください!」

「本当だな!?」

「ええ、間違いなく!確かに!」

「よし、じゃあ、今回だけは特別に思いとどまってやる」

「ああああありがとうございます!」

「ただし、今回だけだぞ!もしも次、ムカつくことを言ったりしたりしたら……」

「は、ははあああああっ!肝に銘じましてございます!」

「お慈悲をたれていただき、まことに、まことにありがとうございます!」

「お慈悲をたれてって、なんかやな言い方。ヨダレたれたみたいじゃん……」

 なおもブツブツ言いながらも、あたしは握った拳から力を抜き、不承不承祭壇から床へと飛び下りた。

 と、そこへ。

「あの、ザドレア様。それで……今回はどのような御用向きで、わざわざこちらまで行幸いただけたのでしょうか?」

 ズィーロがおそるおそる尋ね、ようやくあたしは、ここへ来た目的を思い出した。

「そうそう、それ!なんなの、これは、一体!」

 ズィーロたちともみ合っている時に無我夢中で放り投げていたのを、いつの間にか拾い上げ、抱え込んでいたイナーチャから、それ――分厚い一冊の本を奪い取ると、あたしは、改めてズィーロにつきつけた。

「これは……『ウォマイラ帝国正史』ではありませんか」

「帝国の未来を背負って立つ子供たちにザドレア様の偉業を知らしめるため、ズィーロ様おん自ら編纂しておられる、ありがたき書物」

「まだ見ぬ将来の逸材にザドレア様の覇業を教え広めるため、暗黒大神官おん自ら執筆しておられる、帝国の至宝」

 ズィーロの背後に並び立ったヤムザとイナーチャが「美形の双子にしか許されない掛け合いの口上」を謳うように述べくさる(超絶美形のイケメン様か、いたいけな美少女の双子にしか許されない行動を、超のつくブサメン二人が大真面目でしでかしてしまうそのツラの皮の厚さに、あたしは思わず顔つきが険しくなった)。

「今朝も、子供たちに読み聞かせるべく、新たなる偉大な奇跡について一章を書き上げたところでございますが……これが、どうかいたしましたか?」

 なにをいらついているのか全く分からない、といわんばかりの顔でそう尋ねるズィーロに、あたしは腕組みしたままイライラと指を動かしつつ、

「その最後の章だよ!ちょっと読んでみろよ!」

と促す。

 怪訝な顔でうなずいた暗黒大神官は、大層な装丁のでかい本をがばっと開くと、

『暗黒邪神再臨の部第二章、シューカイの砦にて行われたる奇跡……その日、我らが偉大なるザドレア様、我らが民の困窮を救わんとするため、ついにショターニキ討伐をご決心、その尊いおみ足を西へとお運びになった。さすれどその地にいたる道の半ばに立ちはだかるはシューカイの砦、かねてより冷酷無比の奴ばらに占拠されし難攻不落の要害なり。飢えかつえし我ら、奇跡を望み、神の尊い御名を唱え、輝けるおみ足にすがりて奇跡を乞う……』

「もっと先!ハムンザの砦を壊すところ!」

「は、はい……『おお、ショターニキの邪悪なる魔法師ども、卑劣なる計略にて、我らが尊きザドレア神をたばかり、絡め取る。されど比類なく尊きザドレア神、その時やおら身にまといたる衣を大いなる姿へと変え、深遠なるその玉体の奥深くより発する玄妙なる腹の音を、高らかに響かせたり!おお、見よ、妙なる腹の音、たちまちにして憎き魔法師どもを枯れ葉のごとく吹き散らし、そびえ立つシューカイの砦を灰燼と化す!かくして我らが道は開かれたり!おお、げに偉大なるは、尊き邪神の苛烈なる腹の音!おお民よ、神を恐れよ、その腹の音を恐れよ!その名をあがめ、新たに顕現されし御力を深く胸に刻み、広く皆に伝え、子々孫々まで語り継ぐべし……』」

 余韻を楽しんむかのようにうっとりと目をつぶるズィーロ。その後ろで、ヤムザとイナーチャも、うんうんと何度も深くうなずいている。

「何度お聞きしても、素晴らしい名文でございますね、暗黒大神官様!」

「ええ、ええ、まさにヤムザ殿のおっしゃる通り!威厳と畏怖に満ちた内容が格調高き調べにて朗々と語られ、その迫力たるや、まさにその場に居合わせているかのよう!さすが暗黒大神官様、帝国の至宝ともいうべき文章でございます!」

「いやいや、なにを申す!久々に神の奇跡の顕現をしかとこの目で見届ける幸運に浴したゆえに、思わず羽ペンを持つ手に力が入ったのは間違いないがな。それも全てはザドレア様のお導き!もし我が文に力が宿ったとすれば、それは、かの奇跡がそれほどまでに印象深ければこそ!まことに全ては、ザドレア様の比類なき慈悲によって産み出された……」

「ふざけんな、なにが慈悲だ、冗談じゃないよ!」

「……は?」

 夢から覚めたような顔でこちらを見るズィーロを、あたしは仁王立ちでにらみつけた。「なんだよ、この『腹の音を、高らかに響かせた』って!しかも、『魔法師どもを枯れ葉のごとく吹き散らし』『砦を灰燼と化した』って!これじゃ、あたしの腹の音が一体どれほどでかかったんだって思われるじゃん!」

「え、でも、実際ものすごい音量でしたから」

「あまりにすごい音でしたので、耳が破れるかと思いました」

「あれを直接喰らった連中、全員吹き飛ばされ、気絶してましたからね!さすが、邪神様はその腹の音まで我々とは違っていらっしゃいます!」

「そのこと、そのこと!あれぞ、我らが暗黒邪神の偉大なる御業!不幸にしてあの場に居合わせなかったあらゆるウォマイラびとに、我らを加護する神がどれほど偉大なる存在であるかあまねく伝え、この先生まれ出てくる我らが子孫たちにも永遠に語り継いでいくことこそ、私の使命。そう思い定め、このズィーロ、神より授けられた叡智の全ての傾け、かの文章をしたためたのでございます!てっきりわたくし、ザドレア様からはお褒めの言葉をいただけるものとばかり……」

「褒めるわけないだろ!ヒトを吹き飛ばし、砦をぶっ壊すほどの腹の音って!そんなどでかい腹の音が出るって、どれほど意地汚い、賤しいヤツだったんだろうって思われるじゃん!こんなにいたいけな、ただのJKなのに!」

 あたしが両手で頬を押さえつつそう言うと、三人は揃って目を皿のように丸くし、

「いたいけ!」

 これほど不似合いな言葉が、あたしの口から出るとは思わなかった、といわんばかりの口調で、そう叫んだ。

 しかも、中でもイナーチャときたら、生真面目かつ、この上なく誠意のこもった声で、「いやいやいやいや!いたいけどころか、邪神のイメージそのまま、賤しくて意地汚くて、大喰らいで……」

 などと、言いたい放題。

 あまりに頭にきたあたしは、

「やっぱり壊す!邪神像と、ついでにこの神殿までぶっ壊す!」

 言うが早いか、くるりとヤツらに背を向けて祭壇に向き直り、神殿の天井を支えている円柱の基部を、えい、と軽く揺さぶる。

 ゴゴゴゴ……。

 地震の前兆のような低音が腹にしみとおると同時に、天井からばらばらと小石やホコリが舞い落ちてきた。

「ああああっ!も、申し訳ございませんザドレア様!どうか、どうかお怒りをお鎮めください!」

「も、申し訳ありませんでした!どうか、モノに、神殿に八つ当たりするのだけはおやめください!」

「すいませんでした!調子に乗りすぎました!もう二度といたしません!ですから、どうかお怒りをお鎮めください!」

 大慌てに慌てた三人があたしの足下に膝立ちになり、頭上に振り上げた両手を振り下ろすと同時に地面にひれ伏すという、最高級の敬意を表すポーズを繰り返す。

「ズィーロ!アンタの書いてる歴史書から『あたしの腹の音で魔法師が吹っ飛んで気絶した』だの『腹の音で砦が木っ端みじんになった』みたいな表現は一切なくすこと!『いたいけな女神様が今にもその命を落としそうになった時、どこからか奇跡を起こす一陣の風が吹き、その芳醇な香りに触れた魔法師たちは音もなく眠り込み、砦はその扉を自然に開いた』とかなんとか、なんだかよく分からないけどカッコイイ奇跡が起こって助かった、的なかたちに直す!分かった?」

 と、その言葉を耳にした途端、三人は眉をハの字にし、唇をとがらせて、駄々っ子そのままの顔になった。

「ええ~~~~!歴史書なのにい、わざと嘘を書くっていうのはどうなんですかねェ~」

「ですよねェ~。ありのままの真実を後世に伝えることが大事なのにい、取り繕ったって丸わかりの大嘘を伝えるのはねェ~」

「いかにザドレア様がおそろしい邪神で、暗黒の心をお持ちだったのか、しっかり伝わらないんじゃ、意味ないんじゃないですかねェ~」

 三人が次々に口にする文句を笑顔で、いちいちうなずきながら聞いた後、あたしはやおら眉をつり上げ、再びくるりと奴らに背を向けると、さっきよりほんのちょっとだけ強めに台座を押した。

 ゴウン!とはらわたにしみ通る音がしたかと思うと、床に地割れが走り、バキバキバキッという音とともに、激しく天井から土くれが落下する。そして、ピシ、という鋭い音が響き、邪神像のニキビ面に大きなひび割れが走った。

「ああああああああっ!も、申し訳ございませんでしたああ!!仰せのままに、仰せのままにいたしますから、どうか、どうかああああっ!」

「わたくしがまちがっておりましたああああ!心より反省いたしますうううう!ですからどうか、どうかお怒りをお鎮めくださいいいい!」

「二度と!二度と逆らったりいたしませんんんん!ですからどうか!どうかこれ以上の破壊だけはおやめくださいいいい!」

 悲鳴交じりの声を上げ、先ほどよりもさらに激しく、頭を床にゴンゴンたたきつける勢いで、三人がぺこぺこ跪拝し始めたのを見計らって、あたしはゆっくり台座から手を放した。

「よおおおおし。今回だけは、その必死さに免じ、許してつかわす。おのれが口にした言葉を、ゆめゆめ忘れぬように!」

「は、ははあ!」

「では、早速歴史書の書き直し作業に入るがよい!」

「ははああああ!」

 最後にもう一度深々と頭を下げると、三人はそそくさと立ち上がり、あたしの前から姿を消した。

 パタパタと足早に奴らの足音が遠ざかり、消えていくのを確かめたところで、あたしはやれやれ、とため息を一つつくと、

「鎧、もういいよ」

と命ずる。

 するとあら不思議、鎧はするりと体から外れ、がちゃがちゃと騒々しい音を立てながら、邪神像の足元にしつらえられた台座の上に鎮座する。その上に、どこからともなく現れた兜がガチャンとはまり、邪神の象徴たる暗黒の生きた防具は、浅い眠りについた(ズィーロの話によれば、たとえ身につけていなくとも、もしもあたしに危険が迫るようなことがあれば、鎧は即座に覚醒し、主人の身を守るべく勝手に装着するのだそうだ。頼もしいといえば頼もしいけど、うざったいといえば、かなりうざったい)。

 後に残された「生身のあたし」は、漆黒の長衣を太ももまでたくし上げ、生足丸出し、パンツ丸見えになるのも構わず、その場にどっこいしょと腰をおろし、あぐらをかいた。

「あ~あ、吸ったことないけど、たばこでも吸いたい気分だよ、ったく!あいつら、ちょっと目を離すと、すぐいい気になりやがるんだから。ブサイクのくせに、何様のつもりなんだか……」

 ごしごしと頬をなでながらぶつくさ独り言を言っていると、そこに、(あたしと違って本当に)いたいけでかわいらしい声が背後から響いた。

「ザドレア様。どうか、大神官様たちをお許しくださいまし。ちょっと行きすぎのところはございますが、ザドレア様のため、そしてウォマイラの民のためだけを思っている、素晴らしい方たちなのです」

 いけね、一般信者にこんなだらしないとこ見られたら、さすがに神サマとして気まずい!

 あたしははっと背筋を伸ばして大慌てで服を直すと、「慈愛の心に満ちた情け深い神様ですよ」的な作り笑いを頬に浮かべ、ゆっくりと振り向く。

 と、そこには、濃い栗色の髪を胸まで伸ばした愛くるしい顔立ちの少女が――すげー残念なことに、やっぱり顔色は緑なんだけど――ちょっと困ったような笑顔を浮かべ、立っていた。

「なんだ。誰かと思ったら、ハシカじゃん。びっくりさせないでよね~」

 たちまち、あたしの顔からこわばった笑みが消え、代わりにいつものお茶目で愛くるしい笑顔が――誰だ、今噴き出したヤツは!――もどったのだった。




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