第3章 愛と復讐の暗黒邪神ザドレア! 2-3
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ハシカは、あたしの世話係の一人だ。
この世界に呼ばれてからしばらくの間、あたしの身の回りの世話は、さっきのへっぽこ三人組がやってくれてた。だけど、あんなヤツらでも、一応国の中ではえらい立場らしく、なにかというと祈りだ集会だ会議だ所用だとあちこちに呼ばれては出かけていくので――ひょっとすると、あたしと顔を合わせたくないばかりに、そうやって言い訳して近寄らないようにしてただけかもしんないけど――そのたび、あたしは放っておかれることになる。しかも、いたらいたで、あたしの脱いだばかりのパンツをうひうひ言いながら、時々匂いを嗅ぎながら洗濯してたり、ゴミと食べ残しと脱ぎ捨てた服とが散乱してる部屋の真ん中で寝っ転がり、ゴミの中に鼻を突っ込んでぐふぐふ笑ってたりする。どっちも、あたしを「神として」恋い慕っているがゆえの行動だ、ってヤツらは言い張るんだけど、あたしにしたら、目の前でド変態な行為を見せつけられているようで、気持ち悪いったらない。
ということで、渋るポンコツ三人組を説き伏せ、神殿に使える女官の中から、特に信仰厚く、信頼できる数人を選び出し、身の回りの世話をしてもらうことになったのだ。
一体どんな子がやってくんのかな、仲良くなれるといいな、楽しみ……。
なんて思いつつ、あたしはワクワク気分で待ってたんだけど……数日後、ヤムザに率いいられてやってきた女官たちときたらまあ、それはそれは「ものすごい逸材」ばかりだったのである。
「ザドレア様。お待たせいたしました。ようやくザドレア様のお世話をさせていただく者たちが決まりましたので、ご紹介させていただきます。こちらが女官長のモリサ、こちらが副長の聖ジノヒとボルジュ、そしてバルヤ、ユニバ、ユリヤ……」
ずらりと一列に並んだ女の子たちを眺め、思わずあたしは、「お、おう……」とつぶやきそうになった。
正直言って、あたしもそれほど自分に自信はない。手足は太くて短めだしニキビはあるし顔は大きめだし眉は太いし一重だし口はでかい(誰だ、真顔でウンウンうなずいてるのは!)。目の前にでんと鎮座してる神像ほどブッサイクじゃないものの、「カワイイ」「キレイ」とちやほやされたりなんて夢のまた夢、せいぜいモブとして地味なオタク活動にいそしむのがお似合い、ってレベルなことは、自分でも重々分かっている。
けれど、そこに並んだ世話係たちときたら、そんなレベルのあたしからみても「これは、ちょっとアレなんじゃない?」といいたくなるぐらいのツワモノ揃いだったのだ。
えーと、これ、本当に世話係の人選?リアルお化け屋敷のキャストとか、ホラー映画の出演者たちじゃなくて?マジヤバいんだけど……。
さすがはウォマイラの上流家庭に生まれた、エリート中のエリート子女、ただでさえ濃いエキスがさらに濃縮されるとこんな風になるんだ、本当に遺伝子の力ってむご……すごいわと、ある意味感心ながら順々に世話係を眺めていくと、列の一番端に、ややうつむき、肩をすぼませるようにして、小柄な女の子が立っていた。
すっきりストレートの栗色ロングヘアーで、前髪は眉の長さに切りそろえ、その下にちょうどいい太さの眉毛。目はぱっちりと大きく二重で、鼻筋はすっきり通り、その下に、形のいい唇。
ややふとましい感じはあるものの、それを補ってあまりあるかわいさ、美しさを兼ね備えた、肌色が緑色であること以外文句のつけようがないぐらいの美少女が、そこに立っていた。
「……そして、最後に立っておりますのがハシカ。以上の者たちが、これより身の回りのお世話をさせていただきます。ザドレア様、どうかよろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします!」
一斉に声を揃えて頭を下げる女の子たちに、
「あ、はいはい、」よろしくね~」
と上の空で返事を返しながら、あたしはじっと、ハシカだけを見つめていたのである。
はっきり言うが、あたしはイケメンが好きだ。
たとえどんなにお腹が空いて、餓死寸前だったとしても、喉が渇きに渇いて、干からびそうになっていたとしても、イケメン様さえそばにいれば、そんな自分の状況なんか全て忘れて、何時間でもじっと見ていられる。お腹を壊して今にも暴発しそうな時とか、○タバのフラ○チーノ飲み過ぎで今すぐトイレに行かないとヤバいって時でも、横をイケメン様が通り過ぎれば、必ず立ち止まってその尊いお姿が見えなくなるまでうっとりとお見送りする。イケメン様はあたしの生きる糧で、エネルギーの源で、自分の命よりも大切な宝物。それぐらい、イケメンが好きだ。
けど、じゃあ、そのイケメンの次に大切なものは、と聞かれれば、カワイイ女の子になる。
イケメン様からはだいぶ「好き」レベルは落ちるけれど、カワイイもの、美しいもの全般が好きなあたしとしては、フ○ペチーノやか○あげクン、じゃが○こやアップルパイを僅差で押さえ、やはり2位は、カワイイ女の子。身の回りにカワイイ女の子がいれば、できれば友達になりたいと思うし、なにか頼まれたりすれば、負担にならない限りで役立ってあげたいと思う……それぐらいには好きだ。
ということで、紹介されたその日から、ハシカはあたしの一番のお気に入りとなり、2週間を一緒に過ごした今となっては、もはや「親友」と言ってもいいぐらい、お互いのことを仲良く話す間柄になっていたのである。
3
「ああ~、朝からちょっとひと暴れしたら、なんか疲れちゃったな……もう一回寝ようかな」
神殿に入ってきた相手がハシカだったと分かり、気がゆるんだあたしは、再びパンツ丸出しであぐらをかくと、大きく伸びをした。
と、そこへ、驚き慌てたハシカの声が飛んでくる。
「ザドレア様!まだ夜着をお召しのままだったのでございますか!?」
「え?ああ、そうだね。朝起きてすぐに『正史』を朗読する声が聞こえて、それですぐに部屋から出たから。ま、でもいいじゃん、どうせ上に鎧着てたし」
当然のようにそう答えると、ハシカは、心の底からがっかりした、と言わんばかりの口調になった。
「ザドレア様。いくらザドレア様がお美しく、そのご威光はまぶしくきらめくほどであるとはいえ、寝間着のままでいつまでもお過ごしになるのはいかがなものかと。なにかの拍子に、鎧の隙間からザドレア様の尊いお姿がちらりと見えた、その時のお召し物があろうことか夜着であった、などということになりましたら、ザドレア様のご威光に傷がつきます。そうなれば、あまりの申し訳なさに、わたくしはもちろん、お世話係全員、神殿で自害しなければ……」
「あ~、はいはいはいはい!分かった、分かりました!アンタたちときたら、たかが着替えひとつで本当におおげさなんだから!着替えますよ、着替えればいいんでしょ!」
「ありがとうございます!」
「着替えるからさ、その代わり、ちょっと教えてよ。ね、昨日もお会いしたんでしょ、牢の中のイケメン様に。それで……どうだったの?」
「どうって……なにもございません。ただ、あの方たちにお飲み物をお持ちしただけですから」
「ほんとに?」
「ええ、本当でございます……ただ」
「ただ?」
「その……牢内の方々に順々にお飲み物を手渡していったのでございますが、最後に、あの方にグラスを手渡した時、そっと、わたくしの手を包むようにしてグラスを受け取られて……」
「ほうほうほうほう!それで?それで?」
「はっとしたわたくしの目をじっと見つめられ……ただ一言、「ありがとう」と」
頬を染め、うつむき加減に話すハシカのその言葉を聞いて、あたしは思わず、「く~~~~~っ!」と身もだえしながら、神殿の床をダンダン踏みしめていた。
「いけませんザドレア様!今はお着替えの最中でございます!そんなに暴れられては、下穿きの下から、この上なく尊いぎ、ぎ、玉体が……」
恥じらいながらも大慌てで悲鳴を上げるハシカ。その声にあたしははっと我に返り、おお、そうだった、今は着替えの最中だった、いけねえいけねえ、パンツずれた、これじゃ中身が丸見えだよ、ガハハ、なんてオッサンそのもののように思いつつ、慌てて半分ずり落ちたパンツをはき直し、手早く着替えを済ませた。
それから、あたしのそんなげひ……豪快な姿に驚いたのか、目を丸くしているハシカをまたじっと見つめる。そしておもむろにもう一度、「く~~~~~っ!」と奇声を発し、ダンダンと地面を踏みしめた。
「手と手が触れ合って、見つめ合って、それで、『ありがとう』?いいな~~~~~!純愛じゃん!」
「いえ、そんな……ただ、あの方が言葉をかけてくださったのが嬉しくて……」
「く~~~~~っ!そのリアクション!恋する乙女じゃん!いいな~~~~~っ!」
イケメンと美女の絵に描いたような初恋物語に、否応なくあたしのトキメキとドキドキは高まり、ふんがふんがと鼻息荒くつきながら、今度はどかどかと両足で床を踏みつけないではいられなくなる。
そんなあたしを嬉しげに見つめながら、ハシカはなおもうっとりとした様子で、自分がひそかに恋してる相手……リューノ様について、熱く話してくれるのである。
これが、あたしがハシカをかわいがるもう一つの理由だった。
つまり、ハシカは、カワイイだけでなく、イケメン好き、という点で、ぴったりあたしと趣味が合ったのだ。
世話係の子らがやってきたはじめの頃は、一応あたしも、みんなと仲良くなろうと思って――男子は「イケメンに限る」だけど、女子については、そこまで厳しいことを言うつもりはないし、それまでずっと、話し相手といえばへっぽこ三人組しかおらず、女子トークに飢えていたってこともあって――まあ、結局はヒマで退屈だった、ってことなんだけど――重たそうな体をのたのたと動かし、あたしの部屋を片付けたり掃除したりしてくれている子らに、自分からいろいろ話しかけたりしていた。
けれど、まあ、なんというか、ハシカ以外の女の子たちとは、頭のてっぺんからつま先まで、まるっきり話が合わない。
女子トークといえば恋バナ、ひょっとしたら中にあたしと同じ、イケメン命のヲタ属性強い子がいるかも、と思って、仕事が一段落したところを見計らって、「ねえねえ、アンタたちも、だれかな好きなヒトとかいたりするの?」と、とりあえずそこにいた子達に話を振ってみたことがある。
と。一瞬彼女たちは顔を見合わせ、その後、にたあ~っと笑った。
その顔ときたらもう、和製サイコホラーゲームに出てくるぬるぬるべっちゃりなモンスターそっくりで、あたしは思わず、
うわ、きっしょ!
と、二、三歩後ずさりしてしまった。
けれど、怪異どもときたら、そんなあたしのリアクションにちっとも気づかない。どころか、
「ええ~、好ぎなひどでずがぁ~」
ねっとり鼻にかかった声で、その中の一人、バルヤがでかい体をくねくねさせやがるのである。
いや、アンタがそんな風にはにかんでも全然かわいくない、むしろ気味悪さが増すばかりだって!お願いだから、もう少し自分を知ってくれよ、と真顔で言いたいところだったけど……それより早く、
「バルヤはねえ~、ずっと昔から、好きな人がいるんですよお~」
と、いつの間にか、あたしの背後に忍び寄っていたユリヤが、耳元でそっとささやく。
ひいっ!
思ってもみなかった至近距離から気味悪いトーンの声を浴びせられ、あたしは思わず凍りついたように硬直した。
けれど、魑魅魍魎どもはやはり、あたしのそんな反応にも一切気がつかず、
「ぢょっど、やだ、どうじで言っぢゃうの゛よ~!も゛う゛やだ~」
バルヤはますますクネクネし、
「なんでえ、いいじゃん~!」
ユリヤはヒッヒッヒッと、この上なく薄気味悪い笑い声を立てる。
そうだ、このスキにそうっとこの場を逃げ出せば助かるんじゃないかな、と一縷の願いを胸に、そうっと後方に一歩後ずさったその時。ユリヤがいきなり、ものすごい速さでこちらを振り向き、狂気をはらんだ笑顔で、かっとあたしをにらみ据えた。
やめて、呪わないで!
思わず両腕を顔の前に突き出し、身を縮めて座り込む。そのあたしに向かってユリヤは、ずざりずざりと近づき、再びすぐ真横にまで顔を寄せると、
「ザドレア様。バルヤはねえ、ずっと昔から、イナーチャ様がだあい好きなんですよお~イーッヒッヒッヒッヒッヒ……!」
そうささやいたのだ。
「やーだ、ユリヤっだら゛、どう゛じでい゛っぢゃう゛の゛~!ザドレアざま゛もやだあ~……ぞう゛い゛う゛ユリヤだっで、ヤムザ様の大ファンな゛ぐぜに゛~!」
「あたしは、ただ遠くからあこがれているだけでえ、バルヤみたいに手編みのセータープレゼントしたりしないもの~!」
「ち゛がう゛の゛!あ゛れはあ……」
ラスボスレベルのモンスター二人がギョフギョフわらいながらブサメンへの愛を語り合うという、煉獄レベルの責め苦が続く中、あたしはどうかお願いですからこのおそろしい時間が早く過ぎてくれますようにと――そして、どうかあまりの怖ろしさにもらしたりしませんようにと、ひたすら祈り続けることしかできなかった。
ところが……神は、あたしの願いを聞き届けるどころか、更なるおどろおどろしい辛苦を味あわせる(誰だよ、暗黒邪神のあたしにこんなひどい天罰当てるいけ好かない神は!)。
「さあさあ、二人とも。いつまで油を売っているのです?そんな調子では、部屋の掃除が終わる前に日が暮れてしまいますよ?」
バルヤ、ユリヤをさらに超える顔面インパクトと体重の持ち主にして、女官たちの副リーダー、20代の若さにして聖者に認定された超優秀な女神官であり、体重も迫力も顔面偏差値も桁外れの聖ジノヒが、地響きを立てながら来襲したのである。
うお……間近で見ると、こいつあ、一段とすごいわ……夜中、暗い廊下で出くわしたら、間違いなく死を覚悟するな……本当に、どこの煉獄からわき出たはいよるこんとんだよ……。
彼女のあまりの迫力に、あたしはまじろぎ一つすることができず、ひたすらその姿をじっと見つめ続けることしかできない。
いやほんま、見れば見るほど、ものすごいわ……あたしよかよっぽど暗黒邪神向きだよね、この人。てか、もういっそ代わってくんない?その方が信者も納得するって、きっと……。
もういっそ、そう言ってやりたいぐらいの一人百鬼夜行ぶりなのだが、本人はどうも、自分をこの上なく凜として上品なイケてる女だと思いっきり勘違いしているらしく、あたしに向かってこの上なくしとやかに一礼すると、その眉をきゅっとひそめて、恋バナにうち興じていた二人をきっと叱りつけるのである。
「ほらほら、早くその尻を持ち上げて。教典にもありますでしょ、労働の美徳を知るものは自ずからその内面が光り輝く。あなたたちも今以上に美しくなって意中の殿方を振り向かせたいのなら、つまらない話ばかりしてないで、まずはしっかり仕事をこなさないとね」
「えー、づま゛ら゛な゛い゛話っで、びどい゛でずよ゛お、聖ジノ゛ビ様~!」
「そうですよお、女にとって、どの殿方がいいかって話は、すごく大事じゃないですかあ~!」
「ええ、ええ、そういう話が大事なのは分かりますよ。でも、時と場所を心得なければなりません。第一、好きな人への思いは、誰にも言わず、大事に胸に秘めておくものでしょ?やたらに人に話したりしては、純な思いが汚れてしまいますわよ?」
おお、なんとピュアで美しい恋愛観!……けど、カタストロフィレベルの害獣であるアンタがそれを言うか?
「ぞん゛な゛の゛、古い゛でずよ゛お~!」
「そうですよお!みんなで恋バナするの、楽しいじゃないですかあ!噂で聞いたんですけど、聖ジノヒ様も、昔からずっと……」
「え゛え゛、な゛に゛ぞれ゛、聞ぎだい゛!教え゛でぐだざい゛よ゛、聖ジノ゛ビ様~!」
と、太い体をぶおんぶおん振り回しておねだりする二人にむかって、聖ジノヒはいかにも「大人の女」めいた余裕あふれる苦笑を、ふっと浮かべてみせた。
「いいですか、二人とも。あの方と私との関係は、そんなんじゃないの。好きとか嫌いとか、そういったうわついた気持ちじゃなくて……」
「じゃあ、どういう関係なんですか?」
「なんて言ったらいいのか……お互いに崇高な使命があって、その使命を果たすべく、全身全霊を打ち込んで努力し続ける……その姿を認め合うことから生まれた、互いを尊重し、敬いあう、心の奥深いところでしっかりとつながった、揺るぎない関係……結婚とか、恋愛とか、そういった約束事なしでも、互いに目と目を見交わすだけで安心できる、安らぎと信頼に満ちた関係なのよ」
あらぬ方を見つめながら、幸福感に満ちた口調で、夢見るように語る聖ジノヒ。その様子を、バルヤとユリヤはあっけにとられた様子でしばらく見つめていたのだが……やがて。
「あのお……お互いに好きとかそういうことは……」
「もちろん、そんな下世話なこと口にしたりしていないわ、あの方も、私も。そういうのは必要ない関係なんだもの」
「あ゛の゛、じゃあ゛、ハグと゛か゛、ヂ、ヂ、ヂューと゛か゛は……」
「目と目とを見交わすだけで気持ちが通じ合うのに、そんなことをする必要があって?」
おそるおそる質問を口にする二人に対し、聖ジノヒは、相変わらず夢見るような口調で答え、その答えを聞くたびに、バルヤもユリヤも、ハニワのような顔になっていく。
「いえ……あの……もしあたしだったら、目と目を見交わすだけとかだと、ちょっと不安になっちゃうかもなあって思って……」
おそるおそるどころか、相手を極力刺激しないよう、この上なくそーっとした口調でユリヤがそう口にすると、聖ジノヒは、人一人ぐらい飲み込めそうなほどに口を大きく横に開け、ぐふぐふ声を立てながら迫力満点の笑みを浮かべた。
「あ~、あなたたちにはまだ分からないか、こういうオ・ト・ナの恋愛は」
そして、ふん、と得意げな鼻息をもらすと、再びあらぬ方を見つめ、
「あなたがおそばにいてくださって、わたくし、本当に幸せですわ、ズィーロ様……」
聞こえるか聞こえないかぐらいのか細い声で、そうささやいたのである。
うわ、キモ!これ、本物だって!本当にヤバいヤツだって!うわ、めっちゃキモ!
ア○ギラスそっくりの宇宙怪獣が「いいオンナ」オーラを出してうっとりつぶやくという、円○プロも真っ青の状況を目の当たりにし、あたしは吐き気を通り越して、ものすごい寒気と頭痛に襲われてしまった。
「あ、あの、ごめん、ちょ……ちょっと気分が……悪いけど皆、部屋から出てってくれる?」
と、それだけを言い残し、帳をくぐって天蓋つきのベッドへどさっと倒れ込む。
おえええ気持ちわるい、もう二度とあいつらに恋バナなんか振らない、うおおおお頭痛い、恋バナどころか普通の話だってしない、があああおぞましい、絶対絶対もう二度と構ったりしない、声もかけない……。
そう固く誓いつつ、ベッドでのたうち回っていたところへやってきて、かいがいしく世話を焼いてくれたのがハシカだったのだ。
以来、あたしはなにかと彼女に話しかけるようになり、彼女があたしと同じイケメン趣味で、しかも、特定のイケメン様に恋までしている、ということが分かってからは、さらにかわいがるようになった。
そして、今ではすっかり、親友同然。あたしの一番のお気に入りで、1日の大部分を一緒に過ごす間柄にまでなったのである。
「いや、それにしても本当によかった、ハシカがいてくれて。見るだけでMP削られるツラばかりが並んでる中、アンタを見るだけで癒やされるし」
今日も今日とてあたしがしみじみそう言うと、ハシカはうつむいて固くなる。
「そんな、もったいない!私など、他の方々に比べれば……」
「いやいやいやいや、比べものにならないどころか、そもそも勝負にすらなんないから!天使とガマガエルとか、ヴィーナスとヘドロ並べてどっちがきれいって言ってるようなもん!比べること自体が失礼だよ!」
「そんな……」
ひたすら身を縮めて恐縮するハシカ。その彼女の背中をバシバシ叩きつつ、
「いいわー!カワイイだけじゃなくてそんなふうに慎み深いからこそ、イケメン様にも好かれるんだよ!いやほんま、うらやましいわ~!あたしもそういう恋をしたいよ、チクショウ!」
そんなことを言って一人もだえた後、あたしはにたりと笑い、
「で?さっきも、行ってきたんでしょ、地下牢。どうだった、アンタの愛しの君は?」
などと、頬を染めて照れまくるハシカを、根ほり葉ほり、じっくり質問攻めにする。
こうして今日も、あたしの平穏な午後はゆっくりと過ぎていくのである。




