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イケメンパラダイスへ召喚されたけど、あたしは暗黒邪神でした  作者: 柴野独楽


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第4章 逆襲の暗黒邪神ザドレア! 5-6

     5

 次の日。またやいのやいの言われるのがイヤなのと、できる限り早くイケメン成分を摂取したいのとで、あたしはまだ星が消え残っている時間帯に、早くも天幕から忍び出た。

 さあーて、そんじゃまた市庁舎まで行って、この世で一番優美で有意義な時間を過ごすとしますかね……。

 早朝の冷たく心地よい空気を思い切り胸に吸い込み、うっとり天を見上げると、紺碧の空を背景にガース様の威厳にあふれた理知的なお顔が、そして続いてメーグル様の精悍な横顔、引き締まった正面顔、時折みせる無邪気な笑顔が、どアップで映し出される。

 後三日で就任式か……苦労した甲斐があった……。

 「推し」が努力と苦労の結果、次第に人気と名声を博し、ついには頂点に立つ。ずっと応援し続けてきたファンとして、これ以上うれしい瞬間はない。がんばっているのに大した成果が上がらず、それでも希望を捨てずに努力し続ける健気な姿をずっと見守り続けるのもいいけど、やっぱり栄光を手にした瞬間の満面の笑顔以上に心にしみるものはない。その瞬間が、今や秒読み段階に入ったのである。

 どうしようかな。就任式は、最初から最後まで絶対見逃せないとして、その前後だよね。できればリハーサルも全部見たいし、式が終わった後の祝賀会とか、その後の挨拶回りも欠かせない……ああ、そうなるともう後半月、いや、ひと月、いやいや半年はここに留まって、ずうっと観察を続けないといけないじゃん!昨日「あと三日」とか言ったけど、後でズィーロたちに「半年草食ってろ」って訂正しとかないと……。

 居留地に滞在している大勢のウォマイラたち――働き者の彼らは、こんな早朝だというのに既に起き出し、仕事へと向かう準備を始めているのだ――から「ザドレア様、なんかヤバい」といわんばかりのうろんな視線を浴びせられているのも気にせず、にへらにへらと笑いながら居留地を離れ、十数人もの城兵が立番をしているイン・ナセ城門へ近づいたところで、あたしは「鎧よ、こい」と半ばうわの空で命じる。

 途端にそれまで聞こえていた木々のざわめきや小鳥のさえずり、そして明るい日の光が全てシャットアウトされ、漆黒の闇と静寂に包まれた中、目の前のモニターだけが明るく浮かび上がる。

 そうなったところで「ステルス発動」とだけつぶやくと、あたしはそのまま、先ほどまでと変わらぬ散歩ペースで、ゆっくりと城門を通り抜け、市庁舎へと向かったのである。


 作戦室にそっと足を踏み入れたところ、残念なことに、主目標のメーグル様が見当たらなかった。が、第二目標のガース様は、こんな時間なのにもう既にいらっしゃって、テーブルに置いた書類を前に、見慣れない男と何やら話し合っておられた。

 ああ、ガース様!今日も相変わらずしぶい横顔でいらっしゃる!お会いできなかった夜の間、どれほどあたしが寂しい思いをしておりましたか……!

 そんな思いを乗せた熱い瞳で、まずは元帥様のご尊顔を穴の空くほどとっくりと見つめ申し上げる(あたしが注視し出したその瞬間から、ガース様、顔のあちこちをしきりにかいたりこすったり、ものすごく落ち着かない様子におなりになっていたようにも見えたけど……まあ気のせいだろう)。

 対座している男は顔にだらしなく肉のついた小太りのオッサンで、あたしのイケメン基準には到底達していない。

 なんだよ、こっちはただモブキャラ、それもかなりウォマイラ寄りかよ!ちっ!しゃあねえ、今朝はとりあえずガース様だけでイケメンエキスを補給するか。ああ、愛しのメーグル様は今一体どちらへいらっしゃるのかしら……。

 早速乙女モードを発動したあたしが明後日の方向へ視線を向け、うっとりと切ない思いを巡らしていた、ちょうどその時、

「……ということですので、メーグル様には式典当日まで出動はお控えいただくということで、よろしゅうございますか?」

と、いきなり愛しの君の名前が耳に入り、おのずとあたしは(それまで完無視していた)男の言葉に耳を傾けていた。

「ふむ、致し方あるまいな、このスケジュールでは出動している暇など取れるはずもない」

「ええ、さようでございます。なにしろ今回の式典、日取りに余裕がございませんので。私もこの打ち合わせが終わりましたら、すぐさま衣装合わせの確認に参りませんと」

「おお、そうか。忙しい思いをさせて申し訳ない」

「なんのなんの。ガース様が将軍になられて以来の、新たなる国民の英雄が誕生するのでございますから、これほど喜ばしいことはございません。あなた様の時同様、こうしてお手伝いができること、まことに身に余る光栄でございます」

「そうか。そういってくれるのならば、実にありがたいことだ」

 話の内容からして、どうやらこのジジ……オジサンは、メーグル様の将軍就任式典をとりしきる責任者であるらしい。

 あ!そんじゃ、このオヤジの後をついていったら、メーグル様のいらっしゃるところにたどり着けるってことじゃん!しかも衣装合わせしてるって言ってたし、うまくすりゃ一足早く愛しいあの御方の晴れ姿を拝見できるかも……!、

 心躍るあまり、打ち合わせなんていいから早くいこうぜ、とあやうくオッサンの肩をぶんぶん揺さぶりそうになるのを、かろうじて我慢する。

「そうそう、それともう一つ確認しておきたかったのですが、あなた様の時と同じく、将軍就任と同時に爵位の授与も行うのでございますね?」

「当然だ。それがしきたりだし、将軍職の権威を盤石のものとするためにも、爵位授与はぜひとも行いたい。それについて、なにか問題でもあるのかな?」

「あ、はあ。メーグル様ご本人が、たいそう嫌がっておいでですので、どうしたものかと」

おそるおそるオッサンがそう打ち明けると、ガース様はしぶい顔になった。

「あやつは、まだそんなことを言ってるのか。爵位といっても単なる形式上のこと、この共和国では貴族といっても名ばかりで、実質平民となにも変わらないのだと、あれほど言って聞かせたのに……」

 貴族!伯爵!さっきから二人がいってる「シャクイジュヨ」って、メーグル様が将軍ばかりか、貴族になるってことなの!

 貴族といえば、きらびやかな服装に優雅な物腰にお屋敷での舞踏会!将軍になるってだけでも大感激なのに、この上「尊さ」の粋を集めた存在であるお貴族様になったメーグル様を、この目で見られるなんて……!

 思ってもみなかった幸福に体を打ち振るわせつつ、あたしは何度も大きくうなずいていた。

 ああ、でも、そうよ!メーグル様のような真面目で有能、情熱的で健気なイケメン様が、いつまでも平民でいるなんてあり得ない!あのにじみ出るような気品、野性味あふれるしなやかなお姿、どれをとっても貴族としてふさわしい!というか、貴族しかあり得ないもの!

 あたしが感激の嵐の中、うっとり立ち尽くしているとも知らず、ガース様たちは淡々と打ち合わせを済ませていく。

「それでは、やはり爵位授与式も行う方向で、よろしいのでございますね?」

「当然だ。あやつには、今後私の右腕として、一軍の指揮をとってもらわなければならぬ。そのためにも、きちんとした身分を与え、あたう限り多くの将兵にその権威をはっきり焼き付けてやらねばならぬのだ」

「とすると、やはり各方面からできる限りの将兵を、ここイン・ナセに集めるのでございますね?」

「うむ。そのための移動命令も、既に通達済みだ。広場に整然と並ぶ各方面軍の前で、名誉伯爵として観兵式を行うとなれば、否応なくその権威はあがる。それと共に、あやつへの民衆の、将兵の尊崇の念もいや増しにますことになる。同時にそれは、あやつに自らの肩に背負わねばならぬ責任がどれほどのものか、はっきり悟らせることにもなろう」

「なるほど。この式典を機に、メーグル様を一気に将軍にふさわしい方へ成長させてしまおうという目論見でございますな」

「そういうことだ。かつての私がそうであったようにな」

「よく分かりました。では、その方向を強く打ち出す形になるよう、式次第をもう一度練り直して参ります」

「よろしく頼む」

「では、私はこれで」

 にっこりと微笑みつつオッサンが立ち上がったところで、ようやくあたしも我に返った。

 そうだ、呆けてる場合じゃない!衣装合わせ!観に行かなきゃ!

 足早に部屋を辞去するオッサンの後を、よだれをぬぐうのも忘れ、慌ててついて行く。

 

 ……後に一人残されたガースは、ソファーに深々と身を静めると

「英雄とは、つらいものだぞ、レイン・メーグル。すまないが、覚悟してくれ……」

 沈痛な顔でそうつぶやいたのだった。



     6

 この日と明くる次の日、あたしはこれまでにないほど目まぐるしい時間を過ごした(いや、今までが怠けすぎていたって話もあるけどさ)。

 貴族の礼装を身につけたメーグル様は、アニメの主人公かゲームの攻略キャラかというぐらいにりりしく、神々しく、気品に満ちていて、あたしはその姿を見ているだけで昇天するかと思うほどの恍惚感を味わった。

 かの御方の周囲にとりついて仮縫い用の針を手際よく刺し、寸法を合わせていくウォマイラの奴隷女たちの邪魔にならないよう気をつけながら、できる限りおそばに近づき、とっくりとそのお姿を鑑賞させていただく(尊すぎるそのお姿を一瞬たりとて見逃すまいと、精一杯の力を込めて見つめれば見つめるほど、なぜかメーグル様からどんどん生気が失われていくような気がするのだけれど、多分気のせいだろう)。

 それにしても気になるのは、メーグル様が、この式典にあまりで乗り気でいらっしゃらないように見えることだ。

 普段ならどんな人にも丁寧で快活な態度を崩さないのに、仮縫いの最中も式次第の打ち合わせの時も、そのりりしい容(かんばせ)に笑みが浮かぶことはなく、諦めたような様子でうつむいてばかり。そういう愁いに満ちたご尊顔もかぎりなく美しくていらっしゃるけど、前向きで明るいところがあたしのメーグル様の一番の魅力。このようなご表情ばかりでは、その魅力も少々薄れてしまう。

 どうなさったのかしら。今までどんなにお忙しくても決してうつむくことなどなかったのに。あのプロデューサーのジジイが無茶なことばかりいうので、いい加減嫌になっていらっしゃるのかしら?

 それならばあのクソジジイにこっそりと右フックの一発でもかまし、再起不能にしてやろうかとも思い、虎視眈々とスキをうかがっていたのだけれど、打ち合わせが進むにつれて、あたしは次第に殴る気をなくしていった。

 というのも、このジジイ、さすがこういった儀式のプロだけあって、どのように式を運べば気品と威厳を観衆に印象づけられるか――メーグル様のあふれ出るりりしさとかっこよさを見てる者に刻みつけられるか、本当によく心得ていたのである。

 ジジイが作り上げていく荘厳な舞台に立ち、踊ることで、今まで見えてこなかったメーグル様の隠された魅力が表に現れ、これまでの魅力がさらにパワーアップして、あたしに襲いかかり……その魔術のような魅惑に、あたしはいつか、とりこにされていたのだ。

 ああ、メーグル様、許して。あたしはワルいオンナ。あなた様がこのコンサ……儀式を気に入っていないと分かっていながら、あえてそれを止めず、ますます男ぶりに磨きがかかるあなた様のことをひたすら見守ってしまっているの。ああ……。

 うっとりとそんなことを考えながら、明後日の方向をみえげているうちにも時間はどんどん経過し、台本を手にしての打ち合わせ、タイムスケジュールの確認、大広間を使っての立ち居振る舞いの練習と指導、合間の衣装替えと、それぞれの儀式によって変わる服の衣装合わせ、そして実際の儀式会場を使った、本番さながらのリハーサル、リハーサル、リハーサルと、スケジュールは進んでいく。

 本来ならば「メーグル様ご出世の影の立て役者(プロデューサー)」として、それら全てをずっと見守ってたかったのだけど、前にも言ったように、どうしたって腹は減るし、トイレにだって行きたくなる(市庁舎内にも、イン・ナセの街の中にもトイレはあったけれど、到底入る気にはならないシロモノばかりだったのだ)。なので仕方なく、あたしは次善の策をとることにした。

 我慢できるぎりぎりまでは我慢し、後ろ髪引かれる思いを引きずりながら、とぶような速度で中央神殿天幕に帰って、速攻であらゆる用事を済まし――トイレ中や豆をむさぼり食ってる「プライベートタイム」だっていうのに構わず押しかけ、あれこれ問いを投げかけるズィーロたち三人組を怒鳴りつけ――終わるやいなや再びとぶように市庁舎へとんぼ返りするようにしたのである。

 けれど、それではやはり、多くの場面を見逃すことになり……拝見できなかった時間、一体どんなドラマが展開していたのかと思うと、後悔の念がどばどばと押し寄せ、体が引きちぎられそうなほどに悔しい。

 いよいよ全ての確認が終わり、仮縫いと衣装合わせも完了、後は明日の本番を待つのみ、となった深夜、とぼとぼと天幕へ向かうあたしの心にあったのは、明日の儀式への大きな期待と、そういった「生理的欲求」で見逃した場面への後悔の念、そして、明日はなんとしてでも会場で行われる全ての場面を一分一秒たちとも見逃さずに全てこの目に収めたいという、地獄の業火のように燃えさかる欲望だった。

 ああ、ちきしょ!一日中ずっとはりついてみてたかったのに、どうしたってトイレの時間だけはその場を離れなきゃなんない!それで一体、どんだけメーグル様の艶姿を見逃したか!明日の儀式こそは、朝から晩までずっと見続けてやりたい!どうすっかな、やっぱり、いっそシビンや軽食を持ち込んで……いやでも、いくら城門の衛兵どもがボンクラだからって、宙に浮いて移動するシビンやバスケットを見逃すとは思えないし、となるとやっぱり「おむつ作戦」を敢行するべきかな、でも、この世界に紙おむつがあるとは思えないし、びっしょびっしょでむわっと臭う布おむつを身につけたままずっと過ごすってのは、さすがに人としてどうよ……。

 いくら考えてもよいアイデアは思い浮かばず……考えあぐねたあげく、思わずあたしはつぶやいていた。

「ああ、録画でもできたらいいのに……」

 すると。

「できますよ、録画」

と、鎧の声がこともなげに答える。

 一瞬、ん?、となった後で、あたしは大声で聞き返していた。

「うそ!できんの!?」

「はい。当防御装甲のモニターには録画機能がついておりますから。『録画開始』とご命令いただければ、すぐにでも録画可能です。なお、画質は……」

「あ、細かいこと言われてもわかんないからいいや。でも、そうか、鎧から見たものが録画できるだけか。や、まあ、それだけでもありがたいんだけどさ、本当いうと、鎧がいなくても録画できる遠隔ビデオカメラみたいなもんがほしかった……」

「可能ですよ」

「うっそ!できんの!?」

「はい。当防御装甲の頭部装飾部は総ナノマシン形成のオプショナルパーツとなっておりまして、思念により任意に形態・機能形成が可能であり、装甲からの分離及び完全自立式作業遂行が……」

「だ・か・ら、難しいこと言われてもわからないって!なにをどうしたら遠隔ビデオカメラ使えるのか、説明して!できるだけ簡単に、3歳児でも分かるように!」

 説明を遮り、そう叫ぶ。と、一瞬の沈黙の後、小さくため息っぽいものが聞こえ――ひょっとして鎧からバカにされた?――その後、鎧はちょっとくだけた口調となった。

「はーい。ではまず、頭の部分にあるトゲトゲを、どれでもいいから指先でつまんで、「えいっ」て引き抜いてください」

 言われたとおり、脳天部分の鋭くとがった針みたいな飾りの一つを指先でつまみ、ぐっと引っ張る。と、しっかり脳天に食いついていたはずのトゲが、拍子抜けするぐらい簡単に、すぽっと抜ける。

「はい、抜けたら今度はそのトゲを手に持ってじっと見つめ、『遠隔カメラになーあれ♥』と、できるだけかわいらしく魔法の呪文を唱えてくださいね?」

 なんだよそれ、ちっちゃい子の魔法少女ごっこかよ、この年でそんなことかわいらしく言うって、さすがに恥ずかしいんだけど、と思いながらも、それが鎧の指示なら仕方ないか、と覚悟を決める。

 きょろきょろと周囲を見回し、誰も見ていないのを確認した後で、あたしはおもむろに右手の手のひらの上にのせたトゲに注目する。そして、人差し指を立てた左手を頭の上でくるくると回しながら、「遠隔カメラになーあれ♥」とできる限りかわいく唱え、唱え終わると同時に右足でつま先立ちしつつ左足を後ろに蹴り上げ、魔法少女モノにはつきものの「決めポーズ」をきゅるんと取った(直後、ぼそっと「アホや」とあきれかえったような声が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだ)。

 と、手に持ったトゲはたちまち変形し、「スズメバチサイズのドローン」みたいな姿となって、あたしの手のひらから離陸する。

「あ、ちょっと!飛んで行っちゃう!」

 慌てて声を上げると、

「大丈夫ですよお?なにも命令しない限り、あなたに追従して――えと、つまり、あなたの後を追ってついてきますからね?後は、「ここでいっか」という場所で「お任せ録画開始」と言えば、自動的に最適な角度・倍率を判断し、あなたの望む場面を取り逃すことなく記録に収めることができます」

 なんか、最新家電の説明聞いてるみたいだと思いつつ、ふむふむとうなずく。

「あ、それから気をつけてほしいのですが、録画時間は最大で12時間ほどです。ですから、今はまだ元のトゲトゲに戻し、しまっておいた方がよいかと思いまーす。なお、しまいたい時は『元に戻れ』と一言言っていただければおっけー。「複雑な操作は苦手」と感じている方にも使いやすい、ユーザーフレンドリーな仕様となっております。それと、遠隔カメラにはステルス機能が備わっておりません。ですから、録画の場所は、できる限り誰にも見とがめられることのない場所を選ばれた方がよいかと思います。以上、おわかりいただけましたか?もしまだ不安でしたら、もう一度ご説明いたしましょうか?」

 電気屋の店員みたいなしゃべりの次は、携帯ショップの店員みたいになってやがる、とひそかに思いながら、

「ん、大丈夫。分かったと思う。今はまだ使うな、現地に行ってから変形させろ、できるだけ目立たない場所で使え、ってことでしょ」

「さすがは使用者様、その通りです!なにか、他にわからないことはありますか?」

「ないよ。ありがと」

「では……」

 声が消えた後、あたしは言われたとおりに、ビデオカメラをトゲに戻すと、もう一度頭のてっぺんに差し込んだ(「充電開始」という文字が表示されると共に、充電完了までの残り時間が目の前に表示され、思わず苦笑する)。

 そして、さあ、これで明日の備えは万全、思いっきり堪能できると、ウキウキした気分でスキップしながら――誰も見てなかったからよかったものの、漆黒の鎧が腰に両手を当て、がっしゃがっしゃと音を立てながらスキップする姿は、さぞ無気味だっただろう――天幕へと向かったのであった。





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