第6話「祭りの中での誓い」
ラルスの周りは、見知らぬ人々で賑わっていた。
「完全にはぐれたな……」
屋台を見ながら歩くうちに、仲間を見失ってしまった。
普通なら、初めての場所で迷えばあわてるものだが、ラルスは不思議と落ち着いていた。
「まぁ、ここでは言葉が通じるし、帰る場所もわかっているからな」
異世界から来たが、リアリティアでは普通に会話出来たし、文字も読めた。
文字に関しては、最初はリアリティアの言語で書かれているが、見ているとだんだんフィーヴェの文字に変換されていくのだ。
だから、ラルスたちは看板や屋台の文字も難なく読めた。
ところが、大きな問題があった。
「金が使えない……」
異世界なので、もちろん通貨も違う。
フィーヴェのお金は、ディーンやネムが使う両替魔法で換金してもらえるが、ラルスは「使うたびに両替してもらうか」と考えていたので、フィーヴェのお金のままだった。
「ラルッスじゃん!」
途方に暮れていると、横から声がした。
ギャル組のソウカ、ヒース、ズノと、空想組のタハナ、ラッカ、タイシが近づいて来た。
「どうしたの? もしかして、はぐれた?」
「その、“もしかして”だ……」
ヒースが尋ねると、ラルスは冷静に答えた。
「今年は特に賑わっているし、大人数で来てるからね」
「よかったら、一緒に行きましょう!」
タハナとラッカに励まされ、ラルスは救われた気持ちになり、「ありがとう」と感謝した。
七人で屋台を見て回った。
お金が使えないこともあり、ラルスは飲食出来ず、本当に見るだけだった。
途中、ギャル組から「何か食べないの~?」と聞かれたが、「腹が減ってないから」と答えた。
本当は、お腹が減って仕方がなかった。
見て歩いているうちに、イマストⅤのイラストが印字された袋に入った綿菓子、イマストⅤのキャラがあるキャラすくい、お面屋を見かけた。
それらの店に通るたびに空想組が黄色い声を上げ、ギャル組が笑う。
彼女らを見て、ラルスは「俺らの作品って、こんなに受け入れられているんだな」と改めて感じるのであった。
しばらく歩いた後、階段の隅に座って休憩した。
「ラルッス、本当に食べなくていいの?」
「あ、あぁ。平気だ」
先ほどから食べ歩きするギャル組と空想組。
ラルスは彼女たちがうらやましかったが、言葉には出来なかった。
「よかったら、食べてください」
タハナが、カップに入ったフライドポテトを彼へ差し出した。
「いいのか……?」
「いっぱい歩いたし、仕事の後で来たんですよね? そろそろ、お腹が空く頃かなと思って。逆に、私はお腹がいっぱいになって来たんです」
「あたしからもあげる~」
次はソウカが、カップに入った唐揚げ串をくれた。
「さっきから、ヒースんとズノっちの分、つまみ食いしてたら食べれなくなって~。食べてくれる?」
「ふ、二人とも、ありがとう!」
ラルスは心から二人へ感謝し、ポテトと唐揚げを無心で食べ始めた。
ヒースとズノは笑い、ラッカとタイシは「やっぱりお腹空いてたんですね」「言ってくれたら、お店寄ったのに」と彼を気遣った。
食べて落ち着いたところで、ラルスは彼女たちへ尋ねた。
「リアリティアはいつも、こんなに平和なのか?」
「この国はね。他の国では戦争してるとこもあるよ」
「戦争? この世界にも、あるのか……?」
ラルスが再び聞くと「この世界……?」と、六人が首をかしげた。
「ほ、他の国だ!」あわてて言い直した。
「ない国はないんじゃない? この国だって、大昔は戦争でたくさんの人が亡くなったんだから」
勉強に疎いヒースでも、昔、戦争があったことは知っていた。
「ラルスさんの国は、どうなんですか?」
タイシに聞かれ、ラルスは一瞬考えた。
さすがに「フィーヴェのインベクル」とは言えないので、自分の国では戦争はないが、種族問題で揉めていることを話した。
「種族問題……。イマストのディファートみたいですね」
タハナが思い出しながら言った。
「こ、この国に、種族問題はないのか?」
バレはしていないか、心配で探り探り聞いた。
「今でも一部の人が騒いでいます。少しでも他の種族っぽいと、からかわれたり……。でも、昔ほど差別や殺人はなくなったと思います」
ラッカが答えると、ラルスは「差別や殺人」ですぐにディファートと重ねた。
「そういう差別や殺人は、なくなるものなのか?」
「国次第ですね。今でも海外では差別がありますが、国の偉い人がしっかり導けば、少なくなると思いますよ」
「てか、人に迷惑かけてなきゃ良くね? 種族が違っても問題ないっしょ。あたしらと空想組が仲良く出来たんだから」
タハナの後にズノが言うと、ギャル組と空想組がうなずいた。
今の話で、ラルスは「こういう子たちが多いから、差別がないんだな」と改めてリアリティアをいい場所だと感じていた。
そして、タハナの「国次第」という言葉で、ディファートとの共存活動を、より力を尽くそうと静かに誓うのであった。




