第4話「射的で愛を狙い撃ち?」
街への道中。
ユアは、空想組の様子にも驚いていた。
何故なら、いつもすっぴんの三人が人生初であろうメイクをし、髪も盛っていたからだ。
「ソウカたちにしてもらったの?」
「うん! “せっかくのイベントなんだから、オシャレしろ”って」
「してみたら楽しいよ!」
ユアの質問に、ラッカとタハナが答えた。
いきなりギャルメイクではなく、ナチュラルメイクに抑えていた。
「ユアも決まってるじゃん!」と言った後で「お兄さん、ビックリしたんじゃない?」と、タイシがニヤニヤしながらささやいた。
一方、ギャル組はディーンを初め、他の仲間たちにグイグイ絡んでいっていた。
そのたびに、唯一ギャルと波長が合うダットがノリノリで返した。
時々フィーヴェのことをうっかり言いそうになり、仲間たちからあわててフォローされる時もあった。
チェルことチェリテットも、ギャル組は苦手ではなく明るく返した。
だが、ネムことソールネムと他の仲間は、話すうちに苦手意識が芽生え、今からうんざりしていた。
向かう途中、ズノが核心をついたことを聞いた。
「思ったんだけど……、お兄さんの友達も、イマストⅤのキャラに似てない?」
フィーヴェ出身組とユアは、息をのんだ。
ヒースとソウカも言い出した。
「思ったぁ! ネムっちとチェルチェルは、ソールネムとチェリテットに似てるし……」
「ラルッスはフィット、ティムティムはティミー、ダットっちはオープンに似てるよね!」
ギャル組が勝手につけたあだ名にダットは喜び、チェルは苦笑いし、他のメンバーは明らかに引いていた。
特にネムは「ネムっち……?」と不服そうに言った。
同時に、正体がバレないか不安にもなった。
「私も思った! みんな、雰囲気似てるよね!」
「声も話し方も似てるし!」
「イマストのみんなと祭りに来た気分!」
空想組まで同調し始め、ラッカ、タハナ、タイシが興奮した。
「ぐ、偶然じゃないかな……?」
ユアは言葉を濁した。
期待の眼差しを向けられ、フィーヴェの面々はさらに顔が青ざめた。
特にソールネムとチェリテットは、ディンフルらと違い、髪の色を変えていなかった。
「きっと、推してんでしょ!」
ソウカが明るく言ったところで、空想組も他のギャル組も納得した。
ユアたちは胸を撫で下ろした。
結局、「イマストⅤのキャラに似てる」という話はそこで終わり、一行は祭り会場に到着した。
夏の夕方はまだ明るいが、屋台のライトがきらびやかに輝いていた。
焼きトウモロコシやフランクフルトなど温かい食べ物を扱う店からは、湯気と匂いが立ち込めた。
集まる人も多く、祭りは賑わっていた。
ユアたちは十三人で来たため、大人数での移動は難しかった。
そこで、空想組とギャル組とはあとで落ち合うことにし、しばらく離れて行動することにした。
◇
先を歩いていたユアが、射的の店の前で立ち止まった。
「よし! これには自信あるんだ~!」
中年男性の店主へお金を渡すと、射的用の銃を手に取った。
「じ、銃?! それで何をする気だ?!」
後ろにいたディーンが驚きながら、ユアの手を止めた。
「大丈夫だよ! 誰かを傷つけるために使うものじゃないから。これは“射的”と言って、前の棚にある物に当てて、下に落とすと景品がもらえるんだよ」
「ひ、人に向けなくとも、撃たれた物が燃えて、火事になったらどうするんだ?」
「そんな物騒に出来てないから……」
フィーヴェにも銃はあるが、射的のように遊び用に作られているものはない。
早速、ユアは前方の棚に横一列に並ぶ数々の物へ目を向けた。
こけし、ヒーロー人形、ぬいぐるみなど、様々な物が並んでいた。
ユアはその中で、一番倒しやすそうなヒーロー人形に向かって撃った。
一発目、外れ。
二発目、外れ。
三発目、頭に当たるが、倒れただけで落ちなかった。
「はい、ざんね~ん!」
店主のおじさんが楽しそうに言った。
「自信あったのに~!」
ユアが悔しがった。
子供の時以来なので、腕が落ちていたようだ。
「俺がやろう」
ディーンは店主へお金を払い、銃を手に取った。
神妙な面持ちで構えたために、ユアは嫌な予感がしていた。
「そこまで真面目にしなくていいからね。遊びだから……」
以前、クレーンゲームのぬいぐるみを取るため、彼は魔法で筐体を壊そうとしたことがあった。
その時を思い出し、ユアは目が離せなかった。
ディーンが一発撃つと、轟音と共にコルクが発射された。
立てられたヒーロー人形に当たるが、下へ落ちるどころか宙を舞った。
「えぇぇぇーーー?!」
ユアも店主も、他の客も一斉に驚きの声を上げた。
ヒーロー人形は舞った後で、ポトリと床に落ちた。
「あ、当たり……!」
店主は驚きつつも、客を祝う時用のベルを高らかに鳴らした。
「あんなに強く設定したかな……?」と疑問に思い、ディーンが使っていた銃を急遽、調べ始めた。
ディーンには景品が渡された。
四十センチほどの大きさの、薄茶色のクマのぬいぐるみだった。
手足が動かせない直立不動タイプでつぶらな瞳に、首には赤いチェックのリボンがあった。
「俺が狙ったのは、武装した人形だが……?」
「必ず当てた商品がもらえるわけじゃないんだよ」
歩きながら不満を垂れるディーン。
ユアは解説しながら、彼の代わりにぬいぐるみを抱いて歩いた。
「それより、魔法使ったでしょ?」
ユアはディーンを睨んだ。
「……バレたか。魔力を少し込めた程度だ」
「今日はあれだけで済んだけど、これからは使わないで。ケガ人が出たら、一番困るの店員さんだから」
「すまぬ……。こうでもしないと、当たらぬと思ったのだ」
「……今日は許す。こんな可愛い子が当たったから」
ユアは嬉しそうに、クマのぬいぐるみをギュッと抱きしめた。
「お前にやろう。俺が持っていても、仕方がないからな」
ユアの脳裏に一瞬だけ、ぬいぐるみを可愛がるディンフルの姿が思い浮かんだ。
やはり彼のイメージに合わないため、少し笑いながら「ありがとう」と言った。
「そういえば、みんなは?!」
ユアが周りを見るが、ラルスやティムたちの姿がなかった。
射的に夢中になっている間に、はぐれたようだ。




